とある星の力を使いし者
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第188話
さっきとは真逆の色の白いワゴン車でグループの隠れアジトに向かう。
依然と愛穂達は眠っていて、運転しているのは下級組織の一人だろうか青年が一人。
それから海原、土御門、麻生が乗っている。
「さて、どうして俺が狙われているのか教えてくれないか?」
四人が寝ている間に話を済ませるつもりなのか、単刀直入に尋ねた。
その質問に二人は困ったような笑みを浮かべる。
「まずは自分達の組織に言い渡された任務について説明した方が良いですね。」
「垣根帝督という男は暗部の組織全部が敵と言っていたな。
まさか、お前達も・・・」
殺気を纏い、警戒する麻生に土御門は笑って言う。
「垣根について知っているのなら話は速いぜい。
俺達の組織に言い渡された任務内容は、キョウやんお前を守れって内容なんだ。」
「俺を?」
「はい、依頼人は不明。
基本的には統括理事会から任務を言い渡されるのですが、今回は統括理事会は関与していないようです。」
「統括理事会でないのなら受ける必要はないはずだ。
どうして俺を助ける?」
「任務について詳細が書かれた書類が届いたんだが、その中にはキョウやんだけでなく後ろで眠っている人達も狙う事も計画に入っていると分かったんだにゃー。
そうなると誰かさんは確実に動くだろう?」
誰かさんとは一方通行の事である。
暗部に身を置き、闇に生きると決め光側にいる打ち止めと会うのは嫌がっているのに、彼女の身に危険が及ぶと知るや否や行動に移す。
「それにあの後、統括理事会からも指令が来た。
今回の騒動は統括理事会は関与していないが、暗部の組織が独自に動くのはまずい。
なので、俺達に正式に依頼が来てこうして動ける訳だ。
どの道、正式に依頼が来てなくても動く予定だったんぜい。」
「お前達は敵でないこと分かった。
話しは戻すが、垣根がどうして俺を狙う?」
「分かりません、直接本人に聞くのが良いでしょう。」
分かった事は土御門達、グループは敵ではないと言う事くらい。
ここからは襲い掛かってくる奴らに聞くのが一番早いだろう。
車で移動する事、三〇分。
その間に愛穂達も目を覚まし、寝ている間に車に移動しているのに驚いていたが麻生と土御門が説明して納得してくれた。
当然、最初に会った土御門が偽物であることなどは話していない。
海原については最初は土御門は説明するつもりはなかったが、ここまで巻き込んだのだから知る権利があると、麻生が簡単に説明した。
無論、魔術師と言う事は教えていない。
魔術師などについて話すのは違うと麻生は判断した。
「それでどこに向かっているのよ?」
「んや、そろそろ来るだろうぜい。」
「だな、お前ら荷物持っていろ。」
制理の質問に土御門と麻生は特に言葉を交わさず、分かったように話す。
海原も分かっているのか黒曜石のナイフを取り出す。
愛穂は警備員の経験、桔梗は裏世界で培った経験でこれから何かが起こると何となく悟り、言われた通りに荷物を手に取る。
それに倣って、制理と打ち止めも荷物を手に取った。
瞬間、乗っていた車が爆発した。
原因は、外から学園都市製の対戦車ミサイルが飛んできたからだ。
車は跡形もなく吹き飛び、轟々と炎が燃えている。
「何とか誤魔化せたか?」
少し離れたビルとビルの間の裏路地で跡形もなく吹き飛んだ車を見ながら土御門は言う。
彼だけでなく路地には運転手の青年も含め、全員無事だ。
麻生の能力で全員を近くの路地に転移させたのだ。
ミサイルが飛んできて、車が破壊された現場には野次馬が集まっている。
「すぐに生きているって気づくだろうな、早く場所を移すそう。」
「ですね、君は戻っていいですよ。」
海原に言われ、青年は走って逃げていく。
どうやらさっきの攻撃を見て完全に怖気ついたのだろう。
「どうして、あの場で攻撃してくるのは分かったの?」
さすがに慣れてきたのか桔梗は特に慌てず聞いてくる。
「下位組織を使っている以上、どこかで必ず見つかる。
あの車を用意した時点で、他の暗部の耳に入っていただろうぜい。」
「この戦いは垣根帝督を倒すのが目的です。
しかし、貴女方を守りながら戦うのはかなり厳しい。
ですので、下位組織は動かさず自分達の足で彼らを追い詰める必要があります。」
「そういうことだ。
さて、どこへ向かうか場所は決まっているのか?」
「もちろんだぜい、それじゃ行こうか。」
土御門を先頭に二〇分ほど歩くと。
麻生は見慣れた通路や住宅地が見えてきた。
(まさか・・・)
嫌な予感がした。
こういう嫌な予感は外れた試しがない。
「着いたぜい、とりあえずここで話を・・・ぶふぁ!?」
話している途中の土御門を全力で横腹を麻生は蹴った。
蹴られた個所を押えながら土御門は涙目になりながら言う。
「な、何するにゃー!」
「何をするかじゃない!
ここは俺と当麻とてめぇが住んでいる寮じゃねぇか!」
見慣れた、というより最近は掃除をしに来るために帰ってくるくらいだが自分が住んでいる寮を指さして麻生は声を荒げて言った。
「いやー。灯台下暗しという立派な策だぜい。」
「他の住民が巻き込まれるぞ、それでもいいのか?」
「大丈夫ですよ、ここには人払いをかけています。」
後ろで海原が笑顔を浮かべて小声で話しかけてくる。
「少しの間だけだ、長く居るつもりはない。」
「・・・・・・ちっ。」
裏の顔の土御門の言葉を聞いて、少し苛立ったように舌打ちをして寮に入って行く。
「やったー!ミサカ、恭介の部屋に入るの初めてなんだ、ってミサカはミサカは恭介より先に部屋を目指してみる!」
「お前、俺の部屋がどこか知らないだろ。」
「おっと、そうだった、ってミサカはミサカは急ブレーキをかけてみる。」
「そう言えば、私も恭介の部屋に入った事ないわね。」
「いい機会だし、入ってみるじゃん?」
「いいんですか!?」
「それを決めるのは俺なんだが。」
「合鍵は持っているんだし、入ってみましょうか。」
前に渡した合鍵を手に持ちながらエレベータのボタンを押す。
自分の意見を無視しされ、部屋を荒らされても困るので彼もついて行く。
その姿を見て、土御門はポツリと呟いた。
「守らないとな。」
「ですね、関係のない方もいらっしゃるようですし。」
彼らも決意を改めてエレベーターに乗る。
階は麻生や上条や土御門のある部屋で停まる。
どうやら話し合いもこの階でするようだ。
(愛穂達に俺の部屋を見せている間に話し合いを終わらせるか。)
既に巻き込んでいるが、これ以上大きくしないように配慮を考えながら自分の部屋のドアノブを掴む。
いつもなら鍵をかけていないが、桔梗がかけるようにきつく言われて以来かけるようにしている。
が、長年の癖でどうしてもドアノブを回してしまう。
すると、鍵は開いていて引っ張るとドアが開いた。
「・・・・・」
もしや、暗部に先回りされたのか?
灯台下暗しと言ったが、絶対ばれない可能性はない。
臨戦態勢を取り、一気にドアを開けると中に素早く乗り込む。
能力で二丁の拳銃を創り出し、中にいるであろう敵に突きつける。
リビングに入った時、隣に気配を感じすぐさま銃口を向ける。
相手も同じように拳銃を持っていて、銃口を向けられていたが。
「一方通行か。」
「ンだ、てめぇか。
暗部の奴らかと勘違いしたじゃねェか。」
「それはこっちのセリフだ、とりあえず。」
「あっ、キョウやん。
先に一方通行や結標とか鍵開けて入って・・・ぶばら!?」
「それをさっさと言え。」
むかついたのでとりあえず土御門を殴った。
「あーっ!こんな所に居た、ってミサカはミサカは突撃しながら抱き着いてみる!」
「ちっ!くっつくんじゃねェ!
離れろォ!」
「大人ぶって、本当は嬉しいんじゃないの?」
「あァ!?
ふざけたこと言ってると額に穴開けるぞ!!」
「照れ隠しね、可愛い所もあるじゃない。」
勝手に姿を消した一方通行に対するお仕置きなのか、抱き着く打ち止めをニヤニヤと笑みを浮かべながらからかう愛穂と桔梗。
「誰、あの人?」
唯一、その事情を知らない制理は麻生に尋ねる。
「俺やお前が愛穂のマンションに来る前に住んでいた居候その一。」
本当に麻生の部屋で話し合いをするつもりなのか、真ん中にある座卓のテーブルを囲うように座る一同。
結標はベットに座りながら作ったコーヒーを口にしながら。
打ち止めは依然と一方通行に抱き着いている。
再開できたのがよほど嬉しかったのだろう。
あとのメンバーは座卓の上に前もって買っていたお菓子を広げている。
「さて、情報を整理すると暗部を私欲に使っているのはスクールのリーダー垣根帝督。
目的はキョウやんの殺害だな。」
「どうしてそこで恭介の殺害なのよ!」
テーブルを強く叩きながら言ったのは制理だ。
対して驚きもせず土御門は冷静に答える。
「理由は分からない。
これから調べる必要がある。
俺達以外の暗部を使って、どうしてそこまでしてキョウやんを殺すのか?」
「それと同業である垣根はどうやって他の暗部を動かしているのも気になるわね。」
結標の疑問ももっともだ。
同業である暗部は目的が重なれば協力する場合もあるが、基本的には不干渉だ。
他所は他所。
たかが一人の人間を、しかも私欲で殺す為に所属以外の暗部を、いや所属する暗部も勝手にしろと言う可能性だってある。
なのに、垣根はグループ以外の暗部を動かしている。
これには確実に能力か何かが関わっている。
それを解けば、必然と敵は垣根だけになる。
「組織は動かせないが、情報収集はできます。
既に手配は回しています。」
「つってもよォ、情報収集とかしなくてもこいつが垣根をぶち殺せばいいんじゃねぇか。
あいつの能力順位は第二位。
ンで、こいつは俺より強い、気に喰わねェが。」
抱き続ける打ち止めに引き離そうと顔を押し退けながら言う。
確かに一方通行の言うとおり。
一方通行の能力順位は第一位。
垣根帝督は第二位。
正面から二人が戦えば、勝つのは自分だと確信している。
能力が制限されていてもだ。
全盛期の一方通行をボコボコにしたのが麻生だ。
逆立ちしても麻生に勝てる要素はないのだが。
「万が一の可能性もある。
情報を集めるのは正しいと思うぞ。
それに愛穂達もいる。
不確定要素を明らかにするのは意味がある。」
「それでこれからどうするの?
ここに居てもいずれはばれるわよね?」
「俺が出る。
奴さんは俺が狙いらしいな。
嫌でも俺に注目が集まるだろう。」
「危険じゃん!
私が行かせると思う!?」
立ち上がり、部屋を出て行こうとする麻生の腕を掴む。
麻生は嫌な顔をせず、ゆっくりと掴んでいる手を解く。
「愛穂、お前達が俺の傍にいると満足に戦えない。」
「で、でも!?」
「安心していいぜい、愛穂先生。
キョウやんの傍にはオレがいるからよ。」
「自分もついて行きます、ここには結標さんと一方通行さんが居ればもしもの時も安全でしょう。」
土御門、海原も立ち上がる。
「安心しろ、今日中には片をつけて帰ってくる。
だから、待っていてくれ。」
愛穂達にしか見せない、優しい笑みを浮かべて麻生は言う。
そんな笑顔を見て止める内容が口にする事ができなくなった。
惚れた男のこんな笑みと言葉を聞いたら止めるなんて選択肢を選べるはずがない。
「分かったじゃん。
けど、約束して。」
「必ず戻ってくるのよ!」
言おうとした事を横から制理に言われてしまう。
続いて桔梗も言う。
「そうよ、ここに居る私達に約束して。
無事に戻ってくるって。」
麻生ならおそらく大丈夫だが、相手が暗部となるとどうしても心配になる。
ついて行きたいが、確実に足手まといになるのは分かっていた。
出来る事と言えば口約束を結ばせる事くらいだ。
「ああ、必ず戻ってくる。」
三人の頭を優しく撫でながら彼は約束する。
部屋を出て、辺りを警戒しながら寮を離れていく。
「薄々だが、相手の狙いは分かっている。」
「聞いても良いですか?」
「俺の能力使用時間切れ。」
「使用時間?」
能力使用時間についての説明を簡単にする。
「どうしてそう思うのですか?」
「『六枚羽』や機動鎧を使って倒せなかったんだ。
普通は引いて策を考えるがそれをせず、断続的に仕掛けてきている。
確実に能力を使用させるようにしてな。」
「それじゃあ、相手は。」
「多分、これからも能力を使用せざるを得ない状況を作ってくる。
愛穂達を狙うもの確実に能力を使わせて、使用時間を減らす為だろうな。」
これなら関係ない愛穂達を狙う理由になる。
気になるのはどうして能力使用時間について知っているのかという点。
知っているのはごく限られているはず。
「残り使用時間は?」
「二〇分ってところだな。
〇時を超えないとリセットされない。」
「お天と様はまだまだ元気だぜい。
耐えきれるか?」
「俺が無策で能力を使うと思うか?」
そう言う彼の手には一本の木製の杖が握られている。
長さは三〇センチほど、それ以外どこにでもあるような杖だ。
「能力を使わなくても勝つ方法は幾らでもある。」
後書き
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