ピーターラビットのお父さんのお話
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第四章
「そこまで逃げよう」
「うん、じゃあね」
お父さんはグラハムさんの言葉に頷きました、そうしてです。
二匹は何とか茂みまで辿り着きました、後ろからマクレガーさんの無念そうな声が聞こえてきました。ですが。
まだ犬の声が聞こえてきます、それでなのでした。
二匹は茂みの中、草が鬱蒼と生い茂っている中もジグザグに駆けていきます。その中においてなのでした。
お父さんは匂いを頼りにです、今は姿が見えないグラハムさんに言いました。
「穴、あるかい?」
「いや、ないよ」
グラハムさんの声が返ってきました。
「こっちにはね」
「そうなんだね」
「そっちはどうかな」
「いや、こっちもね」
お父さんも言葉を返します。
「まだ見つからないよ」
「犬はまだ来てるよ」
グラハムさんはこのことも言ってきました。
「それはわかるよね」
「うん、気配を感じるよ」
確かにです、駆ける時の息の音も聞こえてきそうです。
「確かにね」
「そうだよね、だからね」
「犬をやり過ごす為に」
まさにその為にです。
「穴を見つけないと」
「そう、何処かないかな」
「若しかしたら」
ここで、です。お父さんはふと思いました。
「茂みを超えて森に入るとね」
「そこにだね」
「うん、木が一杯あるから」
そしてその木にというのです。
「木の下に穴熊さんが掘ってそのまま置いてある穴があるから」
「そこに入るんだね」
「あの犬は大きいから穴熊の穴にまで入られないから」
マスチフ犬はとても大きいです、それで穴熊の穴、それが小さいものなら入ることが出来ないのです。
「そこに入ろう」
「そうだね、それじゃあね」
「まずは茂みを越えて」
お父さんは今も必死に駆けながらグスタフさんに言います。
「それからだよ」
「よし、じゃあね」
グスタフさんも声で頷いてきました、そうしてです。
お父さんとグスタフさんは何とか茂みを越えました、そして森の中に入り。
森に入ってすぐの木の下に穴を見つけました、その時にはお父さんとグスタフさんは無事に合流出来ていました。
その穴を見てです、グスタフさんが言ってきました。
「丁度いいね」
「うん、穴熊の穴だよ」
「穴熊がまだ中にいるかな」
ここでふとです、グスタフさんはその可能性を考えました。
「あそこに」
「そうかも知れないね、けれど」
「それでもだね」
「うん、穴熊は僕達を食べないからね」
この森の穴熊達はそうです、木の実等ばかり食べているのです。
「だから中に飛び込んでもね」
「嫌な顔はされてもだね」
「食べられはしないよ」
最悪の心配はないのです。
「だからね」
「中に入っても大丈夫だね」
「うん、それに今はね」
犬の気配は今も近付いてきています、猶予はありません。
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