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久遠の神話

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第七十五話 避けられぬ戦いその八

 だが彼は紅生姜はかけていない。
 そのお好み焼き、工藤と同じく豚と烏賊、海老の入ったそれを食べながら言うのだった。
「次はあの人で」
「はい、ただ」
「ただ?」
「他の人達は」
 スペンサーと王以外の戦うことを選んでいる剣士達はというのだ。
「どうも」
「まだ、か」
「考えが出ないですか」
「智恵は不思議なものです」
 何故不思議か、そのことも言う智子だった。
「急に出る時もあればどうしても出ない時もあります」
「閃きか」
「それが大きいのです」
 智恵にはだ、その閃きが重要だというのだ。
「それがなければ」
「智恵は出ないか」
「そういうものですか」
「そうなのです、お二人についてはですが」
 スペンサーは大統領選挙という外的要素に任せる、そして王については怪物と戦ってもらってだというのだ。
 しかしだ、それ以外の剣士達はというのだ。
「あの方々については」
「今は、か」
「智恵が出ないんですか」
「特に戦いを求めたいだけの方と」
 加藤のことだ。
「権力志向の方は」
「あの政治家先生だな」
 工藤は話を聞いてすぐに権藤のことだとわかった、彼だとだ。
「あの人か」
「権力を求める人は厄介です」
「そうだな」
「はい、権力は人が求める欲の中で最も厄介なものの一つです」
「それは俺もわかる」
「俺もです」
 工藤だけでなく高橋もわかっていることだった、権力の持つ毒の恐ろしさについて。
「自衛隊の中でも権力を求める奴はいる」
「警察でもなんですよ」
「部隊でな、お山の大将の座を守りたい奴がな」
「いますね、背負でも」
「勿論要職を求める奴もいる、自衛隊のな」
「キャリアの人にはそういう人もいるみたいですね」
「俺達はそういう世界には興味がないがな」
「いますよ、小さな場所でも」
 例えばその部隊でもそうだし学校のクラスでもだ、権力の座に就きたく就いていたら維持しようとして腐心している者達がいる、本当のどの世界でもいる。
「学校の部活でもな」
「町内会でもいますね」
「そうです、人の世界には何処でも権力が生じます」
 人が集まる中ではどうしてもリーダーが必要になりそこに権力が生じるのだ。このことは人の世ではどうしてもあるものだ。
 それでだ、智子も言うのだ。
「これにこだわる人は」
「何があってもだな」
「退かないですね」
「はい、そうです」
「それであの先生もか」
「難しいんですね」
「どうしたらいいものでしょうか」
 難しい顔でだった、智子は考えつつ二人に言った。
「今考えています」
「あの先生は確かに権力志向が強い」
 工藤は権藤のその性格から話した。
「しかしそれだけの人じゃない」
「政治家になり権力を手に入れてからのこともですね」
「頭に入っている人だ」
 そこが只の権力志向の塊だけではないというのだ。 
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