久遠の神話
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第六十八話 集う女神達その三
「フォークも使い」
「成程なあ」
「スパゲティも時代によって変わります」
「面白いな、それはまた」
「そうですね、オリーブオイルを使うことも」
最初はそうしなかったというのだ、そうした話をしながらだった。
聡美はオリーブオイルを見つけそれを買った、この時にこうも言った。
「オリーブは私のものではないですが」
「あんたのものじゃないんだな」
「オリーブはアテナ姉様のものです」
彼女ではなくその女神のものだというのだ。
「はい、そうです」
「オリーブって昔からギリシアにあったんだよな」
「今もオリーブといえばギリシアですが」
若しくはイタリアか、地中海の名産であることは確かだ。
「その頃からでした」
「アテナなあ」
「姉様のことは御存知ですね」
「ギリシア神話の知恵と戦いの女神だよな」
「はい、そうです」
その通りだとだ、聡美は中田の返答に答えた。
「他には技術も司っておられます」
「かなり有名で力の強い女神様だよな」
「非常に素晴らしい方です」
聡美はアテナへの尊敬の感情も込めて中田に彼女のことを話した。
「ギリシアにいた頃からよくしてもらっています」
「いい人なんだな」
「はい」
その通りだというのだ。
「これまで気付きませんでしたが」
「その人の力借りると大きいよな」
「かなり」
「そうだよな、ただな」
「貴方はですね」
「俺はどうしても果たしたいことがあるからな」
前を見た、そのうえでの言葉だ。
「あんたの言うことはな」
「それはですね」
「従わないからな」
「どうしても止められないですか」
「あんたは俺の事情知ってるよな」
「はい」
聡美も中田のその問いに答える。
「申し訳ありませんが」
「流石に神様は騙せないか」
中田は前を見たままだ、そこには達観もあり語るのだった。
「まあそうだろうな」
「どうしてもですね」
「お金な、まだまだ必要なんだよ」
「魔物との戦いで手に入るだけでは足りませんか」
「怪我が酷いんだよ、入院費が尋常じゃなくてな」
「それでなのですか」
「しかもどうやらあんまりにも怪我が酷くてな」
そのせいでだと、中田は苦いそれでいて何とかいつもの物腰でいようと笑みを作ってそして言ったのである。
「意識不明のままで治る見込みもないらしいんだよ、三人共な」
「では」
「戦いに生き残るしかないんだよ」
今度は決意、それを見せて言った。
「もうな」
「そうですか」
「戦わないで助かればそれでいいさ」
中田にしてもだ、それに越したことはないというのだ。
だがそれでもだった、彼の今は。
「戦わないといけないんだよ、絶対に」
「ご家族の為にも」
「あのロシアからの兄ちゃんも家族の為に戦ってるよな」
「その通りです」
「わかるよ、家族っていうのはな」
「どうしてもですね」
「人によるけれど離れられないものなんだよ」
それが家族だというのだ。
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