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久遠の神話

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第七十四話 実った愛その九

「今からな」
「ああ、そうだな」
「ずっとここで話をしている訳にもいかないしね」
 両親は我が子のその言葉に頷いた、そして。
 前に見える大きめの家を見てそこに向かおうとした、だが。
 その三人の横からだった、まずは由乃の声がしてきた。
「あっ、いらっしゃい」
「今来たところだ」
 広瀬はその由乃の声に応えて振り向いた、するとだった。
 そこに彼女がいた、そして。
 由乃の両親もいた、二人はその場で微笑んでそれぞれ広瀬の両親に対して穏やかな声でこう言って来た。
「はじめまして」
「ようこそいらっしゃいました」
「では今からです」
「お話をしましょう」
 見れば由乃の父はかなり大柄だ、だが。
 母は小さい、由乃によく似ている。その二人を見てだった。
 広瀬の両親はその由乃の両親にこう答えた。
「こちらこそはじめまして」
「おはつにお目にかかります」
 まずは返礼からだった、そして。
 それが済むとだ、由乃の父が今この場にいる面々に穏やかな声で話した。
「では外でお話をしますか?」
「えっ、外でですか」
「お家の中ではないんですか」
「実はバーベキューを用意していまして」
「ではバーベキューを食べながらですか」
「お話を」
「そうしましょう、その方がじっくりお話出来ますから」
 食べてリラックス出来てだというのだ。
「ですから」
「はい、それじゃあ」
「お言葉に甘えまして」
 二人も由乃の父の言葉に頷く、そしてだった。
 広瀬もだ、いつもの態度だがこう彼に答えた。
「御願いします」
「うん、じゃあね」
 こうしてだった、一行はバーベキューを食べながらそのうえで広瀬と由乃の話をすることになった、だがその話はというと。
 広瀬と由乃は二人だけになりお互いの両親達で話をしていた、四人はバーベキューを食べビールを飲みながら話していく。
 その四人、バーベキューを焼く場所の傍に置かれている木のテーブルと椅子に座って話す彼等を見ながらだ、由乃はこう広瀬に言った。二人は二人で立って食べながら話をしている。
 由乃はよく焼けた牛肉を食べながらこう広瀬に言った。
「いい感じね」
「そうだな」
「お父さんはいつもこうだからね」
「バーベキューがお好きだな」
「それとビールとね」
 今飲んでいるそれも好きだというのだ。
「この二つと一緒にお話をするとね」
「いいからか」
「うん、いつもそう言っているからね」
 それで今もだというのだ。
「勿論そうじゃない時もあるけれど」
「今はな」
「考えれみればそうなのよね」
「外で飲んで食べながら話すとリラックス出来るな」
「そうでしょ、だからお話をするのはね」
「バーベキューを食べながらだな」
「それがいいってね」
 これが由乃の父の考えだというのだ。
「お父さんらしい考えだと思うわ」
「しかし俺達はな」
 肉や野菜を焼いているのは二人だ、勿論そうしながら食べている。
 肉を箸でひっくり返しながらだ、広瀬は由乃に今はこう言った。
「今はどうもな」
「脇役になっているっていうのね」
「そう思うがな」
 それぞれの親達で話しているからだ、肝心の筈の二人は脇役になっているからだ。  
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