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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Memento mori.~Asmodeus~

 
前書き
Memento mori. /メメントー・モリー/死を忘れるな(意訳ですが)。
自分がいつか死ぬ身である、ということを胸に刻め、という意味で使われます。

アスモデウス戦イメージBGM
BAYONETTA『Blood & Darkness』
http://youtu.be/3GVOJ27Qcsg 

 
†††Sideシャルロッテ†††

レヴィヤタンを、ルーテシアっていう子のところへ向かわせた。残るは私とフェイト、そして目の前に居る“大罪ペッカートゥム”の分裂体の1体、許されざる色欲のアスモデウスだけ。そんなアスモデウスの目的は、どうやら私の足止めらしい。だから気掛かりなんだよね、ゆりかごに居るルシルとなのはがまずい状況にあるかもしれないってことらしいし。

「ふふ。色欲最期のダンスにご招待してあげるわ、三番」

VS・―・―・―・―・―・
其は大罪が色欲アスモデウス
・―・―・―・―・―・VS

「(ともかく、その不安を払しょくするために・・・)とっととぶっ倒す! 行くよ、フェイト!」

「うん!」

私は左手に“トロイメライ”を、右手に“キルシュブリューテ”を携える。フェイトは大剣形態の“バルディッシュ・ザンバー”を構える。対するアスモデウスは大鎌じゃなくてルシファーの剣・“ルートゥス”を二振り。阻害系の概念が掛けられている以上、あれでダメージを負っちゃいけない。

『フェイト。絶対にあの剣で斬られないようにして。あれで斬られたら、傷を治療することが難しいから』

『え・・・? あ、まさか・・・あれがシャルを傷つけた・・・!』

『そ。あれを治せるのルシルだけだから。気をつけてね』

念話で“ルートゥス”の危険性を伝えておく。今さらっぽいけど・・・。もしフェイトが傷ついたら、ルシル怒るだろうな~・・・それはもう激しく。

「もうしばらくの間、付き合ってもらうわ!!」

姿勢を低くしながら突進して来たアスモデウス。馬鹿だ。私とフェイト2人を相手に真っ向勝負だなんて・・・。

「いっけぇぇぇっ!!」

――光牙聖覇刃 (シャイン・シュトローム)――

≪Schein strom≫

閃光系魔力の波を放ってアスモデウスを迎撃する。迫る聖覇刃を見てもアスモデウスは突進を止めない。なぜなら・・・

「始めからこうして戦っていれば良かったわ・・・」

アスモデウスが左手に持つ“ルートゥス”を振るうのが見えた。アイツの「はあっ!」っと裂帛の気合のもと、聖覇刃は一閃されて消滅した。

「さすがは阻害の能力を持つ特別製の剣。ホント面倒な物を持ってきたよね」

「御明察。このルートゥスにかけられた概念、阻害がお前の魔力を消したわけ。私では完全に扱いきれないけど、それでも十分に役に立ったわ」

「どうしよう、シャル・・・?」

横に立つフェイトが訊いてきた。確かに攻撃というものを阻害されるのは厄介だけど・・・

『フェイト。連続攻撃で阻害される暇を与えないようにしよう。速さと物量攻撃を中心に攻めて、一気に切り崩す』

速さと手数で、反撃させないようにしてアスモデウスを潰すだけのこと。

「『了解。だったら・・・』バルディッシュ・・・いくよ」

≪Yes, sir. Full drive, Riot Blade≫

“バルディッシュ”がフルドライブモードの“ライオットブレイド”になった。短くなった片刃のような刀身を持つ剣だ。聞いた話だと、防御されたとしてもその上からダメージを与えられるように、刀身に高電圧の電流が流れていて、しかもその切れ味も“ザンバー”以上とのこと。それに短くなった分小回りが利きやすいそうだ。それじゃここからは速さ勝負だ。アスモデウスの鈍間具合はもう見知ってる。アイツの機動力程度じゃ、私とフェイトの動きには絶対についてこれないはずだ。

≪Sonic move≫

――閃駆――

私とフェイトは、お互いが持つ高機動法で、一気にアスモデウスとの距離を詰める。だけどアスモデウスは・・・

「ライドインパルス・・・」

「「なっ・・・!?」」

あろうことか戦闘機人のトーレの移動法を使って、私とフェイトの攻撃範囲から消えた。トーレとセッテの頭を鷲掴みした時に生まれた光。あの時、トーレとセッテの力を奪ったんだ。正直これは予想外だ。まさかそんなものを使えるなんて・・・。

「なかなかの速さだわ・・・!」

私の右横からアスモデウスの声。すぐに右手の“キルシュブリューテ”を構えて、一閃された“ルートゥス”の一撃を防ぐ。火花が散る中、“ルートゥス”を捌いて左手に持つ“トロイメライ”を振るう。それに合わせてアスモデウスがもう片方の“ルートゥス”を構えた。私はそれを見てすぐに“トロイメライ”を止めて、閃駆で離脱する。

「危なかったぁ・・・」

あのまま“トロイメライ”を振ってたら、“ルートゥス”の神秘で砕かれてた。

「スローターアームズ・・・」

アスモデウスの周辺に4つのブーメラン状の剣が現れた。あれはセッテの持っていた武装で間違いない。それを私とフェイトに向けて放って来たけど、さすがにそれは私たちを甘く見過ぎだ。武装は人じゃないから、気にすることなく“キルシュブリューテ”で両断。フェイトも無事に対処し終えていた。

「プラズマランサー!」

≪Get set≫

「ファイア!!」

「ロイヒテン・プファイル!」

≪Zusammenschieβen(撃ち倒します)≫

フェイトの雷槍(ランサー)15発、私の閃矢(プファイル)15発、計30発の射撃魔法が、アスモデウスに向けて一斉に放たれる。

――ライドインパルス――

また避けた。見たら判るように2つの射撃魔法は直射型だ。だけど・・・

「ターン!」

追撃(フェアフォルグンク)!」

回避されたらそれで終わり、なんてことはない。遠隔操作によって、再度アスモデウスに射撃魔法を殺到させていく私とフェイト。そしてまたアスモデウスは“ライドインパルス”で回避しては“ルートゥス”やページで対処していく。

光牙(タオフェ)・・・」

≪Taufe kreuz≫

十紋刃(クロイツ)!」

「プラズマ・・・

≪Plasma smasher≫

「スマッシャァァァーーーーッ!」

そこに十紋刃とプラズマスマッシャーを叩きこむ。すると「甘いわっ!」さっき砕いたブーメラン状の剣や、新たな“ルートゥス”がそれを邪魔をした。本当に面倒だ。スカリエッティが乗っ取られていなかったらもう決まってるのに。こうなったら・・・

『フェイト。私がアイツの攻撃と防御を切り崩すから、フェイトがその隙を狙って攻撃を叩きこんで。たぶんそれがベストだと思う』

アスモデウスの攻防は私が捌いて、隙だらけになったらフェイトがそこに攻撃。これでいく。

『・・・判った。それでいこう。私は背後から行けばいいよね』

私は“トロイメライ”を待機モードにして、“キルシュブリューテ”にだけ集中する。アスモデウスとの距離は大体10m弱。フェイトに一瞬だけの視線で合図。

「・・・っ!」

――閃駆――

そして一気に距離を詰める。真正面から堂々と突っ込む。フェイトへの攻撃を許さないための真っ向からの突撃だ。アスモデウスが“ルートゥス”の剣先を私に向けてきた。刺突でもするんだろうか・・・一点攻撃の刺突なんて怖くも何も・・・。

「残念ね。私にはこの“力”もあるのよ?」

――真楯(ハイリヒ・フライハイト)――

直感が働いて、ほとんど無意識に障壁を前面に張った。その直後に私を襲ったのは強烈な閃光とすさまじい衝撃。その正体は・・・

「っぐ! サタンのレーザー・・・!?」

そう、アスモデウスが放ったのはサタンのレーザーだった。本当にわけが解らない。サタンの最期はルシルの複製真技によるもの。そのサタンを他の“ペッカートゥム”が吸収する暇はなかったはずなのに。踏ん張りきれずに弾き飛ばされた私を見てフェイトが「シャルっ!」声を張り上げた。

「げほっけほっ、いっつ~・・・」

障壁ごと壁に叩きつけられて、少し咽たけど全然問題ない。その間に、アスモデウスは私じゃなくてフェイトに向けて、サタンのレーザーを放っていた。

「やめろっ、アスモデウス!」

迫るレーザー群を紙一重で回避してくフェイト。助けるために閃駆を使ってフェイトの元まで行こうとしたけど、「邪魔・・・するなっ!!」無数のページが私の行く手を拒む。もちろんそんなモノで私の行動を完全に邪魔できるわけがない。

――双牙風炎刃(ヴィント・ウント・フランメ)――

炎熱系と風嵐系同時使用による炎嵐の魔術。それで1枚残らず燃やし尽くす。燃えカスが降っている中、それを無視してアスモデウスに突撃をかける。フェイトの元へ行くよりも攻撃手であるアスモデウスを真っ先にどうにかした方がベストだって判って。

「フェイト!!」

念話よりこっちの方が早い。だから声に出して呼んだ。アスモデウスがこっちを見て、フェイトは次の行動に移るためにアスモデウスから離脱。

「さぁ踊りなさい!」

「くっ、こんのぉぉ・・・!」

そしてさっきと同じようにレーザー群が私に向けられて放たれた。でも至近距離での発射じゃないから容易く回避できて弾くことが出来る。

――真紅の両翼(ルビーン・フリューゲル)――

突撃し続けながら、背に真紅の翼を展開。疾走から飛翔に変わる。そのおかげでレーザー群が私を捉える事が出来なくなった。レーザー群の合間を縫ってアスモデウスへ最接近。そしてアスモデウスの持つ二振りの“ルートゥス”を“キルシュブリューテ”で弾き飛ばす。

「っ! しまっ――」

勢いよく弾き飛ばした衝撃でアスモデウスの両腕が大きく開いて、かなり無防備になった。そこで私は“キルシュブリューテ”を手離す。これで攻撃したら死ぬからね、スカリエッティが。攻撃態勢に入った私を見て離脱しようとするアスモデウスを、大きくした紅翼で覆って閉じ込める。

「何をするつも――」

紅翼の中で向かい合う私とアスモデウス。もしアスモデウスの姿がスカリエッティだったなら絶対にこんなことはしないけどね。

「こうする・・・のっ!!」

魔力を乗せた全力の右ストレートを、アスモデウスの腹に叩き込む。

「っがあはっ・・・!?」

紅翼を開放して、拳打の衝撃で吹っ飛ぶアスモデウスを見送りつつ“トロイメライ”を再起動。アスモデウスが吹っ飛ぶ先に居るのは、砲撃準備を終えていたフェイト。

「トライデント・・・・スマッシャァァァーーーーッ!!」

「グランツ・・・フォーゲル!!」

吹っ飛んでいるアスモデウスを挟撃する私とフェイトの砲撃魔法。それに対処できるほどの余裕がないアスモデウスは黄金と真紅の閃光に飲まれた。ここで手を抜くつもりはない。フェイトを巻き込まないように気をつけて・・・

「当り! もう1発!! 持ってけドロボー!!」

≪Glanz Vogel≫

トドメのグランツ・フォーゲルをぶっ放す。起こる大爆発。このアジトを揺らすほどのもの。

「・・・あ」

もしかしてやりすぎたかもしれない。・・・まっ、いっか。煙が晴れていって、ようやく視界がクリアになる。

「「・・・・」」

始めに目にしたのは、倒れ伏している白衣を着た紫色の髪のスカリエッティ。見た目で判断すれば無傷っぽいけど、たぶん笑えないほどのダメージを負ってるかも。そして黒く染まるレリックに重なるようにして立っている半透明なアスモデウス。

「一気に決める!!」

あの黒い“レリック”が、今のアスモデウスということらしい。ならば“レリック”を破壊すればいいだけだ。でもやっぱりそう上手くいかないのが常というやつで・・・。

「やってくれたわね・・・!!」

目を見開いたアスモデウスからレーザー群が掃射されてきた。床に刺さっている“キルシュブリューテ”を引き抜く。スカリエッティの体じゃない以上は、アスモデウスの命を心配する必要はない。だからここからは魔導師じゃなくて魔術師としての戦いに切り替える。

「それが界律の守護神(わたしたち)の仕事だから・・・よっ!」

――凶牙奈落刃(シャッテン・ヘレ)――

私の持つ闇黒系固有魔術・最強の一撃を放つ。大きな影で構成された刃が7つ。それが螺旋状――ドリルのようになって突っ込んでいって、レーザー群を粉砕していく。

「フェイト! そこに倒れてるスカリエッティ(バカ)を連れて離れてて!!」

折角死なせないようにして頑張ったのに、ここで巻き込んで死なせたら泣く。フェイトが「うん!」って頷き返して、スカリエッティの両足を持って引き摺って避難したのを確認。

「こんな時でも人間を気にするなんて・・・!」

「可笑しい? 私もそう思う・・・だけど・・・!!」

“ルートゥス”の散弾雨。一体どれだけ持っているんだろうか? それに続いてレーザー群、無数のページが襲い掛かってくる。

「これがホントの私なんだ!!」

“界律の守護神テスタメント”の私しか知らないなら可笑しいだろう。だけど魔術師の、本当の私なら・・・。

――双牙炎雷 双牙氷風 双牙凶閃――

「滅牙・翔破六天刃!!」

属性複数同時使用の術式“双牙”の奥義の1つを放つ。この世界じゃ2度目の使用。だけど威力は前回の十数倍。当然アスモデウスの攻撃を・・・

「うえっ? 相殺しか出来なかったの!? 思ってた以上に・・・強い!」

突き破ってそのまま直撃させるつもりだったのに。まさか、スカリエッティの体から出たことで本来の力を出してる・・・?

窮屈な肉体(スカリエッティ)から出ればこんなものだわ。三番。私が完全に消されるまでの間、もう少しだけ付き合ってもらうわ」

半透明なアスモデウスの体の中心、大体心臓辺りに有る黒い“レリック”がひと際強く輝く。その光は魔力のような、神秘のような曖昧な感じがする。

「消される・・・?」

それより消されるってどういう・・・ううん、深く考えないでおこう。どちらにしても殺ることには変わりないから。

――閃駆――

――ライドインパルス――

一瞬でお互いが間合いを詰めて、私は“キルシュブリューテ”を、アスモデウスは“ルートゥス”を全力で振るう。

「「っ!」」

衝撃波がこの通路一体を駆け抜けてく。これは結構・・・キツイ。

「やるね、アスモデウス。半透明の弱よわ状態のクセしてさ!」

「本来のお前なら、今ので私を真っ二つにしているわね」

鍔迫り合いの最中の微笑。私は強引に“ルートゥス”を捌いて、一度間合いを開ける。

――九頭龍閃――

ルシルの複製された術式や技などが貯蔵されている創生結界・“英知の書庫アルヴィト”で読んだ複製技を使った。
壱の唐竹。弐の袈裟斬り。参の右薙。肆の右斬上げ。伍の逆風。陸の左斬上げ。漆の左薙。捌の逆袈裟。玖の刺突。この九つの斬撃を同時に放つ。飛天御剣流っていうらしいけど、なかなか使い勝手のいい剣技ばかりだ。この流派の剣技を基にして、魔術とか魔法を組んでみようかなぁ。で、結果はというと・・・

「ライドインパルス・・・!」

「あちゃあ・・・」

避けられたわけで。でもいくつかは当たっている。その証拠に、弐と参と肆という斬撃を受けた部分が削れていて、腕も吹っ飛んでいる。

「今の技、不可避らしいんだけど・・・。ま、こんなものなのか・・・なっ!」

再度、閃駆で距離を詰めるために動く。アスモデウスはそれに対処するために動こうとしたその時・・・

「これは・・・!?」

――チェーンバインド――

「シャル! 今!!」

アスモデウスに黄金の鎖状のバインドが六重に掛けられる。フェイトの魔法だ。なんで神秘の塊のアスモデウスに魔法が通用するのか、とか気になる。ま、神秘の無い“レリック”っていうのを本体にしてるからだろうね。とにかく今はこの刹那のチャンスを活かすのみ。

「下等な人間風情がぁぁぁぁぁぁッ!!」

アスモデウスの怒号がアジトに響き渡っていく。そしてチェーンバインドが次々に弾け飛んで行くけど、もう遅い。

「これで終了!」

――閃駆――

閃駆から繋ぐ刺突。狙うは黒い“レリック”一点のみ。

「っく・・・!」

アスモデウスは刺突を横っ跳びしたことで回避した。開いた距離は大体8m弱。

「目醒めよ、キルシュブリューテ!」

“キルシュブリューテ”の能力を限定解放。使用する術式はもちろん、私の持つ必殺の対人真技。鞘に納めた“キルシュブリューテ”で居合い抜きの構えをとる。

「真技・・!!」

「本当に忌々しいわねぇッ!」

アスモデウスの最後の足掻きとも言える“ルートゥス”の散弾雨。けどやっぱり遅い。ルシルのカマエルやチュールに比べれば遥かに。紙一重の回避でアスモデウスに突っ込んでいく。

「「はあああああああっ!!」」

私とアスモデウスの咆哮。アスモデウスもまた覚悟を決めたのか、居合い抜きのように構えて一気に“ルートゥス”を一閃。

――牢刃・弧舞八閃――

アスモデウス、というより黒いレリックに向けて放つ、防避不可の八閃。一閃された“ルートゥス”をまずは切断していく。そして八閃がアスモデウスに届いて斬り裂く、というところで私は見た。安堵と満足。そして、してやったり、という表情を浮かべたアスモデウスを。

「「・・・・」」

すれ違ってお互いが背を向けている。手応えはあった。確実にアスモデウスと“レリック”を切断した。

「ここまで・・・ね・・・。精々気をつけるといいわ。・・・ベル・・ゼブブが・・・動きだした・・・・ことだし・・・」

背後から聞こえたアスモデウスの声。アスモデウスの確実な最期を見届けるために振り返る。そこには足元から光の粒子となって崩れていくアスモデウスが居た。

「・・・フフ・・・見物だわ・・・この先・・・どんな・・・・ルシ・・・ファー・・・」

そして黒い“レリック”は粉々に砕け散って、アスモデウスも完全に消滅した。“キルシュブリューテ”を魔力に戻して消す。

「・・・・」

「シャル・・・勝ったの・・・?」

アスモデウスが消えたことで、安堵の表情を浮かべてるフェイトがそう訊いてきた。

「うん、勝った。ここでやることはやったから、私はここを出たらゆりかごに向かう」

ヴィヴィオの側に居るベルフェゴールに、もういないはずのルシファー、そして今知ったベルゼブブ。最悪を考えれば、この3体がゆりかごに集結してる可能性が出てきた。

「ん・・・う・・・ん・・・?」

スカリエッティが呻いて、そして目を開けた。あそこまでボコボコにしたのにどういう体の頑丈さなんだろう。

「・・・広域次元犯罪者ジェイル・スカリエッティ・・・あなたを逮捕します」

フェイトの目的、スカリエッティの逮捕。それに立ち会うのが私になるなんて・・・。

「・・・っ! な、何故・・・!? 何故君がここに居る・・・!? ゆりかごは!? どうなっているんだい!?」

錯乱状態。まさか乗っ取られていた間の記憶がない・・・? ま、起きたんなら少し話を聞かせてもらおうかな。スカリエッティの胸倉を掴んで尋問、場合によっては・・・。

「スカリエッティ。ペッカートゥムとはどうやって知り合った? ヤツらの目的は? ヤツらの残りはどこに居る?」

どうせヤツらの全てを把握してるわけない。だけどどこに居るのかくらいは知っているはずだ。

「き・・・君は誰だい・・・? それにペッカートゥム・・・? なんだいそれは? いや、そんなことより私は・・・・私は・・・?」

「「え?」」

フェイトと2人して気の抜けた声を出す。ちょっと待って。いやいやいや・・・演技ですか、それは?

「ペッカートゥムと言ったらペッカートゥムのことよ!」

「ちょっ、シャル・・・!」

「何をするんだい、君は!?」

思いっ切りスカリエッティを揺する。

「アスモデウス! ルシファー! マモン! サタン! レヴィヤタン! ベルフェゴール! ベルゼブブ! 忘れたなんて言わせ・・・まさか・・・!」

掴んでいた胸倉を離す。

「私が誰か・・・解る?」

自分自身に冷静になるように言いつけて、スカリエッティに問いかける。もし私の推測が間違っていたら、スカリエッティは3rd君って私を呼ぶはず。当たっていたらきっと・・・。

「君が誰か? 生憎と私は興味のないモノは覚えないようにしていてね。すまないが君の事は知らないよ」

冷静になったスカリエッティがそう答えた。やっぱり。私とルシル――“テスタメント”やヤツら“ペッカートゥム”の記憶が丸ごと消えてる。これで良いのか悪いのかは私には上手く判断出来ない。ううん、きっとこれで良かったんだ。そんな知識は残らない方が良いに決まってる。

「そんなことより私の戦闘機人(さくひん)やゆりかごはどう――おふっ?」

鳩尾に1発お見舞いして、スカリエッティの意識を強制的に刈り取った。私にとってスカリエッティはもうどうでもいい。あとは管理局でどうにかしてもらおう。

「えっと・・・シャル・・・?」

スカリエッティ(これ)は私が運ぶから」

スカリエッティの襟首を掴んで引き摺りながら運ぶ。そしてようやく出口に到着。久しぶりって思える太陽の光を浴びた。

「フェイト執務官! 騎士シャルロッテ! ご無事でしたか!」

シスターが私たちに気付いて声をかけてきてくれた。そこで引き摺ってきたスカリエッティを教会騎士の方々に引き渡した。引き摺った所為でさらにボロボロになったけど、もうどうでもいいよね。

「シスター達も無事だったんですね」

「はい。ウーノという戦闘機人は思っていたより簡単に倒せたので。そちらの方は大丈夫でしたか・・・?」

フェイトとシスターのやり取りを聞いて疑問。アスモデウスに支配されたはずのウーノが弱かったって話。ならどうしてアスモデウスは、ウーノが強いって思わせるようなことを言ったのか。推測だけど、私1人だけを相手にしたかったんだと思う。私1人に対してアスモデウスとレヴィヤタンの構図を目指し、そして失敗した。フェイトが残って、レヴィヤタンが裏切った。それがアスモデウスのミス。今となっては過ぎたことだからもう興味はないけど。

「もうここは大丈夫かな」

スカリエッティとセイン、トーレとセッテが連行されていくのを見る。ここでやることはもうない。ならルシルとなのはが居るゆりかごを目指すだけ。

「シャル・・・?」

「それじゃ私、行くね。ペッカートゥム内で結構な面倒事が起こってるみたいでさ。ルシルは大丈夫だろうけど、なのはとヴィータとヴィヴィオが心配」

「私も行く。私もスカリエッティ逮捕の役目は終わったし・・・」

シスターへと視線を移すと、シスターは頷いてくれた。行っても良いということだ。それじゃあシスターたちには悪いけどあとは頼むとしようかな。

「・・・判った。正直急ぎたいから転移で近くまで行くけど。いい?」

「うん!」

あとの事はシスター達に頼んで、私とフェイトはゆりかごへと向かった。そして一度目の中継点で気付いた。フェイトも感じ取ったのか顔が青い。それは結構な存在感と威圧感。その正体がベルゼブブだということはすぐに判った。

・-・-・-・-・

フリードリヒに跨るエリオとキャロ。近くにはガジェットⅡ型に立つガリュー。そのガリューに抱えられたルーテシアが居る。許されざる嫉妬たるレヴィヤタンに言われ、戦場となる廃棄区画から離れている最中だ。すでにヴォルテール、白天王、地雷王は召喚を解かれ、この場にはもういない。
そして 3人の間にあるのは沈黙。それがこの場を支配している空気だ。戦場となっている場所から結構離れたというのに未だハッキリと感じられる。許されざる暴食たるベルゼブブから再び放たれている圧倒的な威圧感を。

「・・・レヴィヤタンちゃん・・・大丈夫かな・・・?」

キャロが呟く。しかし彼女は何となくこの戦いの結末が判っていた。勝つのはベルゼブブだ、と。その目でベルゼブブを見ての推測。それほどまでに彼女の心に強烈なまでの存在感を刻んだベルゼブブ。

「きっと大丈夫だよ、キャロ。レヴィヤタンはルーと約束したんだ。また会おう、って・・・。だから・・・きっと・・・」

そう言うエリオだが、実際にはキャロと同じ思いだった。レヴィヤタンは負ける。勝つと信じたい。けど勝てない。それがエリオの結論だった。轟音。閃光。爆発。それが繰り返されている戦場を見つめる。あまりに遠いので、今はどちらが優勢なのかは判らない。そしてそれは突然起こる。戦場となっていた廃棄区画のある一画が一瞬で消滅した。

「こんな・・・!」

「これがペッカートゥム同士の戦い・・・!?」

エリオ達は言葉を失った。あんなにも簡単に、一瞬でビル群が文字通り消えた。それは、高ランク魔導師の魔法を物理破壊設定にでもすれば可能なことだ。が、それにはある程度の準備が必要だ。砲撃なら魔力集束と言うように。破壊後には瓦礫や破片も少なからず残るだろう。しかし、そんな前準備もなく、一切の兆候もなく、瓦礫すら残さずそれは起こった。
それがどっちの攻撃によるものかはエリオ達には窺い知れない。だが現在の戦況が判ろうともエリオ達には為すすべはない。これはもう人間が手を出していい戦いの範疇を超越しているのだから。

「・・・レヴィ・・・」

今まで一切声を出さなかったルーテシアが口を開く。出た言葉はレヴィヤタンの愛称である、レヴィ、だった。自分を抱えているガリューの顔を見て、頷くルーテシア。ここからでも確認できる更地で、砲撃か何かが放たれるのが見える。それを見ていたエリオとキャロは、その戦場へ向かおうとするルーテシア達に気付いた。

「ルーちゃん!?」

「ガリュー!?」

その自殺行為ともとれる行動に驚愕するエリオとキャロ。しかしそれを気にせずにルーテシア達は戦場へと向かおうとする。

「待ってルーちゃん! 今行ったら危ないよ!? 巻き込まれちゃうよ!?」

「そうだよ! レヴィヤタンは、ルーや僕たちを逃がすために戦ってくれてる! 今ルーが行けば、レヴィヤタンは悲しむし、きっと戦いの邪魔になる!!」

エリオとキャロの必死な説得。それを聞いたルーテシア達は動きを止める。その視線をエリオとキャロへと向けて・・・

「解ってる。だけど・・・」

涙を浮かべている目で2人を見た。ルーテシアにとってレヴィヤタンは、自分を助けてくれていた大事な人の1人。その大事な人が今、目の前の更地で命を懸けた戦いをしている。しかもその戦いは自分たちを守るためのもの。
逃げるしか出来ない自分が憎い。守られることしか出来ない自分が情けない。戦うレヴィヤタンを手伝えない自分が、力のない自分が許せない。それが涙となってルーテシアの頬を流れていく。エリオとキャロはその涙を見て・・・迷った。行かせるべきか、それともやはり止めるべきか。普通に考えれば後者。行けば間違いなく殺されるからだ。迷いの果て、やはりルーテシアを止めようとしたところで・・・

「エリオ!? キャロ!?」

「「え、フェイトさん!?」」

頭上から聞こえた声に、エリオとキャロは見上げる。そこに居たのは、2人にとって上司であり姉であり母のようでもあるフェイトだった。そしてもう1人。この場で唯一レヴィヤタンとベルゼブブの戦いに干渉出来る者――シャルロッテが居た。

「うへぇ、今代のベルゼブブはやっぱりやばい・・・」

「「シャルさん!」」

「っ・・・!」

エリオとキャロは歓喜に近い声を、ルーテシアの視線は警戒の色を強くした。シャルロッテは3人を一度見回して、そしてもう一度ルーテシアを見る。この子がレヴィヤタンの守りたいもの、か。シャルロッテはそう思いながら口を開いた。

「ルーテシア、よね? 私はシャルロッテ・フライハイト。よろしく。私があなたに訊きたいことは2つ。レヴィヤタンの正体を知っているか否か。そしてもし知っているなら、その上でレヴィヤタンとこれからも一緒にいたいか否か・・・」

「・・・」

シャルロッテの問いに沈黙するルーテシア。

「・・・あなたの返答次第で私はレヴィヤタンを助けることになる。そう約束したから。さぁ、あなたの(こたえ)を聞かせて、ルーテシア」

シャルロッテのレヴィヤタンを助ける、という言葉を聞いたルーテシアは、顔を上げてシャルロッテの目を見る。

「レヴィの正体が何なのか知らない。でも、それでもレヴィは大事な人。だからこれからも一緒にいたい・・・。レヴィを・・・助けて・・・」

ガリューからガジェットⅡ型に降りて立って、シャルロッテに頭を下げて頼んだ。レヴィヤタンを助けてください、と。

「・・・よし!」

シャルロッテはルーテシアを見て、満足そうに頷いた。移した視線の先、そこでは未だに戦いが続いている。

「それじゃ助けてくるから。フェイト達はここで待ってて」

「待って。わたしも行く・・・連れてって」

ルーテシアが真剣な面持ちで言う。それを聞いたエリオとキャロはまた言葉を失う。

「・・・判ってると思うけど、危険だよ?」

ルーテシアは頷いて応えた。危険は覚悟の上、それでも行きたいのだと。

「ぼ、僕も行きます!」

「わたしも!」

「ちょっ・・・!」

今度はフェイトが言葉を失った。当然だ。目の前の更地で繰り広げられている戦いは人智を超えている。そんな危険度MAXな場所に、大事なエリオとキャロを向かわせるわけにはいかない。

「・・・ついて来るな、って言っても無駄・・・ね」

「シャル!?」

フェイトのうろたえ度が一気にレッドゾーンへ。シャルロッテにエリオ達を止めるように頼もうとした時・・・

「「「「っ!?」」」」

「バカな・・・!?」

この場にいる全員が絶句。あまりに強大な力の波がこの場へと到達したのだ。その力の中心は、更地で強く輝くすみれ色の大光球だ。

「レヴィ・・・!」

「あんなもの至近で使ったらベルゼブブどころか自分も消し飛ぶじゃないのっ!」

その光の色がすみれ色ということで、あの大光球の担い手がレヴィヤタンだと判ったシャルロッテ。感じ取れる神秘量からして、相討ち覚悟の一撃だとも判ってしまっていた。

「先に行く! ついて来たかったら追いついて来て!」

シャルロッテは真紅の翼ルビーン・フリューゲルを羽ばたかせて大光球へと向かう。

「レヴィ!」

シャルロッテを追ってルーテシアが、フェイト達が戦場の中心へと向かう。

†††Sideシャルロッテ†††

レヴィヤタンの本気もそうだったけど、今代のベルゼブブはさらにやばい。人間になっている所為だからだろうか、ベルゼブブの威圧感に背筋が凍った。情けない。たかがベルゼブブ如きに気後れするなんて・・・。

「目醒めよ、キルシュブリューテ!」

レヴィヤタンを飲み込もうとする閃光を、限定解放した“キルシュブリューテ”で斬り裂く。それでも止まることを知らないレヴィヤタンの攻撃に、2番目に強いのって絶対にレヴィヤタンだよ・・・」嘆息する。爆ぜる閃光から逃げるために、レヴィヤタンのお腹に手を回して急いで離脱する。

「これって・・・!」

レヴィヤタンのお腹に回した腕から伝わってくる感触。柔らかさじゃなくて空洞のような何も無さ。砕かれている・・・? 頬にもヒビが入っているし、眼の端には涙が零れた跡がある。

「こんなボロボロになってまで・・・・」

守りたかったんだ。あのルーテシアって子を。そして閃光から完全に離脱。気を失っているレヴィヤタンをそっと地面に横にする。

「!!」

後から来るフェイト達のために、ベルゼブブから放たれている威圧感に真っ向から自分の威圧感をぶつけて相殺する。これで少しはベルゼブブの威圧感を弱く感じることになるはずだ。ついでに私はベルゼブブへの牽制の意味を込めて、威圧感に続いて殺気を叩き込む。そのおかげもあってかベルゼブブはその場から動こうとしなくなった。

「レヴィ・・・!」

「レヴィヤタンちゃん・・・!」

「レヴィヤタン・・・ひどい・・・!」

横にしたレヴィヤタンを見て、エリオ達の表情が歪んだ。この子たちにとっては結構ショッキングなものだと思う。レヴィヤタンが小さく呻いて、うっすらと瞼を開けた。

「え・・・なん・・・で・・・?」

「・・・・レヴィ・・・また・・・会えたよ」

レヴィヤタンが、ルーテシアを見て目を見開いた。意識を取り戻したなら、あとはここからみんなと一緒に避難させればいい。

「それじゃあフェイト。みんなを安全な場所にお願い」

「うん、判った。気をつけてね、シャル」

ガリューがレヴィヤタンを横に抱え、ルーテシアはレヴィヤタンの手を握る。そして先にここから離れていった。フェイト達もそれに続いて、フリードリヒに跨っているエリオとキャロと一緒に離れていった。うん、それでいい。何も言わずに行ってくれて感謝だ。

「・・・それじゃあ始めようか、ベルゼブブ」

ここで、今まで黙っていたベルゼブブが動く。ゆっくりと私のところに歩いてくる。

「今代のベルゼブブ、お前は随分とまともな力を持った分裂体ね。正直驚いてる。だから、ここで確実に斃させてもらう・・・」

こいつはここで絶対に斃しておかないとまずい。そう本能が告げてくる。

「あぁ、少し待っていただけますか?」

「なに?」

歩みを止めて私を見据えるベルゼブブ。臨戦態勢は解かない。いつでも確実に、一瞬で決めるために。

「あぁ、それでも結構です。まずは話を聞いていただきますか?」

「・・・言ってみて」

くだらない話なら即叩っ斬る。

「3rd・テスタメント。僕はあなたと戦うつもりはありません。何故なら僕たちペッカートゥムの目的は、あなた達テスタメントと戦うことではないので」

「・・・・・・・・・・・・・はい?」

今なんて言った? ベルゼブブのヤツ。え? 界律の守護神(わたしたち)との戦いが目的じゃない? いやいやいや・・・メチャクチャ襲われたりしてんだけど実際。しかも私とルシル、一度死にかけたし・・・マジで。

「あぁ、お気持ちはお察しします。全ては許されざる暴食(ボク)のミスですね。つい数時間前に生まれたばかりの所為で、他の罪たちの独断行動を許してしまった。あぁ、これは言い訳ですね。いけませんね。あぁ、いけません」

生まれたばかり? 独断行動? それに今まで戦ってきたヤツらは独断で戦いを望んだってこと・・・?

「それが本当ならお前たちの目的は? それを聞かせてもらう。まぁ聞いたところで斃すことには変わらないけどね」

大罪(ボクたち)の目的は言えませんね。ただ、許されざる傲慢(ルシファー)の目的は言いましょう。彼は全てを裏切り、分裂体を害し、“力”だけを奪い取り、自己の“傲慢(がいねん)”を強化していっています。そして界律の守護神(あなたたち)二柱を取り込んだその先――」

そこまで聴いたところでもすでにぶっ飛んだないように目眩すら覚える。

「ルシファーという個を残したままでその存在を昇華、霊長の審判者(ボクたち)の空席に座する。それが彼の目的です。すでに僕とレヴィヤタン以外は取り込まれてしまっている状態。僕は裏切り者であるルシファーを抹消するためだけに来たんです。彼の目的は、本来の僕たちの目的の邪魔となるので・・・」

つまりベルゼブブの目的は、“ペッカートゥム”本来の目的の邪魔者になっちゃったルシファーを斃す、ということか。ふ~ん・・・・まっ、どの道ベルゼブブを殺ることには変わりないんだけどね。

「なるほどね・・・。でも、だったらなんでレヴィヤタンと戦ったわけ?」

「あぁ、あれですか。あれは美味しく頂こうと思ったのです。あの紫色の子や桃色の子、赤色の子をね。それを邪魔しようとしたレヴィヤタンと戦うことになってしまったわけです」

「・・・・・・・変態かお前は。あんな小さな子たちに向かって、いただきます? 消えろド変態。私がお前の全てを根こそぎ刈り取ってあげるから」

他の人が聞けば十中八九変態発言と捉えるはず。外見は良い男なのに、どうしてこんな変態なのか・・・。

「あぁ、そうですか。残念ですね。なら仕方ありません。ある程度痛めつけてしまいますから、そうしたらしばらく眠っていてください」

「上等だ変態。お前はしばらくなんて言わずに永遠に寝てなさい!」



・―・―・シャルシル先生の魔法術講座・―・―・


シャル
「ほいさ、来た! 久しぶりのこのコーナー♪」

フェイト
「こ、今回は私とシャルの2人だけなんだね・・・?」

シャル
「まあね。なのはとルシルはゆりかごだし。ユーノとアルフは忙しそうだし――」

ユーノ
「ちょっと待った!」

アルフ
「そんなことないから、あたしらを交ぜなっ!」

フェイト
「アルフ! ユーノ!」

ユーノ
「ひどいじゃないか、シャル! この第三章でも呼んでくれるって言ってたのにっ」

アルフ
「そうだよ。出番を待ってたら、もう第三章も終わりじゃないかっ」

シャル
「ohごめん。いや、だってさ。ほとんど第一章で使ってるからさ。自然とこのコーナーの数も少なくなっちゃうわけで」

ユーノ
「それはそうだけど。やっぱりもっと出番がほしかったよ」

アルフ
「そうだよ。まぁ前線から退いたのがあたし自身の意志だから、本編の出番が少なくなったのは仕方ないけどさ」

フェイト
「ご、ごめんね2人とも。じゃあ今回は、この4人でやろう」

シャル
「そだね。そんじゃ早速始めよう♪

――光牙聖覇刃 (シャイン・シュトローム)――

――真紅の両翼(ルビーン・フリューゲル)――

――凶牙奈落刃(シャッテン・ヘレ)――

っていう、この3つだね」

ユーノ
「(出来るだけ喋らないと)シャイン・シュトロームって、シュヴァルツ・シュトロームに似てるよね・・・?」

シャル
「うん。以前紹介した、凶牙黒浪刃シュヴァルツ・シュトロームの対だからね、光牙聖覇刃シャイン・シュトロームは。閃光系魔力の魔力波を広範囲に放つ術式ね。シャインは光、シュトロームは流れ、ね」

アルフ
「じゃあさ、シャル。あんたの翼、いつの間にか両方揃ったんだね。あたしらと別れる前は、片方だけだったのさ。まぁ今の方がカッコいいと思うけど」

シャル
「あは♪ ありがとアルフ。片方だけでも良かったんだけどさ、やっぱり飛行速度や防御力を考えれば、両方ある方が良いって考えてね。だから術式を変更したんだ。そのおかげで、片翼状態での速度上昇術式発動中のスピード以上の速度を出せるようになったんだよ。んで、この両翼状態での速度上昇術式発動で、さらに高速度を叩きだせるようになったんだ」

アルフ
「ってことは、ルシルの空戦形態ヘルモーズくらいの速さを出せるってことかい?」

シャル
「全然。ヘルモーズって直線限定ならマッハ3~4くらい出せたはずだし。それに私の紅翼の速度強化って、持続じゃなくて一瞬だけだから、まだまだヘルモーズの方が速いよ」

フェイト
(今回はもうアルフとユーノに喋らせた方がいいよね。黙ってよ)

ユーノ
「それじゃあ最後の魔法、凶牙奈落刃シャッテン・ヘレをお願い」

シャル
「ん、了解。この術式は、私の有する闇黒系術式の最強ね。闇黒系魔力で発生させた大きな7つの影の刃を螺旋状に放つ、中距離斬撃なの。影剣の硬度は結構強いから、障壁切断とかに良く使ってたな~。ちなみに、シャッテンは影。ヘレは地獄って意味ね」

アルフ
「闇黒系ってそんなに堅いのかい?」

シャル
「うん。普通の属性の中じゃ結構ね。粘りもあるし堅い。防御一点に使われると、物理攻撃じゃ絶対に突破できないかも」

ユーノ
「そうなんだ。でも、シャルもルシルも闇黒系の障壁を持ってないよね・・・?」

シャル
「やっぱり得手不得手ってあるよ。私、闇黒系の術式って少ししか持ってないもん。ルシルもそんなに持ってないはずだし。結構難しいんだよ、不得手の属性を操るって」

ユーノ
「まぁそれは当り前だろうね。苦手なんだし」

アルフ
「でも持ってるよな。なんでだい?」

シャル
「それは・・・・秘密ってことで❤(言えないよ。大戦時、いろんな魔術師にも対応できるように、殺せるようになるために憶えたなんて)だから、今回はここまでっ。じゃあねぇぇーーーー・・・・」

ユールフ
「逃げた!」

フェイト
「どうしたんだろう、シャル。すごく悲しそうな顔してた・・・」
 
 

 
後書き
アスモデウスの退場です。結構アッサリですね。
長引かせると、レヴィ達との合流に支障が発生するということで、です。
結構ズレ感がありますけど、どうしようもなく・・・・。
そしてフェイトの真ソニックフォームの出番なし。
一応これにも理由があるので、責めないで下さると助かります 
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