八条学園怪異譚
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第五十一話 オペラ座の怪人その十六
「飲むパンっていうけれど」
「栄養価はあるけれど問題はプリン体だから」
「飲み過ぎると痛風になるのよね」
「しかも朝から?絶対に駄目よ」
「むっ、だからか」
言われてだ、怪人も気付いた様だった。その気付いたこととは。
「ドイツでは痛風が国民病なのか」
「やっぱりそうなのね」
「皆苦しんでいる」
「ビールとあとソーセージよね」
愛実もドイツ人の好みは知っている、あまりにも有名だからだ。
「ジャガイモにはバター、それとベーコンにハムもよね」
「最高に美味い組み合わせだと思うが」
「美味しくてもそういうのばかりだとね」
「痛風になるか」
「そもそもビールどれだけ飲んでるの?」
「水がわりだ」
それがドイツでのビールの飲み方だというのだ。
「ドイツは水が悪い、それでだ」
「いつもごくごく飲んでるのね」
「それが駄目なのか」
「うん、かなりね」
愛実はまた駄目出しをした。
「私だったら絶対にアウトって言うから」
「ビールの害毒か、そういえばだ」
「そういえばって?」
「マルティン=ルターもカール五世もフリードリヒ大王も痛風だった」
ドイツの歴史における著名人達だ、その彼等もそうだったというのだ。
「ルターはよく足の付け根の痛みに悩まされていた」
「ビールの飲み過ぎね」
「ビールの害毒を何時間も講義した後でそのビールを何杯もごくごくと飲んでいた」
それで痛風になったのだ、尚彼は便秘にも悩まされておりこれを悪魔が自分に攻撃をしているせいだと考えていた。
「そうしていたが」
「というかワインの方が身体にいいから」
愛実は怪人に冷静に話す。
「ビールはよくないのよ」
「じゃあネロ=ウルフもなのね」
聖花は安楽椅子型の名探偵の一人の名前を出した、美食家として有名だ。
「あの人ビールを一日に七リットル近く飲むらしいから」
「確実に痛風になるわよ」
愛実はこの探偵についても駄目出しをした。
「というか酷い食生活ね」
「やっぱりそうなのね」
「そう、お酒には気をつけないと」
愛実は自分が酒好きということからも言う。
「青木先輩なんか特に」
「あの娘は本当にうわばみの旦那とタメ張れるからね」
口裂け女も茉莉也についてはこう評する。
「一日三升飲めるからね」
「あの人はちょっとね」
「度が過ぎてるね」
「どういう肝臓してるのかしら」
「何でもあの娘の家系は代々鋼鉄の肝臓らしいんだよ」
そしてザルだ、まさにうわばみだ。
「大杯でごくごくだからね」
「だからあの人はね」
「お酒についてもどうかしてるわよね」
聖花も言う。
「ちょっと以上に」
「うん、滅茶苦茶だからね」
「安心するのだ、私は彼女程飲みはしない」
怪人はこのことはこう返した、
「普通に多く飲むだけだ」
「普通になのね」
「そうなのね」
「そうだ、では観ていこう」
怪人は話を移してきた。
「劇をな」
「ええ、じゃあね」
「そっちもね」
「観劇はこの世で最高の楽しみの一つだ」
ワイングラスで焼酎、黒糖のそれを飲みつつの言葉だ。
「人ならば楽しまねばな」
「それでよね」
「皆で」
「観ていこう」
こう話してそのうえでだった。
愛実と聖花は怪人達と共に観劇を楽しんだ、その観劇の楽しさもあらためて知り酒もさらに飲んでいくのだった。
第五十一話 完
2013・9・22
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