戦国異伝
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第百四十九話 森の奮戦その六
だからだ、長政は忍にこう問うたのだ。
「どうなのじゃ、そこは」
「それまではわかりませんでした」
「左様か」
「何とか他の者達も逃げ延びまして」
「御主もここに来たか」
「皆逃げられましたが危ういところでした」
彼等にしてもだというのだ。
「伊賀者もとかくというものでした」
「そこまでは」
「はい、左様でした」
動きは伊賀者のものではなかったというのだ、だがだった。
「忍もとかくという勘で」
「色もじゃな」
「はい、灰色でした」
一向宗だ、彼等の色のことはもう言うまでもなかった。
それでだ、長政は周りにこう命じた。
「ではこれよりじゃ」
「その四万の門徒達とですね」
「今から」
「戦じゃ」
それだというのだ。
「勝つぞ、それにこの辺りはな」
「我等の国です」
「それこそ小路の一本に至るまで知っております」
皆この辺りの地には詳しい、それで話すのだ。
「ではですな」
「地の利を活かして」
「そのうえで戦い勝つぞ」
まさにだ、そうするというのだ。
「わかったな」
「はい、それでは」
「今より」
こう話してだ、そしてであった。
彼等は一転して慎重に前に進む、そのうえで。
前に出て来た敵達を見た、そしてだった。
その数を見た、数はというと。
「忍の者の報通りですな」
「はい、四万です」
「四万います」
「間違いなく」
「そうじゃな」
彼等は開けば場所にいた、右手には琵琶湖があり左手に森が広がっている。その場に四万の数がいるのだ。
灰色の服と旗、それにだった。
「違う者もいますな」
「その者達も多いです」
「その割合、かなりですな」
「そしてその者達が」
門徒達の中の灰色でない者達もいる、その彼等を見ると。
「刀や槍を持っていますし」
「鉄砲も弓矢も持っていますな」
「随分と武器がいいですな」
「では」
「うむ、灰色でないことが気になるがな」
その彼等こそがだった。
「紛れもなくな」
「殿が書いておられた者達ですな」
「そうですな」
「そうじゃ、間違いない」
長政はわかった、彼等こそが信長が書いてあった門徒達の武器のいい者達だ。
服は灰色ではない、だが彼等はだった。
「門徒の中におる」
「では敵ですな」
「敵ならば」
「うむ、戦いそしてじゃ」
長政はその四万、彼が今率いている軍勢よりも遥かに多い数の軍勢を見据えてそのうえでこう言うのだった。
「勝ち」
「そしてですな」
「与三殿を」
「お救いするぞ」
長政は何としても森を救うつもりだった、それが為に。
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