魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~
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A's編 その想いを力に変えて
A's~オリジナル 日常編
50話:駆紋龍也はほっとけない
前書き
オリジナルに入ると、はやり時間かかってしまいますね。
…はい、すいません。言い訳です。
私立聖祥大付属小学校。
入れば余程の事がない限り、小学校から大学までエスカレーター式で上がれる私立学校だ。
ここに入学する面々はいわゆるお嬢様やお金持ちなどが多い。
まぁ本人の学力がそこそこ高くないといけないのは言わずもがなだが、それと同様にそれなりの学費を要求されるのだから、そんな子供達が多く入学するのも仕方のないことだ。
そしてその中でも、時折だが親の持つ『権威』というものを自ら振るう奴もいる。
例えば警察のお偉いさんの子だったり、政治家の子供だったり、その他諸々色々な子供も入学してくる。
そんな偉い人の『権威』を自分の物のように扱う連中がいるという事だ。
「………はぁ…」
そう考えていると、思わずため息をしてしまった。
何故いきなりこんな話が出てきたのか。
「あぁ?なんだてめぇ」
「なんだじゃないわよ!年下の子を囲って何してるのよ!」
その訳は目の前の光景にある。
登場人物A、同級生らしい少女。
登場人物B~D、見た目からしてお金持ちのような人物が三人。
登場人物E、我が友人アリサ・バニングス。
状況A、五人がAとE、B~Dの二組に分かれている。
状況B、EはAを庇うようにB~Dの前に立っている。
状況C、B~Dの三人はどうにも不機嫌な様子。
皆さんはお分かりになられるだろうか?
この状況……どう考えても、アリサが少女Aを男三人から庇っているようにしか見えない。
春も過ぎ、時期はジメジメしてきた六月中旬。
もうすぐ夏休みだな~、という話をしながらなのは達+カオルの六人で下校していた時だった。
因みに駆紋の奴は教室を出る時には既にいなかった。
その下校途中で見たのは、同級生らしい少女Aに絡むモブキャラB~D。
どういう経緯でこうなり、何がどうなっているのかなどは知りもしないが、その光景にはため息しか出ない。
だが、そんな光景に変化を起こした人物が出てきた。
それは勿論、アリサだ。
四人の間に割って入ったのだ。怯えた様子だった少女Aはあ、と小さく声を漏らし、モブ男達はあぁ?といきなりの事に声を上げた。
少しの睨み合いを経て、先の状況に戻る。
最初の説明も、この聖祥小学校で時折出てくる問題の原因の一つだからだ。おそらく今回もそれが原因だろう。
「……はぁ、何やらかしてんだか」
「正義感強いよね~、彼女」
あはは、といつものヘラヘラした笑顔を見せてくるカオル。お前も相変わらずだな。
「あんたには関係ない筈だ。どいてくれないか?」
「だったらこの子に手を出さないって約束するわよね?」
あ~ぁ、強気に出ちゃって。
それを見ていたなのはやフェイト達は、面白い感じでオロオロしていた。
「…はぁ、まったくよ~」
再三溜息を吐き、頭を掻きながら歩き出した。
「あ~、もう!お前邪魔だ!」
そう言ってリーダー格らしいモブ男Bが、拳を振り上げ……前にいるアリサに向けて突き出した。
パァンッ!という音が響き渡る。
「…おいおい、女の子に手を出すなんざ、いい男がするような事じゃないぜ?」
その拳がアリサに到達する直前に、俺はアリサの前に入り込み、拳を受け止めた。
「な、なんだてめぇ!?」
「はい、それ三流悪役のよく言うセリフ」
「何ぃ!!」
モブ男Bは拳を戻し、今度は標的を俺に変え拳を突き出してきた。
「まぁこれで…正当防衛になるか?」
俺はそう呟きながら、突き出された拳を右手で右に受け流しながら、モブ男Bの体をアリサ達から変える。
そして受け流した右手でモブ男Bの手首を掴み、下にぐっと引っ張る。
「うぉっ!?」
少なくとも俺の背丈より高いモブ男Bは、体勢が前のめりになる。
そこへ右足でモブBの足をすくいあげる。
「おぅわっ!?」
すくい上げると同時に、掴んでいた手首を今度は倒れていく体に合わせて引き上げ、モブBを空中で前転させる。
丁度背中が下に来たところでモブBは地面に落ち、背中を打ち付けた。
その痛みが相当なものだったらしく、モブBは背中を抑え悶絶しながら転げまわっていた。
「あ~あ、意外と痛かった?」
「こ、この野郎…!」
モブBは俺を睨んでくるが、地面に寝っ転がっている状態では見っともないだけだ。
「よくもぉ!」
「このぉ!」
背中を向けていたモブCとDが、俺がモブBを見下ろしている隙に拳をこちらに向けて振り上げてきた。
それに対し俺は慌てず騒がず、振り返ってモブC・Dの拳を片手ずつで受け止めた。
「おいおい、これでも俺は小四だぞ?いいのか?男子が年下相手に力負けするなんて」
それなりに力を込めて押してきてるが、俺の体は微動だにしない。モブC・Dの顔が歪んでいるのが、見ていて面白い。
「こ、この…!」
「う、動かない…!」
「お前ら、何してんだ!そんな奴…」
お、モブBも立ち上がってきたようだな。
「一発投げればいいんだよ!」
そう言って拳を再び振り上げてきた。
だが、その拳が完全に振り下ろされる前に、誰かがモブBの手首を掴んでそれを阻止した。
手首を掴んだ人物は、
「うるさいぞハエ共。ブンブン騒がしいし、視界で動かれると邪魔で仕方ない」
駆紋だった。
「な、誰だおま―――」
「なんだ駆紋、先帰ってたんじゃねぇのか?」
「勘違いするな。俺はただ借りていた本を図書室に返しに行っていただけだ」
「あら意外、お前図書室の常連だったのか?」
「人並み程度には読む」
「って、てめぇら無視してんじゃイデデデデデ!!」
「うるさいと言っているだろ」
騒がしいモブBに対し駆紋はモブBの手首をひねり、人間の構造上曲がったり動いたりしない、あらぬ方向へ動かそうとしていた。
「おぉ、人間死ぬ気になれば腕をそこまで動かせるんだな」
「見たいならもう少し動かしてみようか」
「いいぞいいぞ、もっとやれ~」
「ふ、ふざけんな!これ以上曲げたら腕がぁぁああああああ!!?」
おぉ、予想以上に曲がる曲がる。
だがさすがに我慢の限界だったのか、モブBは無理やり振りほどいた。力ではやはり差が出ちゃうか。
「て、てめぇ…!」
「どうした先輩?まさか年下相手に怖気づいてしまったか?」
「んだとぉ!?」
ここで駆紋の口が悪いところが全面に出てしまい、本人がどう思っているか知らないが、モブBを挑発した。
小さな青筋をいくつも浮かび上がらせ、駆紋を睨んでいた。
「てめぇも俺の邪魔をするってのか!?」
「邪魔?それはおかしいな。最初に言っただろう。邪魔なのは貴様だ。視界に入っていて鬱陶しい」
その瞬間、ブチッという音が聞こえてきた。
明らかにモブBの血管が切れた音だ。実際初めて聞いたな~、血管が切れる音って。漫画の中だけの話かと思ってた~。
「……んのぉぉ!!」
そして遂にモブBが駆紋に向けて拳を振り下ろした。
それを見たなのは達や、より近くにいたアリサと少女Aは、あっと声を漏らす。
「―――っ!」
だが一瞬の内に、駆紋の目が鋭くなる。
「っうおぉおっ!?」
駆紋は迫りくる拳を右に避け、さらにその手首を左手で掴む。
そして一瞬で背中を向けた状態で懐に入り込み、右ひじをモブBの右脇に入れ、肩ごしに投げたのだ。
見ている側からしてもらえば、見事なまでの背負い投げだ。
しかも相手のパンチの勢いを利用したことでさらに威力が高くなり、モブBは勢いよく背中を打ち伸びきってしまった。
「ヒュ~、やるぅ」
「これぐらい当然だ」
あらあら、これまた強気発言。
「くっ、離せ!」
「おっと」
今の今まで忘れていたが、俺に手を掴まれていたモブC・DがモブBが倒れたで、焦りながら無理やり俺の手を引き離した。
そしてモブBの側まで行き、モブBの肩を支えて立ち上がらせる。
「お、覚えていろよ!」
モブ集団はそう言い残し、その場から離れていく。
「…見事なまでの三流…いや、それ以下の捨て台詞だな、ありゃぁ」
「士君、そんな発言は止めた方がいいよ」
「だが実際、あれはないな。あれで本当に俺より年上か?」
「まぁそうだけどね」
俺と駆紋、そして奴らが去ってからすぐにやってきたカオルがそれぞれ口々に言う。
なのは達もアリサの元へ行き、色々話をしている。まぁ、こっちまでは聞こえないが。
「あ、あの…!」
「ん…?」
そこに声をかけてきたのは、最初の事件の発端であろう少女Aだった。
「あ、ありがとうございました」
「…お礼なら彼にね。実質追い払ったの彼だから」
「なっ!」
そう言って親指で後ろにいる駆紋を指差す。駆紋はそれにものすごく驚いたように顔を歪めた。
「えっと…ありがとうございます」
「れ、礼などいらん。俺はただ視界に入るハエを追っ払っただけだ」
そういう駆紋の頬が、ほんのり赤くなっていたのは、多分気のせいじゃないと思う。
それから何度も頭を下げてから、少女Aは去って行った。
「……駆紋。お前って意外と人に礼を言われるの苦手だろ?」
「な、何を言う!俺は別にそんなんじゃない!」
「なんかちょっとツンデレ成分があるんだよね~」
「カオル、貴様!」
「あはは、いいじゃん別に。友達なんだしさ」
カオルが『友達』と言った瞬間、駆紋はぐっ、と言葉を詰まらせて、あからさまに嫌な表情をした。
「…俺にはそんなもの必要ない」
「あ~あ、またそんなこと言っちゃって。素直じゃないんだから」
「だ、誰が素直じゃないだ!」
こういうやり取りを見ていると、なんだか心が安らぐね~。
「……嫌な奴程、意外な面が目立つのよね」
「お、アリサ」
「う、うるさい。お前には関係ないことだ」
アリサのごもっともな言葉に、駆紋はそっぽを向いて答えた。
「俺はこれから用事があるんだ。先に帰らせてもらうぞ」
「え~、いいじゃん少しぐらいっ」
「な、離せ!」
踵を返して下校しようとした駆紋に、カオルがジャンプして跳びかかった。
「ま、恥ずかしいのはわかるけどよ」
「恥ずかしがってなんかないと言ってるだろう!」
「偶には友人と遊びに行くのもありだろうよ」
「だから友人など…!」
「そんじゃ、レッツゴ~!」
「だから人の話を聞け!」
嫌がる駆紋を無視して、俺とカオルは無理やり連れて行こうとする。
「今日どうする?」
「はぁ…取りあえず翠屋行って、それから決めよ」
「それ賛成。てな訳でいくか、駆紋」
「だから話を聞けと…!」
こうして、俺達は放課後の時間が始まっていった。
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