もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
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十五夜 ~少女はその奇跡を忘れないだろう~
前書き
5/12 デバイスの名前間違えてたので修正
それは虐げられし者の慟哭であった。非道な扱いを受け、大きな力の流れに為す術もなく流された者の呪詛。
『お前たちに解るか!?劇場版で初めて名前が出たせいか二次創作で名前を全然呼んでもらえない哀しみ!実は自我があるのに毎度毎度毎度毎度アルカンシェルで跡形もなく吹き飛ばされる上に諸悪の根源のような扱いを受ける哀しみ!!この世界に至ってはその影を見せる前に存在そのものを消滅させられた哀しみ!!挙句実は紫天の前座だったというオチを付けられた私の哀しみがッ・・・哀しみ、が・・・う、うわぁぁぁーーーーーーん!!!』
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
この場にいる人間の半分以上が何言ってるか理解できていないが、残滓組とフェイト、アルフは何となくだが彼女の心中を察した。
考えてみれば彼女は原作で言うなのはA'sのストーリー内ではパラレルで生きている事のあるリィンを除けば唯一の犠牲者だ。自我もあるんだか無いんだかハッキリしないうちに消滅させられている。はやてだけはナハトに対して謝っていたが、この世界ではそれすらも消滅したので彼女は本格的に哀しみを背負っているのだろう。未来に別のきっかけで生まれる可能性がゼロではないツヴァイよりも更に悪い扱いでは暴れたくもなるだろう。
「・・・アイン」
「なんだ、ツヴァイ」
「リィン・・・これ以上は我儘言わない事にします」
「そうか。それがいいかもな・・・」
今日より明日より出番が欲しい。それこそが今回の一件を引き起こした切実過ぎる理由という事なのだろう。
死後の世界までこの有様とは世知辛い世の中である。
「ねぇ、どうにかできないかな?」
「うん・・・何だか悪い人じゃないみたいだし、どうにかしてあげたいね」
「どうにかったって・・・どうやって?」
彼女に同情的なフェイトとなのはとしては何とか彼女の無念を祓ってあげたいのだろうが、生憎アルフにはその方法に見当がつかなかった。他の面々も同様のようである。尚、ニルスは未だにナハトの子守を任されているため話し合いには参加できない。
子守スキルEXのニルスもニルスだが、子守されるナハトもナハトである・・・主に精神年齢の低さが。
「そもそもこの町の残滓連中は、全てシャインの探しに行った”憑代”にあの子の思念が乗り移ったことが原因で外に出て来たんだろ?で、その憑依がとければあの子はまた虚数領域の思念の溜まり場に戻っていく。根本的にもう死んでるんだよ?」
「死んでるけど・・・でも元は夜天の一部なんでしょ?だったらプログラムだからこの世界に定着させる事くらい出来るんじゃなの?」
ここにリニスが居れば「親子だなぁ」と漏らしただろう。そう、プレシアは死後の世界の存在でも条件次第で現世に定着させられることを証明した。フェイトにプレシア程の知識や技術はないが、その着眼点は相当近いと言えよう。
しかし、それでもまだ問題があることを指摘したのは残滓シグナムだった。
「だが、防衛システムの中枢でありシステムそのものであるナハトヴァールには致命的なプログラムエラーが存在する。今でこそ残滓という都合のいい身体によって自我を保っているようだが・・・」
「この世界に定着させた瞬間また暴走して結局結末は同じ・・・ってことね。ふわぁ・・・」
付随するように言葉を続けたマリアンが退屈そうに欠伸をする。あまり感心できる態度ではないためかはやてやなのはは少し嫌な顔をしたが、マリアンは気にするでもなく自身のデバイス「パンテオン」を肩に乗せた。
「悪いけどそっち系は専門畑外なの。魔法プログラム関連はそっちの畑を弄ったことがあるクルトに聞いて頂戴ねー?」
「だそうだが、どうなのだ貴様?」
先ほどから腕を組んで傍観していたディアーチェが横目でクルトを見た。先ほどからじっとニルスとナハトの様子を見ていたクルトは、その声に振り返る。自然と全員の視線が彼に集まった。
「死者を助けるってのも変な話だが・・・まぁいい。助けるにあたってパッと思いつく問題があるな。まず、バグを削いであの人格だけを取り出すこと自体は難しくないだろう。何せリインフォース姉妹に闇の書までいるんだから必要なデータは揃ってる。問題はその後だ」
現在残滓闇の書は苗にボコボコにされた顔をシャマルに治療してもらっている。
残滓によって構成されているとはいえプログラムはプログラム。しかもリィン達は元々人格管制プログラムなのだからパーソナルデータに関しては完全にナハトより上位である。ならば人格は問題なくバグから切り離せるのだが・・・
「切り取ったプログラムを入れる器が無い。残滓で構成された身体をどう改変しても事件解決の暁には供給が消滅し崩れ去る。他のものに入れようにもリンカーコアの存在しないものに入れた場合は魔力供給が途絶えるから形を保てず直ぐに消滅するだろう。無理な形で定着させれば最悪データが吹き飛んで元も子もなくなるし・・・」
「・・・僕、話に全然ついていけません」
「ボクもー」
「アタシも無理-」
早くもリタイアしているクロエonしっこく、レヴィ、ヴィータは早々にマリアンの仲間入り。はやても何か方法はないか頭を捻っているが、そもそも魔法知識が不足しているのでどうにもならなかった。
「お兄ちゃんか、お母さんなら―――」
ふと、フェイトがそう漏らした。
フェイトにとって義理の兄であるシャインはプレシアの難しい話にも平然とついていける天才なのだ。実際には結構張りぼてだが、それでも自分よりも遙かに頼りになるであろう事は間違いない。そして人造魔導師の研究をしていたプレシアならばそちら方面のプロである。
どちらかが来てくれれば・・・
「―――呼んだかフェイトー?」
突如上から掛けられた声にフェイトは弾かれるように上を見た。そこには何と!
「でかっ・・・!?」
「何だありゃ!?総エネルギー量が戦艦並みだぞアレ・・・!」
「こ、これは・・・魔法生物なのか?」
上にいたのは「龍鱗機」。応龍皇の主にしか従えることの出来ない存在。ナハトヴァールよりは小さいが、それでも70メートルの巨体を誇るそれは、世界でたった一人しか扱えない代物だった。
「お兄ちゃん!?戻ってきたんだ!!」
「おう!憑代の子も何とかなったよー!」
龍鱗機が大きすぎて姿は見えないが、符術で声を拡大しているのか確り返事は返って来た。
周囲はそれが敵ではない事をしっかり認識したのち、龍鱗機をまざまざと眺め、異口同音にこう言った。
「「「「「あのデカい(大きい)のがフェイトのお兄ちゃんか・・・」」」」」
「ちっがぁぁーーーーーーーーーう!!!」
何故真面目な奴も交じっている中でこのような集団勘違いが飛び出したのかは未だ以てまったく謎である。なお、アルフは横で腹を抱えて大爆笑していたとか。
―――さて、ここでそろそろ説明していなかった件について少しネタばらしをしよう。
今回触れておくのは、ぽんずの復活に纏わる事実の一端である。
天へと上ったぽんずの魂。―――そこに実はぽんず復活のヒントがあった。
正確には、天へと上るというのは実は物理的な意味であったこと・・・それこそがキモだったのだ。
この瞬間苗は気絶、闇の書はナハトヴァールの浸食でそれどころではなかったため、2人とも決定的な瞬間を見逃していた。
ぽんすの魂が、流れ星のように尾を引いて勢いよく空へ舞い上がっていく瞬間を。
?:?? 海鳴市上空
「ふぅーむ・・・まさか念のため張っておいた封神フィールドに”山猫”が引っかかるとは・・・しかし封神フィールドにひっかかるほどの魂魄か。なるほど、”太極”に触れた影響だの」
虚空にぽっかりと空いた異次元の窓越しにその魂魄を眺める青年はしばし思考を巡らせ、ふとあることに気付く。
「ほう、”使い魔技術”か・・・余所の星の子は面白い事を考える。どれ、あれならば”宝貝人間”の技術を応用してこやつを再び現世へ押し止められそうじゃの」
本当は余り地上に過干渉するわけにはいかないのだが、この猫は少々特殊すぎる。スターシップ蓬莱島に連れて行くにもしても順序を踏む必要があるだろうと考えた彼は、その魂魄と残された”彼女”の肉体を使い魔法、仙術、ナマモノを足して3で割った超存在を作り上げることにした。
普通の人間ならばそんなことは例えどこぞのスカえもんでも不可能だろうが・・・この男、”そもそも人間ではない”。
「あの娘の事もちと気になるし・・・媚を売るようではあるが、まぁ悪くはなるまい。なぁ?」
『・・・・・・なーお?』
「ふっ・・・心配するな!主人を護れるよう色々と組み込んでやろう!」
『・・・まーう』
そいつはあろうことか、中国神話の”カミサマ”に当る存在だったのだ。
これがこの世界に唯一の・・・正しい意味での”神様転生”の瞬間になるなどと、誰が想像できたであろうか。
= = =
これはきっと夢で、私は既に死んでるんでしょ?
本当はもうあの怪物に食べられて、今は死後の世界のどこかで見たかった夢を見ているんだ。
だからこれは夢であって―――と必死で自分に言い聞かせていながらも、体と言うのは正直なものである。気が付けば求めていたのだ。いつもそばにあった、あれを。
この指が彼女に触れた瞬間、希望は失望に変わるかもしれない。やはり失ったものは還って来ないのだと再び打ちひしがれ、情けなく涙を流すかもしれない。それでも人の心と言うのはどうしようもなく求めてしまうのだろう。触らなければ確認は出来ない。確認できなければ「ひょっとして」という感情を持ち続けられるかもしれない。
それを確認するのが怖くて、でもやっぱり気になる思いは止められず、指は目の前の女性の頭に触れた。
もふっ
間違いなく、7年間触り続けたそれだった。世界に二匹といない奇跡の触り心地。飼主であった自分が間違えるはずなど万に一つも無量大数に一つもありえない。でも、まさか?そうなの?理屈も何も分からないけど、だって彼女は猫だったもん。確信が持てなかった。だから、彼女に問うた。
「ぽんず、なの?」
「なーお」
「・・・・・・」
しまった。私、猫の言葉分かんない。
その沈黙の意味を速攻で悟ったのか、彼女の耳がピクンと動く。
「・・・私は猫であるが故、人の姿を取り人の言葉を使うのは甚だ不本意なのですが・・・主を護るためにはこの姿の方が都合がよいのです。後でまた猫の姿に戻りますが故、ご容赦を」
「なんかすっごい流暢に日本語喋った!?」
喋れるんなら何で一回猫の鳴き方したの!?しかもなんか喋り方が丁寧っつーか時代掛かってるっつーか!?
戸惑いレベルを10でMAXとするならば9、5に届いているであろう戸惑いと僅かに残ったツッコミスキルが炸裂してしまった。しかしそんな私の事情はどうやら彼女(・・・ぽんずって呼んでいいの?)には関係ないらしく、私の両足を抱える手にやさしく力が籠る。
「とにかく、しっかり捕まっていてください。一度は守り損ね、そのお美しいお顔を地に汚させる不覚を取りましたが今度こそは必ずや・・・」
「っていうかぽんずそんなキャラだっけ!?いや猫にキャラってあるのか知らないけど!!」
何あんたそんな忠義に生きるような猫だったの!?生前はノリのいい猫だと思ってたのに、死んだら性格変わるんだろうか?後で猫と喋れそうなクロエ君に聞いてみよう。
あとその歯が浮くようなセリフを淡々と言うのやめようか。すっげー恥ずかしいんだけど。
・・・誰も聞いてないよね、この会話?・・・よかった。みんなあっちの化け物に夢中みたいだ。
「あーうーあーうー・・・なんかもう色々台無しっていうか・・・取り敢えずぽんず、面を見せい」
「・・・見せなければ駄目ですか?」
「見せたくないの?」
「先も申した通り私は元来猫であるが故、人の形を主に見せるのは恥ずかしゅうございます・・・」
「そ、そう・・・なんか調子狂っちゃうなー・・・」
猫には猫にしか解んない恥じらいがあるようだ。いつも素っ裸で歩き回ってるくせに人型では顔を見せるのも恥ずかしいのかと思うと覗きたい気持ちもあるのだが・・・ペットが嫌がることは強要しない。飼主の鉄則である。
「ま、いいや。そのまま聞いて」
「・・・はい」
すー、はー、と灰の中の空気を入れ替える。海の匂いが鼻腔を満たすが、それよりなにより伝えたいことが多かったので言いたいことを整理した。ぽんずは相変わらず前を向いたままなので、その表情はおぶわれている私には窺い知れない。
「私、もう隠し事しない。自分にも嘘はつかないしもう逃げない。自分の命も大切にするから」
「・・・はい」
「うん。だから―――
―――もう居なくならないで。これから私が死ぬまで絶対死なないで。もう・・・独りにしないで」
「―――私はいつまでも貴方の飼い猫です。どの時代の、どの世界でも・・・ずっと一緒です」
「・・・うん」
それ以上言葉は続かなかった。瞳から溢れ出る滴とこみ上げた嗚咽を抑えるだけで精いっぱいになったから。流れ落ちる滴は海へと落ちてゆき、海水に混ざって消えていった。泣きたいほどうれしいのか、それとも安堵で内なる感情を抑えきれなくなったのか、私自身にも分からなかった。
おかしいなぁ。私ってこんなに泣き虫だったっけ?
でもまぁ・・・ぽんずと顔を合わせていなくてよかった。
この情けないであろう顔をぽんずに見せるのは、飼い主として恥ずかしいもん。
後書き
別にオリ神に頼まなくったってチートは出来る。
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