迷子の果てに何を見る
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外伝その一
前書き
今回はおまけ話です。
タイトルの通り、『根源』から出るとリリカルなのはの世界だった時用の話を作ってみました。もう少し長くなると思いますが大まかな部分は一緒です。前半はめんどくさいのでかなり飛ばされています。
外伝1 もしもリリカルな世界に飛ばされていたら
side レイト
世界から弾き飛ばされたオレは真っ白な世界に居た。
ここにはすべてのものがある。
ここにはすべてのものがない。
そう理解する。
「これが『根源』か。確かにそうだと『理解』できてしまうな」
『理解』
それがオレだけの『根源』なのだろう。
オレは人間が理解できるはずの無い精霊のすべてを理解してしまった。
故に根源へと誘われてしまった。
ここに誰もいないのもここはオレだけの『根源』だからだろう。
不意に異変を感じた。空間に罅が入り始めていた。
その罅の向こう側はここではない何処かの世界である事を『理解』する。
オレはキティの元に必ず帰ると約束した。
しかしこの世界から抜け出す術をオレは持たないことを『理解』した。
そして、この罅はこの世界から抜け出す術であることを『理解』した。
ならばどうするか?
答えは一つしか無い。
オレは罅に穴をあけこの空間から飛び出た。
そこで一度オレの意識は途絶えた。
次に目が覚めると
「知らない天井だ」
起き上がり状況を確認する。部屋の調度品や今寝ているベットからかなり裕福な家に保護されたのだろう。ふと、視線を感じそちらを向く。
「うおっ!」
そこには庭からこちらを伺っている50匹程の猫の群れがいた。
さすがにこれには驚いた。
その群れのボスと思われる1匹が口に何か宝石を銜えていた。
その宝石が気になりベットから降りると
「視線が低いな。いつの間にオレは子供になったんだ」
服も子供用に着せ替えられているがそれは置いておこう。
窓を開けると一斉に猫が飛びかかり、オレにすり寄ってきた。そして猫好きに取っての楽園が誕生した。なぜこんなにも好かれているのか分からないがとりあえず1匹ずつ頭を軽く撫でてやる。最後にボス猫を撫で、代わりに宝石を受け取る。
その宝石は今まで感じた事の無い力を秘めているらしく今までのオレなら理解する事は出来なかっただろう。だが、根源にたどり着いたオレに『理解』出来ないものはない。
そして理解すると同時に危険であると判断。厳重に封印を施し影の倉庫に収納する。
「アイ〜、みんな〜、どこに行ったの〜」
庭の方から誰かを探す様な声が聞こえてきた。その声に反応して何匹かの猫が鳴き声をあげる。
「そこにいるの」
走って表れた少女と目が合う。
「はじめまして」
「えっ、あのはじめまして」
「すまないけど大人の人を呼んできてくれないかな。お礼が言いたいし、あとこの子達をどけるのを手伝ってくれないかな」
「というわけなんだけど、君はどうしてあんな場所に倒れていたの?」
応接室に案内され、月村家当主の月村忍さんと月村忍さんの妹のすずかちゃんと向かい合うように腰掛け、左右の一人掛けのソファーには護衛の男性と女性がそれぞれ腰掛けている。そして、オレが保護された状況を説明してもらった。
「オレにもよく分かりません。ですからオレの記憶を見てもらおうと思います」
「記憶を見るって、何を言っているの?」
「これから起こる事は内密にお願いします」
過去を見せた後、オレは月村家に保護される事になった。ただ保護されるのはあれなのですずかの護衛兼執事として働いてもいる。......子供の姿で。
なぜかは分からないが大人に戻る事が出来ないのだ。他の能力もシンも使えるのにだ。仕方ないので諦めたが小学校に通う羽目になるとは思っても見なかった。収穫と行っていいのかは分からないがこの世界にも魔法使いはいた。すずかの友達で護衛にいた男女の妹である高町なのはという少女だった。どうやらあの宝石を集めているらしいが封印が甘くあれでは暴走する危険が有るな。ここ数日で手元には16個集まっているが一体いくつあるんだ。
ある日、血の臭いにつられて公園で一人の少女と大型の犬に出会った。血を流しているのは少女の方でかなり体調が悪いと判断する。隠蔽の結界を張ると大型の犬が人型に変身して少女の方も戦闘態勢を取ってしまった。それにしても空を飛ぶのにスカートはどうかと思う。
とりあえず瞬動で少女の背後に回り手刀を首に叩き込み気絶させる。殴り掛かってきた元大型犬を影で拘束しながら少女の背中にある傷に回復魔法をかける。それを見た元大型犬は警戒は解かないが敵意はなくなったので拘束を解き、そのまま名前だけ交換して別れた。少女の名はフェイト・テスタロッサ、狼の使い魔でアルフという名だった。後日怪我の治療のお礼を言いにきた時に忍さんとファリンさんにからかわれた。ところですずかお嬢様、何を怒ってらっしゃるので?
更に数日後、強大な魔力を感じ急いで現場に転移すると暴走を起こしている例の宝石となのはとイタチ、アルフとそれを封印しようとしているフェイトの姿があった。
「止まれ止まれ止まれ止まれ」
「どけ」
宝石の魔力に耐えきれずにぼろぼろになっているフェイトを押しのけ封印を施そうとするも莫大すぎる魔力に邪魔をされうまく封印する事が出来なかった。どうしようもないと思ったときキティの闇の魔法の事を思い出した。魔法を体内に取り込み己の霊体に融合させる技術を。魔法が取り込めるのなら魔力の固まりを取り込む事も可能なはず。オレは僅かな希望に託して闇の魔法を使う。
「 魔力固定スタグネット。 掌握コンプレクシオー」
莫大な魔力がオレの中で暴れる。だが、取り込めたのなら後は浪費するだけだ。
「我が身に宿る大いなる意思よ。我が身を喰らいてその身を示せ」
シンの力を全力で解放する事で体内にある魔力が一気になくなったのを感じる。それでも尚有り余る魔力をフェイトの治療に使う。安全域まで魔力が減った所でシンを再度封印し直す。元の姿に戻ると右手の中に例の宝石が握られていた。
「零斗君、ジュエルシードを渡して。それは危ない物なの」
「ジュエルシード、それがこの宝石の名前か。確かにこいつは危険な物だ。それをオレよりも弱い奴に渡す方が危険だ。なのは、悪い事は言わない。君が持っているジュエルシードを渡してくれ」
「駄目なの。それはユーノ君だから」
「君はジュエルシードがどんな物か知っているのか。こいつは願望機だ。願いを莫大な魔力を持って破壊という力を使って願いを叶える物だ。そんな危険な物を子供の君に渡せる訳が無い」
「零斗君だって子供じゃない」
「残念だがオレは普通の人間ではない。先程の姿を見ただろう。オレはこれでも3000歳だ。そしてこれが最後通知だジュエルシードを渡せ」
「嫌です」
「そうか、なら」
虚空瞬動で接近し、一瞬で手に持っていた杖を粉々に叩き壊しその破片を喉元に突きつける。そして脅しをかける。
「殺しには慣れているし死体もちゃんと処理してやるから君は行方不明という扱いになるだろう。家族の人は君を必死で捜すだろう。すずかお嬢様もアリサも君を捜してくれる。だが、いつまでたっても君は見つからない。どんどん時が経つに連れて探してくれている人たちの間に絶望が訪れる。そして今日から7年後に君は死亡判定が下される」
そこで破片を少し食い込ませる。血が流れたのを感じたのだろう。なのはの目に涙が溜る。
「やめてくれ」
高町さんの肩に乗っているイタチが答えた。
目だけをそちらに向けるが破片は喉元に突きつけたまましておく。
「なんだ」
「僕の名前はユーノ・スクライアです。あなたにジュエルシードを渡します。だからなのはを許してください。レイジングハート」
ユーノの声に高町さんが持っていた杖の先端の宝石が光りだしジュエルシードが3つ排出された。それをすばやく封印し直す。
「ジュエルシードは全部でいくつ存在する」
「全部で21個です。僕たちが見つけたのはそれだけでもう1つは彼女が持っています。後はどこにあるかは」
「なるほど、なら先程暴走しかけた1個と合わせてこれで全部か」
「えっ!?」
「オレの手元には20個のジュエルシードがあると言っているんだ」
オレは影から残りのジュエルシードを出し見せる。
「なのは、すまないがすずかお嬢様に世話になったとだけ伝えておいてくれ。オレはこの街から出て行くから」
それだけを言い残しオレはフェイトとアルフと一緒にこの場から転移で離れた。
「それでテスタロッサ達はなんでジュエルシードを集めてるんだ」
ダイオラマ魔法球の中に招待して話し合いをする事にした。
「お母さんが必要としているから。だから渡してくれないなら」
「勝てなくても戦うつもりか。残念だが渡せないな」
「そうですか。なら」
戦闘態勢を取ろうとするフェイトとアルフに待ったをかける。
「ジュエルシードを集めるってことは叶えたい願いがあるんだろう。だがジュエルシードは破壊でしか願いを叶える事が出来ない。だからオレがテスタロッサのお母さんの願いを叶えてやる。だから代わりにジュエルシードを渡してもらっても良いかな」
「何かしらあなたは」
「はじめまして、プレシア・テスタロッサ。オレはレイト・テンリュウ。ジュエルシードを20個保有している」
その言葉と同時にプレシアが杖を振ると雷が放たれる。が、オレの魔法障壁を抜ける様な威力ではない。
「くっ、なんて硬い障壁なの」
「とりあえず話を聞いてくれないかね。フェイトとの約束があるのでね」
「あの人形との約束ですって?」
「人形か、その人形を命を弄んでおいて貴様は何を望む」
無詠唱で雷の暴風をプレシアに当たらないように放つ。
それにプライドを傷つけられたのかプレシアに魔力が集まり、
吐血した。
「おい大丈夫か(お母さん)なんだ今の声は」
フェイトに似た声がどこからか聞こえてきた。だが今はそれを調べるよりもプレシアの治療の方が先だ。
「触らないで」
「少し黙れ」
プレシアがオレを振り払おうとするも力がこもっておらずかなり弱っているのが見て取れる。すぐさまプレシアの身体を『理解』する。プレシアの命を削っている症状に似た症状をオレは極最近知った。キティの闇の魔法だ。アレのように体内に魔力溜まりが何カ所も出来それが癌のように増殖しているのだ。このままでは後半年も生きれないだろう。だが一度成功しているのだ。魔力溜まりを全て分解し終えるとプレシアの呼吸が落ち着いた。今回は精霊がいない分簡単に治療は終了した。
(良かった)
また声が聞こえたが今度は確実にその存在を捕らえる事が出来た。
プレシアの後ろに隠れるようにフェイトよりも幼い少女の霊がいた。
この娘がクローンであるフェイトのオリジナルの少女なのだろう。だが、どういう事か霊体にしてはあまり消耗しているようには見えない。疑問に思ったのだが彼女から霊力のラインが繋がっている事に気付いた。そのラインは隣の部屋に続いている。そこで理解した。
「プレシア、お前が叶えたい願いは隣の部屋にいる娘の蘇生で良いのか」
「なぜ分かったの」
「お前の傍に娘の幽霊がいる。その幽霊があまり消耗していないという事は肉体が残っているからだ。言わばその娘は幽体離脱している状態だ。この状態なら蘇生させる事は可能だ」
「本当なの」
「ああ、だが良いんだな?ずっと傍に居たという事はフェイトをどういう風に扱っていたのかも知っているという事だ。つまり嫌われる可能性もある。それでも良いんだな」
「良いわ。嫌われようとも私の望みはあの娘にもう一度会う事なのだから。その為にフェイトを産み出した。けれどあの子はアリシアにはなれなかった」
「だから許せなかったんだろう。アリシアに似た別の誰かなのが。だが、これからは新しい娘としてみてやれ。それがアリシアを蘇らせる対価だ」
アリシアの症状はプレシアと似た様な症状だったが、アリシアの身体自体が魔力溜まりという状況だった。まあそれ以外は綺麗な状態だったので数日間かけて魔力を少しずつ分解していく。いきなり全てを分解するとどうなるか分からなかったので慎重に作業を進めた。その間にプレシアはオレとの約束を守り、フェイトに全て話した上で1人の娘として受け入れた。フェイトも最初は驚いていたがそれでも事実を受け止め今までの事を許した。アルフもさすがに空気を読んで暴れる様な事はしなかった。それから数日は実に穏やかだった。この数日の間にオレはこの世界の魔法についてプレシアに師事してもらい、この時の庭園に来る際に使われた次元転移魔法を改良する事での元の世界への帰還法を編み出す事にも成功した。代わりにオレの世界の魔法や理論を書き記した書物をコピーして渡した。後はフェイトに戦い方をいくらか示して鍛え方等も教えたりもした。
そして、とうとうアリシアの蘇生を行なう日がやってきた。
「さてこれから蘇生を行なう。心の準備は良いな」
「ええ」
「では始める」
魔力を純化させ、それをアリシアの霊体と肉体を繋ぐように纏わせ今度はそれを少しずつ凝縮するようにし霊体が肉体に入った所で凝縮を止める。そして言霊を紡ぐ。
「迷える魂に一縷の奇跡を」
オレが言霊を紡ぐとアリシアが息を吹き返した。しかしすぐには目を覚ます事は無い。事前に魂が馴染むまで時間が掛かる事を説明しているので戸惑ったりはしていない。それから数分後アリシアが目を覚まし感動の再会を見届けてから、オレはそっとその場を離れ庭に出た。
これ以上ここにいたら離れる時の悲しみが増すだけだ。キティをあまり待たせておきたくなかったしな。オレはただの夢だった。それで良いじゃないか。
「帰っちゃうの?」
不意に声をかけられた。
振り抜くとそこにフェイトが立っていた。
「酷いよ、黙って帰っちゃうなんて」
「これはさ、悪夢だったんだよ。娘を亡くして自らも病に冒され、命を弄んだ女性が見ていた悪夢。それが覚めた今、夢の中の住人であるオレは消えなければならない」
「夢なんかじゃないよ」
そう言ってフェイトがオレの手を握った。
「私がレイトの事が好きだって言うこの気持ちは絶対に夢じゃない」
頬を紅く染めながら、今にも泣きそうな顔をしている。
そんな彼女を握られていない方の手で頭を撫でてやる。
「ごめんな、オレはその気持ちに応えてやる事が出来ない。お前の前に思いを告げて待っていてくれている人がいるんだ。だからオレは帰らないといけない」
その言葉を聞いてフェイトの瞳から涙がこぼれた。それでも必死で泣かないようにしようと我慢していた。
「分かってた。レイトは私じゃない誰かを好きなんだって。でもそれでも私はレイトの事が好きだった。レイトに傍に居て欲しかった」
「ごめんな」
「いいの。でもその人よりも早く出会えてたら私を好きになってもらえたかな?」
「今でもお前の事は好きさ。でもオレを待っている娘の方が好きだった。それだけだ」
「そっか。ならいつかレイトを奪いに行っても良いかな」
「なら強くならないと無理だな。彼女はかなり強いぞ」
「うん、頑張るよ」
無理に笑おうとして顔がぐしゃぐしゃに崩れるがオレは何も言わない。このまま話し続けていては帰る気持ちが揺らぎそうだった。だからここで終わる。ジュエルシードから魔力を吸収して次元転移魔法を展開する。後は起動するだけだ。
「最後に1つだけ良い?」
「ああ」
「名前で呼んでください。テスタロッサでなく私だけの名前を」
「......また会えるのを待っているよ。フェイト」
「絶対に会いに行くから待っててね。レイト」
フェイトは笑いながらオレを見送ってくれた。その笑顔はとても美しかった。
side out
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