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久遠の神話

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第七十二話 愛の女神の帯その八

「じゃあご両親ともね」
「お会いして頂いて」
「正式に決めよう、あとね」
「あとはとは」
「他人行儀はいいよ」
 それはだというのだ。
「もうね、家族になるんだしね」
「だからですか」
「そうそう、呼び名は結婚してから変えていいから」
 ここで言う呼び名とは一つしかなかった。
「とりあえずは社長でね」
「そう呼ばせてもらって」
「今まで通りね、それで正式に決まったら」
 その時にだというのだ。
「それでいこう、いいね」
「わかりました」
「さて、じゃあこれからも宜しく頼むよ」
 最早雇い主とアルバイトのやり取りではなかった、義理にしても父と子のそうしたものになって話す彼だった。
 そして広瀬もその言葉を確かに受けた、彼にとっては最高の話になった。その最高の話の後でだ、彼は牧場を出る時に見送りに来てくれた由乃に言った。
「夢みたいだな」
「えっ、けれど」
 もうだ、その流れになっていたと返す由乃だった。
「もうね」
「そうかも知れない。だがだ」
「それでもなの」
「実際にそうした話になるとな」
「あらためてなのね」
「夢の様だ」
 こう言ったのだった。
「本当にな」
「そうなのね」
「そちらは夢とは思わないのか」
「いや、そこまではね」
 思わないとだ、由乃は広瀬の問いに笑顔で答えた。
「確かに嬉しいけれど。わかっていたから」
「だからか」
「ええ、そうなの」
 由乃の場合はそうだというのだ、嬉しいが広瀬の様に夢の様までとは思っていないというのだ。
「前からお父さんとお母さんから直接言われてたし」
「だからか」
「そう、何度も広瀬君と一緒になってくれればってね」
「言われていたか」
「こう言ったら生臭い話になるけれど」
 この前置きから話すことはというと。
「牧場もね、結構大変なのよ」
「跡継ぎか」
「そう、中小企業でもお寺でもね」
 もっと言えば店も神社もだ、今では何処もなのだ。
「少子化もあってね」
「本当に切実だな」
「広瀬君のところは妹さんと弟さんがいるでしょ」
「ああ」
 下に二人いる、だから彼も親から直接他の家に入っていいというのだ。
「一応な」
「私は一人っ娘だから」
 だからだというのだ。
「それでなのよ」
「跡継ぎの問題は切実だな」
「そう、牧場って言っても結局は誰か跡継ぎがいるかどうかだから」
「大変だな」
「うちも例外じゃないから、宜しくね」
「わかった、こちらもな」
「朝早くて肉体労働で休みもないけれど」
 これは農業もだ、酪農も農業もこれが問題点だと言われている。 
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