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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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幻想曲


ラクサスに破門が言い渡された次の日。ファンタジア当日。
マグノリアのとある広場に、ラクサスと雷神衆はいた。

「冗談じゃないわよっ!何でアナタだけ破門なの!?」
「オレ達だって罪は同じじゃねーのかよ!?」
『ねーのかよ』

エバーグリーンとビックスローが叫ぶ。

「ジジィが決めた事だ」
「だったら私だってやめてやるわよ!」
「オレだってお前がいなきゃよう」
「めんどくせェ奴等だな。『じゃあな』の一言も言えねーのか?」

ラクサスの破門に対し必死に反論するエバーグリーンとビックスロー。
が、ラクサス本人は笑みを浮かべていた。

「何で・・・1人で全ての責任をとろうとする」
「そんなんじゃねーよ。お前らと違ってオレにはこのギルドに何の未練もねえからな」

ラクサスの言葉は変わらない。

「私達がマスターに頼んでみるわ!」
「きっとナツやグレイだって反対してくれる!あいつ等、何だかんだ言ってお前の事・・・」

その言葉にラクサスは視線を外し、微笑む。

「ラクサス」

フリードが呟いた。
と同時にラクサスは足元の荷物を持ち、背を向ける。

「元気でな」

背を向け、肘を曲げた左手を上げるラクサス。

「ラクサス!」
「ふざけんなよっ!雷神衆はどーなるんだよっ!」
「・・・」

その行動にエバーグリーンとビックスローは叫び、フリードは沈黙し俯く。

「チクショー!」

ビックスローの悔しさに溢れた声が響く。
フリードは顔を上げ、笑みを浮かべて呟いた。

「また会えるよな、ラクサス」











パァン、ドドォン。
漆黒の夜空にカラフルな花火が咲き誇る。
花火に彩られた夜空の下、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士達は魔法を駆使し、パレードを行っていた。
カナはギルドの紋章が描かれた魔法の札(マジックカード)にハートのリングを付けたものを舞わせ、ワカバは口から煙を吹き、目がハートの生物を作り出す。
マカオは紫の炎(パープルフレア)を渦のようにして頭上に掲げた。
カナ達の様に得意な魔法を駆使し行進する者がいれば、パレード用のフロートに乗って行進する者もおり、魔法は使わず、踊りや楽器で盛り上げる者もいた。
マグノリアの町民や近隣の街の人達は大いに盛り上がり、歓声を上げている。
それを、ラクサスも木の陰から見ていた。

「ミスFTに出てた女のコ達だっ!」
「かわいー♪」
「いいぞー!」
「まさに妖精だぁ!」

まず登場したのはフロートに乗ったルーシィ、レビィ、ビスカの3人。
3人は息ピッタリに旗を振って踊り、可愛らしい笑顔を向けた。

「エルフマンよ!」
「うおおっ!スゲェ迫力!」

次に登場したのは獣王の魂(ビーストソウル)状態のエルフマン。
エルフマンが雄叫びを上げると同時に、その背後にあった花が開く。

「ミラちゃんだー!」
「待ってましたー!」
「アルカンジュさーん!」

そこから現れたのはミラとアルカ。
アルカは大火(レオ)を使い、その両手から炎で構成された蝶を飛ばす。
それに続いてミラは得意の変身魔法を使い―――――――――

『!』
「ははははははっ!」

獣化したエルフマンをも超える巨大トカゲに変身した。
エルフマンは目が飛び出しそうな勢いで驚愕し、アルカは目に涙を浮かべて大爆笑する。

「見てっ!クロス様よ!」
「チームメイトも一緒だ!」

続いてはクロス達。
スバルとヒルダは空に向かって魔法弾や砲撃を連続で撃ち、サルディアはミスコンの時のようにルナティックロアと融合して金色の粒子を撒き、ライアーはフロートに文字を描いて花や光を出現させた。
フロートの1番高い所に立つクロスは先ほど自分の名を呼んだ観客に変わらないザ☆爽やかスマイルを向け、手を軽く振る。
そして銀色の装飾が施された綺麗な剣を両手に持ち、見事な剣舞を披露した。
ちなみにクロスはティアを姉に持つ為か『美しい』のジャンルに入る顔立ちをしている。
なのに何故アルカのような人気が出ないかというと・・・それは言うまでもないが、彼の目にはティア以外の女は微塵も映っていないからだ。
先ほど歓声を上げた観客はマグノリアの人なら全員知っている『クロスは一切認めないがシスコン』を知らないようだ。

「何あれ!?氷のお城!」
「きれ~、水が噴き出してる」

続いて現れたのは周囲の噴水に彩られた巨大で美しい氷の城。
そのフロートにはどこぞの王子のような服装のグレイとドレス姿のジュビアがいた。
ジュビアが水を操り水を舞わせ、その水をグレイが凍らせる。
水はすぐに凍りつき、『FAIRY TAIL』の文字を造形した。

「いっけー!」

氷の文字と氷の城の上を、純白の翼を生やした天馬に乗ったルーが飛ぶ。
その天馬の正体は偽り姿を変える者(ディスガイズ・ライアー)を使ったヴィーテルシアであり、その体には金色や銀色を基調にした装飾がされていた。

妖精女王(ティターニア)が来たぞっ!」
「剣が舞ってる!」
「うわぁ♪」
「オレの嫁になってくれー」

次はギルド最強の女魔導士、妖精女王(ティターニア)の名を持つエルザ。
まずは天輪の鎧の循環の剣(サークルソード)
それから衣装を換装し、エキゾチックな衣装を身に纏う。
その手には布が巻き付いた2本の剣が握られ、布をはためかせながら舞った。

次に登場したのは、火竜(サラマンダー)のナツ。
当然怪我は完治せず包帯だらけだが、その表情はやる気に満ちていた。
そしてナツは口から炎を吐く為に大きく息を吸い込み―――――――

「ぐはぁっ!」

炎と共に咳き込んだ。

「ナツ!お前!どーしたんだ、そのケガッ!」
「よ・・・よせって!くだくだじゃねーか!」
「あはははっ!」

口から炎を吹き、『FAIRY TAIL』の文字を造ろうとするナツ。
が、出来たのは『FAI』までであり、Rは辛うじて読める程度、その先は姿さえ表さなかった。

「ティアだ!海の閃光(ルス・メーア)が来たぞ!」
氷の女王(アイスクイーン)ー!」

ナツの後ろから現れたのは、ギルド最強の女問題児であるティア。
彼女は腕や脚を大きく露出した紅蓮の衣装に身を包み、熱いのが苦手だというのに炎に囲まれていた。
そして水へと変えた右腕を振るい、薙ぎ払った場所から水の花が咲く。

「・・・めんどくさ」

誰にも聞こえないような小さい声で言い放ち、その両手に水で構成された薄い布のようなものを持つ。
それを靡かせ、軽い足取りでティアは舞った。
水の花は炎を纏い、消えていく。

「マスターだ!」
「マスターが出てきたぞ!」
「!」

最後に登場したのはギルドマスターであるマカロフ。
ラクサスは小さく反応を示した。

「何か妙にファンシーだ」
「似合ってねぇ!」
「そのコミカルな動きやめてくれ」

登場したマカロフの姿は妙にファンシーで可愛らしく、フロートの上でチャカチャカと踊っていた。

「・・・」

そんなマカロフを遠くから見ていたラクサスは目を伏せる。
そして、幼き日のファンタジアを思い出していた。







「じーじ!今回は参加しないの!?ファンタジア」
「お前の晴れ舞台じゃ。客席で見させてもらうよ」
「じーじのトコ、見つけられるかなぁ」
「ワシの事などどうでもよいわ」

今のように収穫祭一色に彩られたマグノリア。
幼きラクサスと今より若い(でも見た目の違いはよく解らない)マカロフが会話していた。

「じゃあさ、オレ・・・パレードの最中、こうやるから!」

そう言うと、ラクサスはポーズをとった。
右腕を上げ、人差し指で天を指さし、左腕を肘で曲げたポーズ。

「何じゃそりゃ」
「メッセージ!」

不思議そうな表情をするマカロフにラクサスは言う。

「じーじのトコ見つけられなくても、オレはいつもじーじを見てるって証」
「ラクサス・・・」

孫の言葉にマカロフはじーんと感動する。
ラクサスは明るく、笑った。

「見ててな、じーじ」









幼き日の思い出を思いだし、ラクサスはマカロフの姿を見つめる。
楽しそうに、全身でその楽しさを表すかのように踊るマカロフから視線を外し、ラクサスはパレードに背を向けた。

「!」

そして、気づく。
ラクサスは振り返り、パレードのフロートに目を向けた。
そこには変わらず、マカロフがいる。







―――――――天を指さした、マカロフが。







否、マカロフだけではない。







氷の城をバックに立つ、グレイとジュビアが。







お揃いの服を着た、ルーシィとレビィ、ビスカが。







鎧を纏ったエルザが。








剣を展開させたままのクロスが。







エウリアレーとセルリヒュールを定位置へと戻したスバルとヒルダが。







ルナティックロアと融合した状態のサルディアが。







フィレーシアンを背負ったライアーが。







近くのフロートに降り立ったルーが。







銀髪を後ろで1本の三つ編みにした少女へと姿を変えたヴィーテルシアが。








紅蓮の衣装を着て、頭に銀の飾りをしたティアが。







ストライプのベストを着たハッピーが。







全身に包帯を巻いたナツが。









――――――――パレードに参加している魔導士全員が、同じポーズを取っていた。


「じーじ・・・」

そのポーズの意味を誰よりも理解しているラクサスの目から、涙が溢れた。






たとえ姿が見えなくとも




たとえ遠く離れていようと




ワシはいつでも、お前を見てる




お前をずっと・・・




――――――見守っている







「ああ、ありがとな」

マカロフとギルドメンバー達の想い。
それを胸に、ラクサスは旅立っていった。













岩で造られた城のような建物があった。

「カラスぅ~、お前は何故にそんなに美しい」

バルコニーに止まっているカラスに、1人の男が近づく。
その男は黒髪で、顎近くを覆う髭を揺らした。

「あ?そりゃ嫌われモンだからってよォ?よしよしぃ」

そう言いながら、男は止まっていた2羽のうち1羽を捕まえる。
その瞬間、そのカラスは一瞬にして紙のような姿へと変わり果てた。

「美しいものは儚い命だ。ぶはは」

ヒラヒラと、カラスだった紙は落ちる。

「なァ、ガジルちゃんにシュランちゃん」

男が振り返った先にいたのは、ガジルとシュラン。
ガジルの方も怪我は完治しておらず、やはり全身に包帯が巻かれていた。

「ラクサスが滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だなんて聞いてなかったぞ」
「私もです」

ガジルの言葉にシュランは頷く。
彼女の方は多少の怪我を負っているが、ガジルと比べれば軽傷である。

「ぷふぅ、ぶわはははははっ!」

その言葉に男は大爆笑する。
そして振り返った。

「あれは『ニセモノ』。ニセモノちゃんよォ」

ガジルとシュランの問いに笑みを浮かべて答える男の名は『イワン』。
マカロフの息子であり、ラクサスの父親。
そして・・・闇ギルド、大鴉の尻尾(レイヴンテイル)のギルドマスターでもあった。

「ニセモノ?」
「どういう事です?」

ガジルとシュランは意味が解らず首を傾げる。

「アイツァ、小せェ頃から体が弱くてなァ。不憫に思えたオレはラクサスの体に魔水晶(ラクリマ)を埋め込んだ」
「滅竜魔法を使える魔水晶(ラクリマ)だと!?」
「そんな物があるんですか!?」
「めんずらしいだろォ?」

驚愕する2人にそう言い、イワンは目線を上にあげる。

「奴は破門されここに来るだろう。丁度いい」
「何がです?」

シュランが首を傾げる。
その胸には綺麗な青い宝石のブローチが付いていた。

「あの魔水晶(ラクリマ)は金になるって最近知ったんだヨ。それも信じられねえほどの金になァ」

その言葉にガジルが慌てたように口を開く。

「と・・・取り出す気なのか?そんな事したらラクサスは・・・」
「ぶははははっ!元々あのガキには過ぎた力よ。パパがスッキリ元の子に戻してあげちゃうよォ」

イワンは全く動じず、笑う。

「今は金だ。お金ちゃんよォ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)と戦争するだけの金がいるんだョ」

そう言うと、イワンはガジルとシュランに詰め寄った。
その顔に先ほどまでの笑みはない。

「お前らはもう少し潜入を続けろォ。いいか?スパイだとバレてもこの場所だけは吐くんじゃねェぞ」
「そんなヘマはしねェよ」
「ご安心を」

ガジルはギヒッといつも通りに笑い、シュランは恭しく頭を下げた。










妖精の尻尾(フェアリーテイル)
ファンタジアが終わり、ギルドでは宴が行われている。
思い思いに騒ぐメンバー達を、ガジルは1人、2階から見ていた。

「ガジル」
「!」

その場から去ろうとしたガジルにマカロフが声を掛ける。

「ファンタジアの打ち上げには参加せんのか?」
「ガラじゃないんでね」
「そうか・・・ん?シュランはどうした?お前の近くにいないとは珍しい」
「アイツならあのシスコン野郎に呼ばれてった」

シスコン野郎とは言うまでもなくクロスである。

「ふいー、収穫祭も無事終了か。明日からは街の修復も手伝わんとな。やれやれ」

ファンシーな衣装を脱ぎながら、マカロフは呟く。
ガジルは松葉杖を鳴らし、近づいた。

「マスター」
「!」

顔を上げたマカロフに、1枚の紙を見せる。

「マスターイワンの・・・アンタの息子の居場所を突き止めた」

それを聞いたマカロフは渡された紙をしばらく見つめる。

「よくやってくれた。スマンな・・・危険な仕事を任せて」
「オレとシュランが『二重スパイ』だってのはバレてねえ。それより奴はラクサスの魔水晶(ラクリマ)を狙っている」

松葉杖を鳴らし、ガジルはマカロフに背を向けてその場を去る。

「居場所さえ分かればどうとでもなる。奴の好きにはさせん」











「どうぞ」

一方その頃、ギルドの外ではシュランがブローチを渡していた。
青い宝石のそれを受け取ったのは、同じ色合いの髪と瞳を持つ、クロス=T=カトレーン。

「態々すまないな・・・お前が二重スパイだと知って利用させてもらうとは」
「お気になさらず。もちろんイワン様に知られてはいませんわ。きちんと最初から最後まで録音済みです」

そう言われ、クロスはブローチを見つめ、宝石をいとも簡単に外す。
そこには小さい機械が装着されていた。

「にしても、どうしてそのような機械を貴方が?」
「仕事に応じて必要になるのさ。使うのは主に姉さんだが、姉さんに変身する際は俺も使う」
「なるほど」

シュランは軽く頷く。

「それでは、私はこれで」
「ありがとう。また世話になる事があると思うが、その時は頼む」
「了解です」

クロスの言葉にシュランはやはり恭しく頭を下げ、ギルドへと入っていった。
1人残ったクロスは宝石をはめ込んだブローチを見つめる。

「闇ギルド、大鴉の尻尾(レイヴンテイル)・・・」

その青い目には、怒りに似た感情が宿っていた。

「『あの女』がここにまで関わっているとしたら・・・大きな証拠になるな」 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
BOF編、終了!
次回からは「日常編 その2」です。(タイトルは仮です。こうなるかは解りません)。
ルーシィとルーシィのお父さんの話が2話、そして不足のナツティアもやろうかな?

・・・これは予定ですが、ティアの過去編が終わったら主要キャラ3人の目線で原作開始までの話を書く予定です。
ルーがルーシィと出会うまで。アルカがリサーナと大地(スコーピオン)を失った時。そしてティアが後に最強チームとなるメンバーと出会う時・・・などなど。
ギルドに入る前の3人や原作開始前の3人の、3人目線で書きたいな、と思ってます。

感想・批評・ミスコン投票、お待ちしてます。
ついに次回結果発表! 
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