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DOGSvsCATS

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第二章


第二章

「俺がかけるよ」
「そうか」
「ああ。じゃあ今度こそ本当にな」
「勝って来いよ」
 イタチは完全に背を向けた俺にまた声をかけてきた。
「絶対にな」
「俺が負けたことがあったか?」
 俺はいつもの不敵な笑みで問い返した。
「そういうことさ」
「ああ。じゃあ待ってるぜ」
「勝手にしな」
 こうやり取りをして店の黒い扉に手をかけて後にした。店を出るとまずは自分のバイクの前に来た。とりあえずそこからジャックナイフを取り出してブーツに押し込む。最後の備えってやつだ。
「まあここまではしなくていいかな」
 そうは思ったが念の為だった。キャッツの奴等はとにかく汚い。鉄パイプ位は持っていて不思議じゃない。こっちも鉄パイプは持って行くがそれでもだった。あくまで用心だ。
 ニコチン臭くなったガムを溝に吐き捨てて携帯を取り出す。それから電話をかけた。
「おお、御前か」
「ああ」
 早速電話をかけた仲間の一人が出て来た。長い付き合いの気心の知れた奴だ。
「今夜の一時な」
「どうしたんだ?」
「キャッツのヘッドとタイマンすることになった」
「おいおい、マジかよ」
 そいつは俺の言葉を聞いてまずはいきなり笑った。
「あいつがか!?有り得ないだろ」
「御前もそう思うか」
「それで場所は何処なんだよ」
「例の倉庫の所さ」
 イタチの情報をそのまま伝えた。
「港のな」
「あそこか」
「どう思う?」
 真剣な言葉で尋ねた。
「これは。御前はどう思う?」
「罠だな」
 警戒する声ですぐに返って来た。
「場所があの倉庫でしかも相手がキャッツだな」
「ああ」
「罠だ」
 また言ってきた。
「確実にな。奴等潜んでるぜ」
「やっぱりそう思うか」
「それ以外考えられないな」
 またはっきりと答えてきた。
「連中だからな。一人で行くなよ」
「じゃあどうしろっていうんだ?」
「俺も行く」
 ここでも真剣な言葉だった。
「他の奴等にも声をかける。それでいいか」
「全員か」
「ああ、七人全員だ」
 俺達ドッグスは七人のメンバーだ。数こそ少ないがその七人が全員核弾頭ってわけだ。だから街でも数だけは多いキャッツの奴等と今までタメ張って来れた。
「それでいいな」
「そうだな。じゃあそれで頼む」
「そうしろ」
 言葉がきつくなっていた。
「もう聞いたから止めてでも来るからな」
「全員か?」
「ああ、他の奴等もこう答えるに決まってるだろ」
 言葉はさらに真剣なものになっていた。
「俺と同じでな」
「そうだな。じゃあそういうことでな」
「ああ、一時だな」
「そうだ」
 時間が確認された。
「一時だ。それで場所はだ」
「あの倉庫だな」
「そうだ、港のな」
「他の奴には俺がかけておく」
「頼めるか?」
「おいおい、水臭いこと言うなよ」
 今の言葉は笑いが入っていた。
「何年の付き合いなんだ?」
「そんな昔のことは忘れたな」
 俺も言葉に笑いを入れてみせた。
「あんまりにも昔なんでな」
「そういうことさ。じゃあな」
「ああ、一時にまたな」
「かなり楽しみだぜ」
 お互いに声が緊張を含んだ笑いになっているのがわかった。
「真夜中のパーティーなんて久し振りだからな」
「そうだよな。キャッツの奴等は多分全員だね」
「面白いじゃないか」
 電話の向こうからまた言ってきた。
「そういうのがな」
「そうか。じゃあ派手になると思うぜ」
「ああ、じゃあな」
 ここで電話を切ってバイクに乗った。アクセルを一気に踏もうとする。そして駅前まで行くとそこの普段はもう誰も使っていない掲示板に書いてあった。汚ねえ字で。
『一時にあの場所だ  キャッツ』
 宣戦布告って奴だ。ついでにこうも書いてあった。
『一人で来い。タイマンで決着だ』
「へっ」
 今の書き込みには口の端を歪めて笑ってやった。
「大嘘つきが。いい加減それには乗らないぜ」
 こう言ってからまたバイクを進ませた。そうしてその倉庫にまで来た。倉庫まで来ると気配だけが感じられた。あちこちから不気味な気配を感じる。
 それに十字を切る。あくまでおどけてだ。おどけて十字を切るとそこで。キャッツのボスがその無意味にでかい身体を見せてきた。
「よお、来たな」
「ああ、約束の時間にはちょっと早かったか?」
「いや、丁度いいさ」
 笑って応えてやる。奴の姿が満月の光で照らされてはっきりと見える。満月は俺の背中にあった。今は月の女神様が俺の守り神ってわけだ。
 
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