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PWS TALES OF THE WORLD 3

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1
四章
  戦闘

 
前書き
跛行する少女、迷い無き剣閃。 

 

「カノンノ。アレ、なに?」
「えっ?」

青いボールみたいなのがぽんぽん跳ねてる。
可愛い。
けど、カノンノはそれ見ると大きな剣を構えた。

「あれはね、オタオタっていう魔物。敵なんだよ。わたしたち人間を襲うの」
「そうなの?」
「うん。イーリスは後ろにいて。わたしが倒すから」

照りつける光がカノンノの構える剣の刃をぎらりと輝かせる。
微かに閃いた彼女の瞳がオタオタという動物を見据えると、走り出す。
桃色の風が駆ける。
迸る剣閃が空気を刻むと同時に、青い球体を肉薄する。
小さな青が跳ねて寸手を躱し、体当たりする。

「虎牙破斬!」

振り上げた剣を追うように、跳ねて追撃する。
叩き落とすように振り下ろし、寸断する。
スタンッ、と降り立つと、球体の影も打ち上げられた場からゆっくり落ちてくる。
刻まれた青がスライスされて、塵になって消える。

「…きれい」

ポツリと呟くと、カノンノが頬を赤くして、ぽりぽりと人差し指で掻いた。
あんな剣術は見た事が無い。
いや、剣術そのものを見た事が無いのかも。
なんにせよ、すごい。
他の『人』も、あんなに凄いんだろうか。
けど、あの剣は重そう。なんであんなに軽々操れるんだろう。

「すごいね」
「そうかな?ありがとう」
「私、武器ないんだね」
「そうみたいだね。どこにも無そうだし」
「私も戦いたい」
「えっ⁉︎」
「武器は無いけど、武器欲しいな。カノンノみたいにカッコ良く」
「うーん、でもなぁ…」

そんな簡単じゃない?
そうだよね。
でも、戦いたいよ。
だって、

かっこいいから。

「あっ、魔物!」
「うぇっ!挟まれてる!」
「私も戦える!」
「ダメだよ!武器もないのに!」
「魔法の使い方教えて!」
「えぇっと!呪文を唱えて…えっとぉ!」

きた!
えっと、じゅもん?
うた?
違うよね、じゃあ、
言葉?

『爆ぜし焔』

えっ、カノンノが頓狂な声を上げた。
長く細かな髪。端で束ねられた綺麗なプラチナ色がはためく。
そこに純白に等しい肌の色。
瞳の放つ色は紅蓮。いや、緋色。血の如く。
口元は涼やかで曲がりを知らない。
そんな少年が立っていた。

『続けろ、緑』
「みどり?私?」
『そう、お前だ』
「はぜしほむら?」
『さっさと詠め』
「えっと、『爆ぜし焔』」
『ファイアーボール』
「『ファイアーボール』!」

現れた少年に習って、右手を翳しながら言葉を紡ぐと、掌から熱いものが吹き上がる。
うわっ、と私は頓狂に声を上げた。
そしたら目の前の青いのが爆発して吹っ飛ぶ。
なにこれ!すごい!
カノンノも少しビックリしてる。
私を見てパチクリ目をしばたいてる。
前から来てるのに。

『ピンク!前だ!』
「へっ?」
「爆ぜし焔!ファイアーボール!」

ドッ!
掌で何かが閃いた。
赤い光が直進して青い奴に直撃すると、綺麗に吹き飛んで崖に落ちて行った。

『中々出来るな、緑』
「ほんと?」
『嘘を言う理由ねぇだろ』
「そっか」
「あ、あのっ!」
『ん?なんだ』

テンパってカノンノが声を張る。
言われた側の少年は自然に、特に何か驚くこともなく答える。何処と無く言葉も私に対してより柔らかい。
みたところ彼も武器は特に持っていないようだ。
やっぱり、魔法だけでここまで来たのかな?
向こう側って上だよね?
すごいなー。私よりもずっと上に行ってたってことだよね?
魔法だけで。

かっこいい。

「あなたは、その…」
『何者かって?』
「えっ、あの…。武器、持ってないみたいだし」
『魔法があればどうとでもなるさ』
「すごい…!ここから上に行ったら魔物も強くなるのに!霧も濃くなって危ないのに」
『まぁ確かに霧も濃かったな…。あぁところで、下山したいんだが道案内を頼めるか?』
「はいっ!」
『…なんで敬語なんだ?』

苦笑して彼が言うと、カノンノは少し頬を染めた。
普通でいいよ、と彼が言うとカノンノも笑ってうんと答えた。
この二人はなんだか、初めてじゃないみたいだな。会話は初めましてみたいなのに。
私は蚊帳の外に行っちゃったみたい。

「二人は初めましてなの?」
『あぁ。間違いなくな』
「あっ、名前…」
『良かったら聞かせてくれ』
「わたしはカノンノ•グラスバレー。この子は…」
「イーリス」
『グラスバレーにイーリスか…。覚えた。俺はディオン•グラドラム』
「ディオン」
「よろしく!えっとところでなんで私のことはファミリーネームで呼ぶの?」
『何と無く、だよ』
「そう、なんだ…。えっとぉ、こっちだよ、麓への道は」
『おぉ、助かる』

カノンノの案内で、私達は麓を目指した。 
 

 
後書き
はい、二日連続の投稿です。
そう言えばマイソロは3で完結って言ってたのを思い出して先ほどめっちゃブルーになりました。
でもできれば4の冬カノンノも見てみたい。
あ、作ればいいんじゃね?短いのをたくさん出して行く長編ですので何卒今後もよろしくお願いします。 
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