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八条学園怪異譚

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第五十一話 オペラ座の怪人その十一

「それで怨霊が出るとかね」
「そういう話って本当に多いわね」
「首吊ったとか飛び降りとか」
「学校の怪談だとね」
「本当に多いわよね」
「あんた達の商業科の校舎の屋上もそんな話があるわよ」
 テケテケが車椅子から話してきた。
「夜に行くと白い服の幽霊がいるとかね」
「ううん、じゃあここが駄目だったら次はそこね」
「そこに行くといいわね」
 何気に次に行く場所も決めた二人だった、今のテケテケの話から。
「というか商業科の屋上にもそんな話があるの」
「意外よね」
「グラウンドには金が落ちている、学校には怪談話が転がっている」
 花子さんは南海ホークスの監督だった人の言葉を引用しつつだった。
「そういうものよ」
「そこで鶴岡親分っていうのは」
「何か古いわね」
「何言ってるのよ、鶴岡親分は名将よ」
「確かにね、勝利数一位だし」
「凄い人よね」
 二人も何だかんだで鶴岡のことは知っているのだ、子供の頃のかるたの先生が南海時代からのソフトバンクファンなので教えてもらったのだ。
「戦争中は将校だったそうだし」
「日下部さんみたいだったのね」
「いや、親分は陸軍さんだったから」
 花子さんはそこは違うと話した、日下部は海軍だったからだ。
「しかも機関銃部隊だったから」
「日下部さんは経理将校だったからね」
「中曽根さんとか何処かの教授さんみたいに」
「だから違うわね」
「そこは」
「そうそう、あと親分さんは広島出身だから」
 だからだとだ、ここで花子さんが言うことは。
「お好み焼きはね」
「南海って大阪の球団よね」
「そうよね」
 ここでこう話す二人だった、花子さんの言葉から今度はお好み焼きの話をはじめたのだ。尚まだ部屋の扉は開けられていない。
「大阪と広島でお好み焼きは全く別物だから」
「そこはどうだったのかしら」
「お好み焼きは大阪だね」
 怪人はこちら派だった。
「あれは美味しいけれど広島焼きだよ」
「まああたしはどっちでもいいけれどね」
「私も全国区だし」
「私もね」
 口裂け女達全国区の都市伝説系妖怪達はこうだった。
「別にね」
「いいわよね」
「どっちでもね」
「これが結構揉めるけれどね、大阪と広島で」
「しかもすぐに野球が絡むから」
 阪神と広島だ、尚どっちもお互いは嫌いではない。彼等の敵はあくまで日本国民共通の敵憎むべき読売帝国主義である。この悪辣極まる帝国主義球団こそ全人類が打倒しなければならない存在に他ならない。
「ややこしいのよね」
「黒黄色と赤でね」
「野球は阪神であろう」
 怪人がここでまた言う。
「虎はいい生き物だ」
「ティーゲルね」
 聖花は虎をドイツ語読みで言ってみせた、怪人の故郷の言葉だ。
「ドイツだと」
「うむ、戦車の名前にもなっている」
「あっ、そうなの」
 聖花は軍事には興味がないのでこのことは知らない。軍事マニアの間でティーゲルといえばかなり有名だが。
「格好いいわね」
「もうあの頃にはドイツを離れていたがいい戦車だったと思う」
 怪人は懐かしむ様な声で二人に話した。
「ドイツ人はああしたものを造ることが得意だ」
「日本人はどうなのかしら」
 愛実は怪人に日本の戦車について尋ねた。
「そちらは」
「戦前はそもそも造る気があまりなかったのだろう」
 性能も悪かったがそもそも数が非常に少なかった、帝国陸軍は航空機を集中的に開発製造していたのだ、まるで空軍の様に。 
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