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八条学園怪異譚

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第五十三話 空手部主将その一

                第五十三話  空手部主将
 次の泉の候補地は空手部の道場だ、だが。
 その空手についてだ、愛実は聖花に聖花の家の奥で二人で紅茶を飲みながら尋ねた。
「ねえ、空手ってね」
「格闘技、いえ武道よね」
「そうよね、拳で瓦を割る」
「そうそう、格闘技の代表的なものよ」
「けれどね」
 そのことは知っているがとだ、愛実は紅茶を飲みつつ首を捻る。
「私空手は」
「私もよ、全然知らないわ」
 聖花もそうだった、それは二人共だった。
「格闘技全般がね」
「そうなのよね、ボクシングとかもね」
「観ないしね、試合も」
「西成の方のボクサー一家は知ってるけれど嫌いだし」
 好きになる者もそうはいないだろう、下品で粗野、無教養で知性の欠片も見出すことは出来ない。しかもスポーツマンシップもない一家だからだ。
「そもそも私達体育会系じゃないし」
「元からね」
「だから空手っていっても」
「本当に関わりないわよね」
「正直ね」
 愛実はこうも言った。
「空手部の道場なんて卒業まで行くことはないって思ってたわ」
「私も、空手ねえ」
「別に暴力とかないわよね」
「うちの学校校内暴力には五月蝿いから」
 聖花は愛実にこのことも話した。
「ちょっとしたいじめでも出場停止、部活動の自粛よ」
「それと停学よね」
「酷いと退学もあるそうだから」
 そこまで厳しいというのだ。
「先生達も見て見ぬふりしないからね」
「そこは理事長さんが厳しいのよね」
「そう、だからね」
 八条学園では校内暴力の類については厳しいのだ。
「空手部にもそれはないわ」
「だったらいいけれど」
「ただ、空手部に誰がいるのかよ」
「そうそう、そのことよね」
「知ってる?あそこのこと」
「それが」
 愛実は困った顔で聖花に答えた。
「私空手自体に興味がないから」
「そうよね、私もあそこのことは」
「聞いてみる?誰かに」
「誰かって?」
「青木先輩にでも」  
 愛実が名前を出すのは彼女だった、
「あの人なら学園の敷地内に住んでおられるし」
「それに巫女さんだからよね」
「そう、だからね」
 それでだというのだ。
「あの人にお聞きしてみたら」
「いいっていうのね」
「そう、どうかしら」
 こう聖花に提案する。
「それか博士か」
「博士もいいわね」
 聖花は博士の名前にも反応を見せて言う。
「というかどの人もね」
「いいわよね」
「ええ、じゃあどちらの方にお聞きするかね」
「そうよね」 
 二人で聖花の家で紅茶を飲みながら話す、そしてここで。
 愛実の携帯が鳴った、そして出ると。
「今何してるの?」
「あっ、先輩ですか」
「ええ、私よ」
 茉莉也だった、電話をかけてきたのは。 
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