久遠の神話
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第七十五話 避けられぬ戦いその三
「その経済政策を見ればわかるな」
「ですね、アメリカの中でも一部だけが栄えて」
「他は切り捨てだ」
「かなり極端な政策ですよね」
「所謂富裕層だけのことしか考えていない」
その富裕層が彼等だというのだ。
「そうした連中だ、そうした連中ならやがてアメリカもな」
「駄目になりますね」
「一部が栄える国家には未来がない」
歪みが出来る、その歪みが大きくなりやがてそれが国家を蝕んでいくというのだ。
「それでアメリカが駄目になればだ」
「交流の深い日本もですね」
「駄目になる、ネット等で共和党をただ親日と見られるだけで支持している連中は何もわかっていないのだ」
工藤はここでも似非保守を一蹴した、何もわかっていないというのだ。
「今の共和党、ネオコンに牛耳られている彼等ではな」
「アメリカ自体が駄目になりますか」
「あの民主党の大統領候補はそこまでわかっている」
長い視野で見ているというのだ、彼は。
「剣士の戦いで得られる永遠の覇権もだ」
「ネオコンのものにしかならないですか」
「それにだ」
しかもだというのだ。
「永遠の覇権、それは変わらないものだ」
「普遍ですね」
「普遍はやがて腐る」
「普通はっていうか絶対にですね」
「水もだ」
会場自衛官らしかった、海即ち水を例えに出すところがだ。
「流れが止まると淀みだ」
「それで腐りますね」
「それと同じだ、永久普遍の覇権が約束されるとだ」
「それでその上に胡座をかいてですか」
「やがて腐っていく」
そうなっていくというのだ。
「本当にな」
「じゃあ民主党の候補はですか」
「そのことがわかっているな」
そうだというのだ。
「よくな」
「そうですか」
「そうだ、だがネオコンはわかっていない」
今の共和党を仕切る彼等は、というのだ。
「そこまでな」
「視野が狭いんですか」
「かなりな、結局自分達のことしか考えていないからな」
そのせいでだというのだ。
「彼等はそこまでわかっていない」
「だから剣士の戦いに大尉が入っているとそれを幸いにして命令したんですね」
「生き残れとな」
そして合衆国の覇権を永遠にする様に願えと言ったというのだ、その合衆国を確実に腐敗させることをである。
「何もわからないままな」
「覇権も安泰だとですか」
「腐る、永遠の覇権を持っていてもな」
「若し今のアメリカが覇権を永遠に持つと」
「そのうち腐りな」
その座に安穏とするあまり、工藤が今話すのはこのことだった。
「そしてだ」
「腐りきった国が世界を仕切るんですか」
「そうなっていく」
「それは世界にとってもよくないですね」
「かなりな」
工藤は深刻な目で高橋に話した。
「碌なことにならない」
「只でさえネオコンは問題が多いのに」
「ネオコンを問題なしと言う日本の保守派の一部は何もわかっていない」
「力があるから正しいとか言うのもいますね」
そして親日と思われるからだ、ネットで騒いでいる似非保守の中にはそれだけでネオコンをよしとする者もいるのは前述の通りだ。
「何ていいますか」
「愚かだな」
「そういう連中って自分達のことしか考えずにネオコンにもたれてるだけですよね」
「俺もそう思う」
「何かそういうのは」
「醜いな」
「全くですね」
高橋はどうかという顔で忌々しげに言い捨てた。
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