不老不死の暴君
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第五話 ルース魔石鉱・内部
「なぁ、ヴァン」
「どうしたバッシュ?」
「身のこなしから察するに彼はかなりの腕前のようだが・・・君からみてセアはどれくらいの強さだ?」
「すっげぇ強い、だって・・・」
「だって?」
「一度セアがモブ退治しにいくのに俺を連れて行ってくれたことがあるんだけど西ダルマスカ砂漠にいたリングドラゴンを一人で倒してたぜ」
「なに?」
バッシュとヴァンの会話を聞いてたバルフレアは驚いた。
ドラゴン・・・それは神話の時代から伝えられる強力な魔物だ。
それを一人で倒したのならセアは相当な腕前だ。
「おいヴァン、そのドラゴンが何種だったかわかるか?」
「首に輪っかがついてたから輪竜じゃないかな?」
ドラゴンの種類は大きく分けて四つに分かれる。
地竜・飛竜・殻竜・邪竜の四つだ。
ヴァンが言った輪竜は邪竜の別名である。
邪竜種は他のドラゴンの種類と違い知性を持ち、魔法を使用することもできる。
邪竜種は例え下級の竜であっても相当な力をもつ。
「おいおい、あいつどれだけ強いんだ・・・」
バルフレアはセアの方を見た。
セアはウォーミングアップの為か自分が持っている不気味な剣を振っていた。
因みにバルフレア達は気づかなかったがセアが剣を振っている場所から30M程離れた場所でコウモリみたいな魔物が真っ二つになった。
「・・・」
フランはセアの周りのミストが気になっているようだ。
セアもフランから何か探られてるを感じ取っているのか何か嫌そうな顔をしている。
セアが嫌がっているのを見てフランは警戒心を強めた。
「と、とにかく早く奥に行きましょうよ!」
セアはフランの視線に耐えられなくなったのかこう言って奥に進んでいった。
「なんか分かったか?」
「いえ、彼の周りのミストは妙ままね」
「気のせいって言いたいところだがヴァンの話を聞いた後じゃ何かありそうだな」
バルフレアはため息をついた。
「まったくヴァンに会ってから面倒事が立て続けにくるな」
「そうね」
「はぁ、フランはセアの方を見張っとけ、俺はガキの方を見張っとく」
バルフレアはそう言うとラモンの方に視線を向けた。
バルフレアもセアと同じようにラモンがアルケイディア帝国の上層の人間であるとあたりをつけている。
とある事情でアルケイディア帝国の事情に詳しいバルフレアはラモンが面倒事を起こさない訳がないと考えていた。
「まってくれよセア~!」
ヴァンがそう叫んでセアの後についていくのを見てバルフレアは更にため息をついた。
「あんな分かりやすい奴ばかりだと楽なんだがな・・・」
バルフレアはそう言って自分に噛み付こうとしてみた魔物を銃で打ち抜いた。
暫く進んでバルフレアはある違和感を感じはじめた。
「なんでアンデッドが出てこないんだ?」
ルース魔石鉱はアンデッドがよく出てくる場所の筈だ。
結構奥まで来たというのにまだ一体もアンデッドを見ていない。
皆もバルフレアの言葉を聞いてそういえばというふうに頷いた。
「確かにおかしいですね」
ラモンも同じ考えのようだ。
「俺達の運がいいってことだろ」
「・・・可能性が無いわけじゃないが限りなく低いだろうな」
ヴァンの考えにセアはある程度肯定しながらも否定した。
じゃあお前はと言うふうにバルフレアはセアを見た。
「・・・俺達が来る前に誰かが倒したとか?」
「あのトカゲ共がそんな面倒なことをするとは思えないがね」
セアは自分なりの考えをバルフレアに言ってみたが否定された。
「それにもしそうなら他の魔物も倒されているはずだわ」
フランもセアの考えを否定した。
「なら・・・何故だ?」
バッシュがそう言うとセアが俯いた。
すると・・・
「そんなの考えてたって解らないじゃん。早く行こうぜ!」
そう言ってヴァンは走っていった。
それを見てバッシュも続く。
するとバルフレアは大きくため息をついてセアに
「あいつは解ってやってるのか?」
「1年程度の付き合いだが俺が知る限り解らずやっているな」
「たちが悪い」
「馬鹿弟子が迷惑をかけるな」
「まったくだ」
バルフレアはそういうとフランと一緒にヴァンが走っていった方に歩いていった。
「馬鹿弟子に{空気}というのを教えてやるべきか」
「教えるべきだと思いますが」
ラモンはそこで一旦言葉を切って。
「でもそのおかげで先程は助かりましたし」
その言葉を聞いたセアはニヤニヤ笑いながら
「まったくだな」
そう言ってセアは立ち止まってラモンの方を向き
「そういえば君はどうして魔石鉱に来たんだい?」
「元老院議員の人から貰った石の原料を調べに・・・っは!」
ラモンは慌てて自分の口を手で塞いだ。
その様子を見てセアが悪人のような笑みを浮かべた。
その状況が数分間続く。
「元老院議員と知り合いなのか・・・まぁ他のみんなには黙っといてあげるよ」
「・・・お願いします」
「そのかわりと言ったらなんだけど君の名前教えてくれるか?」
「・・・ラーサー・ファルナス・ソリドール」
その名前を聞いてセアの顔が固まった。
ソリドール家はアルケイディア帝国皇帝を輩出している名家だ。
確かアルケイディア帝国皇帝のグラミス・ガンナ・ソリドールには4人の息子がいて上の2人は死んだはず。
そして三男のヴェイン・カルダス・ソリドールはラバナスタの執政官をやっているはずだ。
ということは目の前の少年は現皇帝の四男ってことになる。
帝国の上層部の人間だとは思っていたがまさか皇帝の息子だったとは。
なんでよりにもよってそんな人物とヴァンがなかよくしてるかなぁ。
あとでとりあえずヴァンを一発殴ると決めた。
「あの、セアさん?」
「あ?」
「大丈夫ですか?」
「いや、少し驚いただけだよ」
セアは落ち着いてラモン・・・いやラーサーに優しい笑みを浮かべて手を差し出した。
「先頭と結構離れちゃったね。急ごうか」
「はい」
ラーサーはセアの手をがっちりと掴んだ。
そしてセアが目にも止まらぬ早業でラーサーを背負い、凄まじい速さで走っていった。
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