PWS TALES OF THE WORLD 3
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五章
光槍
前書き
聖天の魔、空に放たれる矢と槍。
戦いが一人の時より果てし無く楽だ。
今までの私じゃないみたいに。
それはきっとディオンのお陰だ。アシスト、魔術の使うタイミングが私の剣術を支援してくれるから。
彼の呪文は特殊だった。
その詠唱は聞いたことが無い。短かったり長かったり、けど、見たことのある術ばかりで、でも威力が圧倒的に高くて。
簡単な魔法ばかりだけど、威力は中級の特に強いもの並みだ。
すごいなぁ、って呟くと笑ってありがとう、と言ってくれる。
いい人だな…、わたしの印象はそれだった。
「ディオン。あなたの呪文は我流なの?」
『あぁ』
「魔法が強いのはそれが原因?」
『いや、関係ないさ。言いやすくしてるだけ』
へぇ…。なんか小難しい気がしてたのはわたしの勉強不足かな…?
まぁ、気にしてもしょうがない。
でも今度試してみよう…。
できればいろいろ教えて欲しいなー。
そういえばディオンはなんでこんなところに?
この辺りは人の住めるような環境じゃない。
当然上に行けば行くほどその環境は魔物ですら住むにはそれなりの強さが要求されるわけで、自然と強い魔物が増えていく。
ディオンの実力なら、もしかしたら結構深くまでいけるかも知れないけど、どんな用事?
ギルドの人かな?
もしかしたらフリーの人、であって欲しいな…。
だったらウチのギルドに勧誘するのに。
「カノンノ」
そんなことを考えているとイーリスが声を掛けてきた。
どうしたの?と振り返ると、どこかふくれっ面だ。
何か怒ってるの?
「私も戦いたい」
「えっ…。でも武器がなぁ…」
「魔法ばかりじゃ飽きるよ」
『ははっ…。困ったお嬢だな』
「うぅーん…。でも、武器を買っても使いこなすのは難しいよ?」
『だったら、これをやるよ』
ディオンが首に掛けたネックレスをイーリスに放る。
慌ててそれを受け取ると、彼女は首を捻る。
「これ、武器?」
『正確に言うとその状態で使うのは非常に難しい。ただのネックレスだし。けど、お前が考えて思い描く形に変異する、魔法も杖という媒介があると威力が上がる。ためしてみろ』
「そうなんだ…」
「すごいね!そんな武器があるんだ!」
『どこにも売ってないけどな』
快活に笑ってディオンが言う。
そんなすごいもの、簡単に上げちゃうなんて。
いや、持っていること自体すごい。トレジャーハンターの人なのかな?宝物の一品だったり?
それを簡単にあげる、なんてすごい太っ腹。
あっ、トレジャーギルドの人ってこと?じゃあ、ギルドの人かぁ…。でも麓に送ったら確かめてみよう。
「いいの?」
『あぁ。使え』
「ありがと」
『ただし強くなれよ?』
「大丈夫。カノンノ先生がいる」
『そうかい』
あれ、まてよ。
なんでだろう。
そんな武器があったのにディオンは一度も使ってなかったような…?
媒介があったらもしかしてあの魔法の威力はさらに上がるのかな?
すごいなぁ…。
見習わなきゃ!
「あっ!魔物!」
イーリスが嬉々として指差したのはゲコゲコという青いカエルの魔物。それも、ゲコゲコ二匹とオタオタ二匹、合わせて四匹だ。
少し分が悪い。
相手は弱いからいいけれど。
「やろうよ!」
「うん。私が右のゲコゲコを倒すね?イーリスは左を。ディオンは魔法でオタオタを!」
『了解』
「わかった!」
言うが早いか、イーリスは駆ける、早くはない。そしておぼつかない。けど初めての魔物討伐にしては非常に迷いが無い。
ディオンもすぐに魔法を詠唱し始める。
同時に身体にマナを寄せて、その身体に光を迸らせて。
わたしも負けられない。
キュッと柄を握り、走り出す。
走りながら確認したのはイーリスの動向。
「あっ…!」
わたしと同じ剣だ!
なんだか、少し嬉しい。
イーリスがコレを思い描いてくれたんだと思うと少し、頬が緩んでしまう。
が、
「虎牙破斬!」
えっ、と声を漏らす。
あの子、今?
技を使った?しかも、わたしと同じ技を?
たった一度しか見ていない筈の?
驚いてわたしは目を彼女に向けた。
その視界の端でゲコゲコの腕が伸びるのを見逃して。
「きゃっ!」
寸手で躱すが尻餅をついてしまった。
あっ、と声を出す頃にはゲコゲコの腕が再び伸び始めていた。
『光明の矢、天使の切っ先、しなる弓より放たれし清廉の槍』
聞いたことも無い筈の呟きめいた小さな詠唱。
『ホーリーランス』
何故か酷く懐かしい気がした。
後書き
お久しぶりです。抹茶パフェです。
実はまだ明かしていない設定があります。
流石にオールキャラゲームのTOW3のキャラを全て目立たせると果てし無く遠い道のりになりそうなので、
この小説ではTOA、TOVのキャラに焦点を当てたいと思います。
理由としては、国を絡ませたい。個人的にこの二つの敵キャラが好き、故に出したい、というのがあります。
なのでオリジナル方面に進んで行く可能性、というかほぼ確定的ですが、そういうのが多くなると思います。
なのでそれは読んでいただく皆様にどうか御判断していただきたいと思います。
願わくばこれからも読んでいただきたいです。
ではまた次回。
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