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久遠の神話

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第七十二話 愛の女神の帯その七

「必ずな」
「その意気ならです」
「戦えるな」
「期待していますので」
 だからだと話してだ、聡美はこの場でも広瀬の前を後にした。広瀬は聡美と別れて部室に行った、そこでだった。
 由乃と会った、由乃はすぐに彼にこう言って来た。
「それじゃあね」
「約束通りだな」
「ええ、一緒にね」
 広瀬に微笑んで言う。
「行こうね」
「そっちの家にか」
「お父さんとお母さんが来て欲しいっていうのよ」
 広瀬にだというのだ。
「だから来てね」
「俺にか」
「そう、これまで何度かお話したけれど」
 広瀬は由乃の両親とも面識がある、しかもわりかし親密な関係にもある。
「今度はね」
「これまで以上にか」
「広瀬君を見たいっていうから」
「わかった、ではな」
「あと、いえ」
 ここから先は言おうと思ったが言わなかった。
「とにかく行こう」
「わかった、そちらの家にな」
「牧場にね」 
 こう話してそしてだった。
 広瀬は由乃に案内されて彼女の家の牧場、これまで何度も言っているそこに入った、そしてそこでだった。
 由乃の両親に会った、場所は家のリビングだった。
 ゆのの父、娘とは違い大柄な彼が笑顔でこう彼に言って来た。
「今日はよく来てくれたね」
「はい」
「それでだけれど」
 大柄なだけでなく顔は髭だらけだ、だがその外見に似合わず気さくな感じで広瀬に対して言ってきた。
「今日の話はね」
「何でしょうか」
「よかったら、大学を卒業したら」
 その時にだというのだ。
「就職はここにしてくれるかい?」
「牧場にですか」
「肉体労働で朝も早いけれどね」
「いえ、それは」
 いいとだ、広瀬は由乃の父にすぐに返した。
「わかっていますし慣れています」
「だからだというんだね」
「はい」
 だからだというのだ。
「特に」
「ではいいんだね」
「御願いします」
 広瀬の方からの言葉だった。
「この牧場に」
「じゃあね、この牧場に入ってね」
 由乃の父はさらに言う。
「それからね」
「この家をですか」
「頼めるかな、由乃もね」
 ここで彼は由乃を見た、広瀬と同じソファーに座って隣にいる彼女を。
「大学を卒業したらね、君のご両親次第だけれど」
「そのことでしたら」
 広瀬はすぐに返した。
「うちはもう」
「いいんだね」
「はい」
 そうだというのだ。
「ご安心ください」
「そう、じゃあね」
 由乃の父は広瀬の言葉を聞き笑顔で頷いた、そのうえで彼にこうも言った。 
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