久遠の神話
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第七十話 富と地と名とその十
「呼び止めて申し訳ありませんでした」
「では今から職員室に向かいます」
廊下を左に曲がってそこにある場所にだというのだ。
「また明日」
「その時を楽しみにしておいて下さい」
「そうさせてもらいます」
こう話してだった、双方は今は別れたのだった。
そして次の日の朝だった、高代は登校する上城と樹里のところに来て登校しながら昨日のことを話したのだった。
「昨日水樹先生、春日野さんとお話をしました」
「お二人とですか」
「というとやはり」
「はい、戦いのことです」
このことで話をしたとだ、二人にありのまま話した。
「そのことでお話をしました」
「それでどうなったのですか?」
「先生は」
「今日の十時、この学園の校庭で」
そこでだというのだ、二人にこのこともありのまま話す。
「私は女神達が出した怪物と闘い」
「勝てばですか」
「その時はですね」
「私は願うものを手に入れ戦いから降りることが出来ます」
それが出来るというのだ。
「そうなることが出来るのです」
「では」
「今日ですね」
「御覧になって下さい」
二人にだ、高代はあらためて言った。
「私がどうなるのかを」
「戦いから降りられるのか」
「願いを適えられるのか」
「願いが適うのなら」
正面を見てだ、高代は言った。
「私はそれで満足です」
「戦いで生き残らずに済めばですか」
「それでいいのです」
あくまで子供達を救いたいだけだった、彼の犯した罪とも関わりのある彼等を。
「私は、エゴですが」
「エゴ、ですか」
「はい、そのこともわかっているつもりです」
彼女自身でだ、そうだというのだ。
「私は自分自身の望みの為に戦いそして戦いから降りようというのですから」
「それがエゴですか」
「自分でわかっているつもりです」
歩きつつ上を見た、そこには空がある。
今空は青くはなかった、曇り不穏な雰囲気であった。だがその空を見ながら二人に対していうのである。
「私は全てエゴで動いていると」
「けれど先生」
樹里がその彼に言う、自嘲めかした笑みも浮かべる彼に対して。
「それで人が救われるのなら」
「身体の悪い子供達がですか」
「いいと思います」
それならばだというのだ。
「それで」
「エゴは悪いものですが」
「けれど先生は子供達を救いたいのですよね」
「そうです」
「それならです」
そう思っているのならというのだ。
「それで先生が誰も傷つけずに済むのなら」
「いいのですか」
「いいと思います、例えエゴであっても」
「では」
「最後の戦いを。頑張って下さい」
これが今の樹里の高代への言葉だった。
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