八条学園怪異譚
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第五十三話 空手部主将その五
「暴力事件起こす奴いるでしょ」
「そうですね、結構」
「力や技が強くなってそれで暴力振るう奴はね」
それはというのだ。
「三流どころか人間失格だから」
「そういう奴って剣道や柔道でもいますよね」
「いるわよ、特に学校の先生でね」
何故かこの職業は暴力座たを起こす輩が多い、マスコミ関係者と学校の教師は犯罪行為が異常に多い職業ではないかと思えるまでに。
「生徒を殴ったりするのっているでしょ」
「体罰とかじゃなくて」
「暴力で、ですね」
愛実も聖花も言う。
「いますね、酷い奴が」
「そんなのが」
「そういう奴がいるけれど」
それでもだというのだ。
「その人はね」
「違いますか」
「ちゃんとした人なんですね」
「むしろそうした奴を成敗する人だったから」
むしろ逆だというのだ、暴力を振るう輩を倒す人物だったというのだ。
「実際ある中学校で暴力を振るう教師を道場の勝負で倒したらしいわ」
「つまりその拳で成敗した」
「そうなんですね」
「そうよ、その教師は剣道部の顧問で竹刀と防具を着けていたけれど」
「それで勝ったんですか?」
「ハンデ凄いですよ」
「その人が言ったのよ、お互いのスタイルで勝負をしようって」
それでだったというのだ。
「正面からぶつかってそうしてね」
「それで勝ったんですか、竹刀と防具で武装している相手に」
「丸腰で」
「言うまでもなく竹刀を持っていると違うわよ」
剣道の初段は空手三段に匹敵するという、それだけ武器を持っているということは有利だということなのだ。
「それでもなのよ」
「その暴力教師に勝ったんですね」
「剣道に空手で」
「完膚なきにまでにね」
叩き潰したというのだ。
「それで成敗された教師は暴力行為が全部明るみになってね、懲戒免職よ」
「自業自得ですね」
「むしろそれまで問題にならなかった方が不思議ですね」
何故か教師の暴力は表に出にくい、その結果学校では教師による過剰な暴力がはびこり続けているのが日本の教育の現状だ。
そしてその空手の先生についてだ、二人はあらためて言う。
「その人それだけ強いんですね」
「そこまで」
「そうよ、相当だったから」
「心身共にですね」
「強いんですね」
「だから安心してね、というかあんた達も会ってない?」
茉莉也はここで怪訝な顔になって二人に問うた。
「一回」
「いえ、それは」
「ないと思いますけれど」
「そうだったかしら」
「はい、空手着の人ですよね」
「そうした人は」
「そうだったかしら」
首を傾げさせてだった、茉莉也は二人の返答に首を捻って返した。
「一回おられなかったかしら」
「ううん、そうですか?」
「記憶にないですけれど」
「まあそれならそれでね」
「ここで、ですか」
「一度お会いすればですね」
「そう、いいからね」
それならそれでだとだ、茉莉也は割り切って言う。
そして三段の最後、下段のチョコレートケーキを食べての言葉は。
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