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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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十五夜 ~幼子は座して成り行きを見定めるだろう

 
前書き
ふと思ったけど、自分にはお気に入りユーザーに入れている人が一人もいません。
これは皆キライとかそういう事ではなく、作者よりも作品の方に重きを置いているからです。「あの人か書いた小説だから」ではなく「この小説が気に入ったから」で選ぶ事が圧倒的に多いから、そうなるとお気に入り小説機能だけで事足りるのでユーザーは誰一人登録してないという事態に陥ると。誰かに迷惑をかけるわけではないですけど、他のお気に入りユーザー機能利用者を見ると言葉にならない疎外感を感じる・・・ 

 
「・・・リィンフォース、増幅機構のライン切ってくれ」
「了解した」
「よし、次は・・・シャイン。一次的にそっちのデカブツとライン繋げるぞ」
「あいさー」
「・・・シュテル嬢ちゃん、第3バイパスを直列から並列へ」
「了解しました」
「ユーリ嬢ちゃん。コアに異常は?」
「システムそのものには・・・ただ、ナハトヴァールさんの精神状態の所為か魔力供給にムラがあるみたいです」
「よし、ニルス。ナハトの頭をなでなでしろ」
「はいはい・・・なでなで」
『・・・ふん。そんなもので心を左右されるほど私は甘くは・・・』
「魔力供給正常に戻りました」
「防護結界のラインを切り離して下部端末と複合接続するぞ。ツヴァイ嬢ちゃん準備はいいか?」
「はいです!」
『貴様らぁぁぁーーーーー!!・・・うう、おまえのせいだニルス!!』

そっち方面に詳しそうな人たちが着々とナハトさん救出作戦を続けている。が、全くついていけない見学組はデュランダルというすごい武器で海を凍らせて作った足場で休憩している。
作業はクルトさん主導で補助にリィンさん、ツヴァイさん、妹そっくりシュテルちゃん、ユーリちゃん、そしてさっき巨大生物に乗ってさっそうと現れたシャインさんが付いている。

難しいことはよく分からないが、あの巨大生物は実は機械でもあるらしく、そこにナハトさんを移転させれば普通に消えずに済むそうだ。すごいね。なお、はやてちゃんは後学のために見学するそうで、シャマルさんと一緒に巨大生物の頭にちょこんと座っている。

「あ・・・あそこが目であれが口だったんだ・・・」
「離れて見ねーと岩の塊にしか見えね―な。ギガデケー・・・」

帽子に兎が付いていない方のヴィータちゃんは現在僕と一緒にしっこく鎧に抱えられている。はやてちゃんが巨大生物の上に座っているのが羨ましくなったらしい。僕も分かります、その気持ち。
ちなみになのはは偶然友達になったというフェイトちゃんとお喋りしている。

「秘密の特訓って魔法の練習だったんだね。私もお母さんに褒めてもらいたくってよくやってたんだ」
「私としてはフェイトちゃんも魔法使いだったことに吃驚したんだけど・・・そうなんだ?」
「うん。私達って実は似た者同士なのかもね!」
「えへへ・・・そうかな?あ、似てると言えばフェイトちゃんにもお兄ちゃんがいたんだ?」
「うん!お兄ちゃんはねぇ・・・」

そういえば町で発生していたという謎存在達は住民たちの手で全て駆逐されてしまったらしい。海鳴防衛隊の面目躍如だったと沖浦君が携帯のメールで送ってきた。尚、情報網によるとシャマルさん(僕を庇ってくれた方)らしき人は知り合いの人に引き取られていったそうな。はやてちゃんの家族か何かだろうか?後で聞いてみよう。
と、作業の様子を見ていたクロノさんが立ち上がって休憩組の皆を見渡した。

「―――さて、そろそろ僕たちの出番だ。皆準備はいいかい?」
「いつでも!」←素で返事したなのは
「どこでも!」←それに乗ったフェイト
「たとえどんな状況でも!」←ネタを振ったアルフ
「どんな時代でも!」←何故かノリノリのザフィーラ
「小学生でも・・・!」←使命感に駆られた僕
「えっと・・・これ読めばいいの?・・・人は人を愛することが出来るはず!」←カンペ渡されたレヴィ
「但し、(ユーリ)を享受したくばその人を護り・・・って何を言わせるかこの愚物共!!」←王様

一連の流れはディアーチェちゃんによって断ち切られてしまったのでした。残念。
でもきっとディアーチェちゃんは生まれつき空気の読めない子なんだと思うから責めるのも酷だろう。
・・・睨まれました。ん~?間違ったかな・・・?

《少年、これから我々がやることは覚えているな?》
『うん。ナハトさんのお引越しが終わったらあの大きい奴を皆で倒すんでしょ?』

うろ覚えだが、確か今のナハトさんはいろんな防衛システムをくっつけている中心らしい。だからナハトさんのシステムとくっついてる部分をいい感じに弄って切り離す。でもそうすると防衛システムの制御人格がなくなるので完全制御不能状態・・・つまりげきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム状態になるってはやてちゃんが言っていた。
・・・言い方がちょっと古いと思ったが何も言わなかった。僕は空気の読める子なんです。

それでそれで、ええっと・・・そうだ。ナハトちゃんはヨリシロさんと言う人から力を分けてもらって動いているらしい。だからお引越しと同時にその力の供給を断って弱体化させるからその隙に皆で袋叩きにする!

『・・・で、合ってたっけ?』
《うむ。先ずはあそこにいる・・・ぽんずだったか?あのラグズ・・・もとい、娘が動きを封じてくれるそうだ》


「ねーねーぽんずー顔見せてよ顔~」
「・・・ぅなーお」
「あーっ!また都合悪くなったら鳴き声で誤魔化した!ずる~い!」

もふもふもふ・・・

「・・・でも許す。ついでに尻尾モフらせてくれたらもっと許す」
「・・・まぅ」

ぽふっ・・・もふもふもふ・・・

「えへへへ・・・ぽんず大好き♪」
「まーお」


『ぽんずちゃんって猫人間だったんだね』
《・・・多分違うと思うが》



数分後・・・



「じゃあ始めるぞ!」
「はーい!・・・ぽんず、お願いね?」
「なーお」

ここからはノンストップだ。ぽんずちゃんがナハトヴァールの戦闘躯体を拘束すると同時にナハトさんを一気に切り離し。力の供給を断つと同時にみんなで一斉攻撃を仕掛けて今回の件に全ての決着をつける!・・・と、いいな!

「―――うぅぅーー・・・ふしゃー!!」

ぽんずちゃんが翳した両手にバスケットボール程の大きさの球体が出現する。まるで海の青をそのまま切り取ったように美しいその玉をぽんずちゃんが掴んだ―――その瞬間。



ざばぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!



その海水の壁の高さ、実に100メートル超。浮世絵の『神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)』が可愛く見えるほどの莫大な質量が明確な方向性を持ってナハトヴァールを包囲した。

「つ、津波・・・!?」
「なんつー規模・・・!!こりゃSLBとは違う意味でヤベーぞ・・・!?」
「完全に個人が使う魔法の域を超えている・・・!!」
『クロノ君クロノ君。あの玉からロストロギアの反応出てるんだけど』
「今更それ位じゃ驚かないよ」

周囲を囲んだ水はそのまま蜘蛛の巣のように幾重にも分裂しながら水の紐とでも言うべき形になってナハトヴァール戦闘躯体を雁字搦めに縛りあげる。

「ぅまーお!!」

が、それだけでは終わらなかった。ぽんずが一吠えすると同時に彼女の両腕に野球ボールほどの大きさがある琥珀色の玉が付いたブレスレットが出現する。2つの玉が輝いたと同時に・・・今度は海底の岩礁が次々に隆起し、ナハトヴァールの脚部を埋める様に次々に激突し始めた。200m近くある巨体が揺れていることからその隆起した岩礁の威力が並々ならないことが理解できる。

「・・・あの使い魔、天地創造の力でも持っているのでしょうか」
「ほえー・・・まさかぽんずちゃんにそんな隠された能力が!街中では絶対使ってはいかんでー!!」
『クロノ君クロノ君。あの玉からもロストロギア反応出てるよ?あと彼女の服と靴からも』
「ロストロギアのバーゲンセールだね。管理局と戦争でもしに行くのかな?」

あの使い魔(?)に関しては事件が終わっても触れないでおこう、と心に決めたクロノであった。
ルールで取り締まるばかりが管理局の仕事ではないと必死に心に言い聞かせて。


「よし、ここの隙間にナハトちゃん放り込んでくれ!」
「よし・・・魔力アンカーセット!引き揚げろ!!」
『いだだだだだだ!?あ、足先になんか引っかかってる!!』
「なにこれ、折れ曲がった金属バット?何でこんなものが入ってるんだ・・・よし、取れた!」
「アレだ。隣の家にクレーン車で松の木を植えてた光景を思い出すな」
「あーわかるわソレ。リューリンキの頭に空けたあの穴と魔力アンカーっていうアレのせいやろな」
「スターなオーシャンの漫画に出て来たマンドレイク娘を思い出すねー」
「うわ懐かしっ!シャインさん御幾つ?」
「シャインさんじゅうななさいってことで1つ」
「いや9歳だよね?」

おらーい、おらーい、と車の誘導みたいな声を出してるリィン姉妹と運搬するクルト、ニルスコンビの姿が緊張感を根こそぎ削いでゆく。戦闘躯体から両手両足を開放されたナハトは嬉しそうに足をパタパタ振っているのが微笑ましい。
やがて龍鱗機の穴をあけた部分にすっぽりと入れられたナハト。それに呼応するよう―――ふんじばってた戦闘躯体が震えだした。コントロールを失ったのだ。

「力の供給は分断したか?」
「もしもーし、俺だよ俺・・・いや詐欺じゃないから。・・・・・・そう、さっくりやっちゃって。え?ちょっと気合い入れてぷちっとやればいいから・・・そうそう。んじゃーまた明日ね!・・・リンク切ったぞー!」
「憑代と仲良しかお前は!!何普通に携帯電話取り出して通話し出したのかと思ったよ!!」

コントロールを失い、力の供給も失ったナハトヴァールは巨大な化物の集合体として急激な膨張を始めた。まるで冥界の門から悪魔の軍勢が這い出る様に膨張を続けるその塊に―――とうとう鉄槌が下される。
それは戦闘では断じてない。それは―――


「「「「「蹂躙の時間だ」」」」」


後に「魔導師の黄昏事件」と呼ばれることになるこの事件は、参加魔導師の総合魔力量において管理局史上最大を叩き出した歴史的事件として語り継がれることとなる。



先ず先陣を切ったのは管理局4人衆だった。仕事らしい仕事が達成できていないためか相当ストレスが溜まっていたようだ。

「仕事しないままで終われるかって!!―――『エンプティ・ハート』!カートリッジ3発ロードだ!」
『レディ!』
「あら、それじゃ私も手伝ってあげるわ・・・『パンテオン』!パターンA01スタンバイ!!」
『仰せのままに、我が姫君!!』

ニルスの手に握られたライフルのような形の杖『エンプティ・ハート』が命令に従い3つの薬莢を吐き出した。同時に横から出て来たマリアンもメイス型デバイス『パンテオン』を構える。あらかじめ指定された順序を辿り、カートリッジが2発ロードされた。

「クロノが持ってきた予備の(ビット)を合わせて『16個』・・・これが無いと始まらないわよねッ!!」
「人を使いっ走りにしないでほしいね・・・っと、『デュランダル』!Bビット展開!!」
「あのデカブツ相手なら遠慮はいらんな・・・『パニッシャーバイト』!4発ロードだ!」
『それも良かろうて・・・』

4つの星が煌めくとき、管理局の不敗神話が誕生する。

「聖なる切先よ、来りて邪悪を撃ち払え!ディバイン・エッジ展開!クラスターシフト・・・斉射!!」
「大火力もいいけど、数で押すのも嫌いじゃないわ!フォーリングメテオ・シャワー!!」

ニルスが展開したのは聖なる刃。発車と同時に分裂するその数10・・・30・・・70・・・108つ。彼が持てる掛け値なし全ての魔力を注ぎ込んだ刃が一斉に空を切る。その一撃一撃にプロテクションを容易に砕ける魔力が充填されたそれは魔力運用の極致である。
対するマリアン。ブラスタービットを4対1つの魔法陣に自分の手に持つそれを加えて巨大な5重魔方陣を展開。全魔方陣とビットの魔力ラインを繋げ、火力ではなく数に特化させた超特大の魔導ガトリング砲が火を噴いた。なのは並みの魔力を込めて発射されたそれは最早文字通り眼前のすべてを粉砕する隕石の雨。

二人の射撃魔法は情け容赦なく次々にナハトヴァールの残骸に命中し、信じられないスピードで表面を削ってゆく。さながらたった2人の戦争―――その砲撃が途切れた瞬間、絶対零度の氷獄が飛来した。

「凍てつけ、エターナルコフィン!!」

4つのブラスタービットによって更に増幅させたそれはこの世に現れた地獄の最下層、悲嘆の川(コキュートス)の吹雪そのものである。あれだけ巨大な質量を誇るナハトの残骸を一瞬で凍結させた。膨張する巨体が完全に停止する。

「今だクルト!遠慮はいらない、全力でぶつけろ!!」
「元よりそのつもりだ・・・跡形もなくなったって責任は取らんからな」

その氷獄さえ噛み砕く伝説の顎が、目の前に迫っていた。両腕に装着した篭手型デバイス『パニッシャーバイト』の周囲の大気が歪に曲がる。いや、クルトの魔力変換資質によって生み出されたエネルギーが膨れ上がっているのである。

「草薙の剣を生み出した大蛇の牙・・・!八岐連顎(やまたれんがく)!!」

その時、彼の腕には巨大な”牙”があった。空間を歪曲させるかのような巨大な”牙”はその突き出された両拳と重なり、轟音と共に氷諸共ナハトの残骸を深く抉った。
1撃が繰り出されると共にミサイルが着弾したかのような轟音が大気を叩く。それが八岐の名の通り、2、3、4、5、6、7、8撃。命中する度に存在そのものを削られるようなその連撃は―――

「スサノオさんがどれだけ卑怯な手を使ってヤマタノオロチさんを倒したのかがわかりますね・・・スサノオさんも汚い大人だったんだなぁ・・・」
《確かに龍退治の物語としては些か情趣に欠けるな》
「あー・・・確か酒に酔わせて眠ったところを、だっけか」
「日本神話に登場する生き物は基本酒に弱いイメージあるわー」

汚いさすがスサノオ汚い。騎士道の風上にも置けない男です。きっと現代にいれば愚物みたいな男に違いありません。・・・と、それはともかくクルトさんの攻撃でもうあらかたのパーツが粉微塵になったナハトの残骸は戦闘能力が残っているようには見えず、出番がないまま決着がついたようにしか見えません。
が、シャインお兄さんは何だか浮かない表情。

「どうしたんですか?」
「ん~・・・開いた枠に収まったのか?だから矛盾は無い?エグザミアは永遠結晶・・・無限力の発露の一つの形か。ならば普遍性を以て矛盾を免れた・・・システムU-Dとは切り離されているが、可能性の欠片は残る。だったら・・・まずいかもな」
「・・・???どういうことですか?」
「いや、その―――」

会話が続くことは無かった。


管理局の皆さんがボロ雑巾にしもう消滅を待つだけの筈のナハトさんの残骸が、めきめきと音を立てて再生を始めていたのだ。
しかも、前より更に生々しい形で。ちょっと気持ち悪い・・・

「・・・そうか!アレは元々永遠結晶(ユーリ)の力をシステムに組み込んだ存在!なれば奴もまた平行世界における”永遠結晶”の可能性を内に秘めていたという訳か!!」
「永遠の力があれば、憑代の力を供給してもらう必要もありませんね」
「が、ナハトの人格が抜けたことで力は弱まっている。後はあのデカブツをよそに迷惑がかからないところに転送してしまえば・・・!」





「フェイトー!アルフー!シャインー!迎えに来ましたよー!そろそろご飯の時間に・・・って、あれ?」
「あ、母さんにリニス。もう終わってたんだ」
「あらヤダ、まだ片付いてなかったのね・・・邪魔しちゃったかしら?」

話した盛り上がっている途中で謎のお姉さん2人が転送魔法でやってきた。
特に猫耳生やしたリニスの声は完全に子供を迎えに来た親のトーンなので真面目に話し合ってた皆さんは器用に空中ひな壇ずっこけというパントマイム染みた真似をしている。

「丁度いいや。ちょっと面倒事になったから手伝ってくれよ二人とも」
「む、面倒事を人に押し付けるのは感心しませんね。自分の仕事は自分でやらないと・・・」
「お願いリリス!助けて・・・ね?」(コナン君ばりの小学生演技)
「勿論いいですともッ!!さあ、どんどん頼ってください!!」
「リニス、あなた本当にそれでいいの・・・?」


え?「お姉さんが二人・・・?」ですか?
・・・僕は空気の読める子なのです。二人ともお姉さんです。そう言えば大人は喜ぶって知っているのです。 
 

 
後書き
ラストまで全力疾走あるのみ! 
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