不老不死の暴君
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第四話 ルース魔石鉱・出入口
街道にそって歩いていくとルース魔石鉱についた。
途中にやたら帝国兵がいたが彼らが言うには特別にビュエルバ政府から許可を貰っていると言っていた。
なにかあったようだ。
「ここって本当に魔石鉱なのか?」
「ああそうだぞ」
まぁ、ヴァンがそう言いたくなるのも分からなくはない。
セアも20年位前に来た時、ここは神殿か何かか?と言いたくなるような入り口だった。
ただの魔石鉱にしてはなんというか立派すぎるのである。
普通なら工夫たちがひっきりなしに出入りしている筈だが何故か人の出入りがない。
近くにいた工夫に聞いてみたところ帝国から視察が来ているらしい。
「帝国から視察ね」
「ここの警備は帝国兵が?」
バルフレアが面倒なという顔をしながら呟き、バッシュも疑問を口にした。
「いえ、ビュエルバ政府は特例を除いて、帝国軍の立ち入りを認めていません」
ラモンがはっきりした声で答えた。
「そうなると今回の視察は特例というわけか、最近ここの魔石は品薄らしいって噂があるし本当かどうか確かめに来たってとこか?」
「さぁ、どうでしょう?」
セアもあらかじめ知っていた情報を元に仮説を立てたがラモンは首を横に振りながら答えた。
(・・・少なくともこの子は帝国民だな、政民でもかなり上の地位の跡取りってとこか)
セアは既にヴァンにちゃんと口止めしておかなかったことを後悔しはじめていた。
まさかビュエルバの入り口ともいうべき場所でそんな奴がいるとは。
予想していなかった訳ではないが普通上の地位にいる人物ならば警備をつけていると思っていため然程気にしなかった。
「とにかく入りましょう」
フランがそう言って魔石鉱の中に入って行き、バルフレアがあとに続きセア達も遅れて続いた。
「バルフレア」
「どうしたフラン?」
「もっと早く言おうと思ったけど・・・セアの周りのミストがおかしい」
「なんだと?」
「彼の周りのミストが凍えているみたい」
「どういうこった?」
バルフレアが後ろを振り返り、セアのの方を見た。
その視線に気づいたセアが微笑んで手を振った。
それにバルフレアは呆れた。
「誰か来るわ」
フランがそう言うと2人は直ぐ左右の石柱の影に隠れた。
それを見たセアはヴァンの服を掴み隠れ、バッシュはラモンの手を引いて隠れた。
何故隠れたのかは解らなかったかったがとりあえず隠れた方がよさそうだと判断したからだ。
「なにすんっが!!!」
「・・・馬鹿弟子が」
隠れた後にヴァンが叫びそうになったのでセアがヴァンの首を掴んで黙らせた。
暫くすると金ぴかの鎧を身にまとった人物と初老のおっさんが歩いてきた。
「念のために伺うが質のよい魔石は本国にでは無く・・・」
「全て秘密裏にヴェイン様のもとへ」
「貴殿とは馬が合うようですな」
金ぴか鎧のせいで表情が伺えないが多分、いや絶対笑みを浮かべている。
それに対し初老のおっさんの方はなにか機嫌が悪そうだ。
「それは結構ですが手綱をつけられるつもりはございませんな」
「ふっ、ならば鞭をお望みか?」
初老のおっさんの言葉で金ぴか鎧の機嫌が悪くなった。
絶対あの野郎は器が小さいとセアは強く思った。
「つまらぬ意地は貴殿のみならず、ビュエルバをも滅ぼすことになる」
金ぴか鎧がそう言って魔石鉱から出て行き、初老のおっさんも後に続いた。
完全に魔石鉱から出て行ったことを確認するとラモン達が出てきた。
「ビュエルバの侯爵、ハルム・オンドール4世」
「へぇ、今の初老の人がビュエルバの領主か」
ラモンの台詞にセアが関心する
「はい、ダルマスカが降伏した時、中立の立場から戦後の調停をまとめた方です。帝国寄りってみられてますね」
「あの様子だとビュエルバの独立を守るために苦労しているみたいだな」
セアはそう言ったが実際のところ独立を守るというより自治を守っていると言った方がよいかもしれない。
先ほどの侯爵と金ぴか鎧との会話を聞く限り良質の魔石の殆どを帝国に流しているようだし。
「そうだな、反帝国組織に協力しているって噂もあるしな」
バルフレアも同感のようだ。
確かにビュエルバの反帝国組織に力があるなら帝国の侵攻に対しての抑止力になる。
「・・・あくまで、噂です」
ラモンはどうやら侯爵を信じているみたいだが。
「よく勉強してらっしゃる・・・どこのお坊ちゃんかな」
「どうだっていいだろ。パンネロが待ってるんだぞ」
バルフレアがラモンに問いつめてるとヴァンがそれを遮った。
「パンネロさんって?」
そういやラモンはパンネロのこと知らなかったな。
「友達。攫われてここに捕まってる」
そう言ってヴァンも奥には向かった。
そういやパンネロ大丈夫かな・・・変なことされてなければいいが・・・。
セアはとりあえず今はパンネロ救出だと頭を切り替え、腰にある赤みのある黒い剣を抜いた。
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