こんな私(俺)の物語
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閑話 双紫異変Ⅰ
前書き
総合評価900突破!
感謝!
やっと小説二巻までかけたので、閑話。ご都合主義、あります。主に通貨。
目が覚めると、そこは森の中でした。
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ふと、異変を感じて、俺は目が覚めた。
頭に当たる感触が固いのだ。しかも、なんか肌寒い。
目を開けて見てみたら、
鬱蒼と生い茂る木々がある、森の中でした。
・・・・・・何があった!?ここどこだよ!えっ?何?俺拉致でもされたの!?
お、落ち着け!こういう時は素数を数えるんだ!
「0、1、1、2、3、5、8、13、21、って!これはフィボナッチ数列じゃねえか!?」
声が変わっている。低い声に。俺、もしかして夢でも見てたのかな?
「あはははは、笑える」
結局、俺の一人芝居かよ。道化も程々にしろっての。
「あー、なんか馬鹿らしくなってきた。そもそも声が変わっているって、正確には元に戻った、だろうが」
でも、少し悲しいかな。あんだけ頑張って、それが全部夢でしたって。十七年の夢ってのも、長いもんだ。まあ、
「夢なら夢で、楽しかったからいいけど」
死にかけたりしたけど、夢ならいいや。
さてと、まずは現状確認だな。服装は黒いジャージ。靴はブーツ。財布はない。ナイフとかもない。寝てたらそのままの格好で森に放り出された感じだ。ハードゲームにも程がある。ともかく、周りは立派な山々が連なっている。
「下山?いや、頂上に上った方がいいかもしれない。そうじゃなくても、開けた場所に出れればいいか」
そう、結論をつけて、俺は斜面を上り始めた。
「熊とか出て来ねえよな?」
辺りを警戒しながら上へ上っていく。あー、こんなとき、八雲紫だったらスキマでいきたい所までひとっとびだし、そもそも歩いてすらいなさそうだな。
「全く、空を飛ぶ感覚があるなんて、馬鹿らしい。俺が飛べる訳がねえだろ」
「だいたい、スキマなんて開ける訳がない。俺はにんげ・・・んが!?」
ガンッ!
と、音がしたような感じで、俺はおでこを何かにぶつけた。
いってぇぇぇぇええっ!頭蓋骨に響くぜ!
何にぶつかったんですかねぇ!
見てみたら、そこにあったのは、腕一本入るくらいに開いたら、スキマだった。
・・・・・・・・・・・・・・・たっぷり思考、うん。
なんなんだよぉぉぉぉぉ!!!ここどこ!私は誰!あれは夢じゃないのか!?
混乱するよ!落ち着け!こういう時は深呼吸!
すぅーはぁー。
えっと、情報整理。俺は名無しの権兵衛、服装は下着はシャツと普通のパンツ。上下セットの黒いジャージ。靴はブーツ。いまいる場所は、自然豊かな森林。俺が体験した十七年は、夢なのか現実なのかは不明。スキマは殆ど使えないが、精一杯開ければ人一人は通れる、が、幽々子の元へいくことはできなかった。中には、小型のナイフと、財布。スキマは辛うじて使えるが、境界を操る程度の能力は全くといっていいほど使えない。弾幕は張る以前に撃てない。いつも纏っている概念障壁は機能している。この事から、俺の体験した十七年は現実の可能性が高い。
目的は、まず、自分の現在地を把握する。そこから、周辺住民がいたら、話をきき、これからの方針を決める。
ナイフを腰につけて、俺は登山を再開した。
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かなり登った。周りの木々はまだまだ元気だった。途中途中で、食べられそうな木の実はあった。食料問題はある程度解決したが、次は生命的に危機的な情況になっていた。
水、水分がない。人はだいたい一ヶ月は食わずで生きていけるらしいが、水がなければ一週間で死んでもおかしくないらしい。
今はまだ、水分が多いであろう果物でなんとか補っているが、底をつくのは速そうだ。そうなる前に、頂上に立って、周りを見渡すことにしよう。
ガサガサッ
そんな音がしたから、俺は音の方に向いた。そこには熊がいた。ばかにでかい、緑色の熊がいた。全長五メートルはあるであろう巨大な熊だ。俺は怖かった。文字道理俺は今、何も無い。境界を操るなんてたいそれたことはできるわけでもないし、悪魔みたいに腕っぷしが強い訳じゃない。辛うじて残っている境界の名残と、十七年分の頭脳。
それだけだ。だが、逆に言えば、そんなにも残っている。俺は、死にたくねえんだ。
少しずつ後ろに下がる。俺は今、捕食される側、獲物だ。背を向けたら死ぬ。
「グルウアァァァァ!」
大きく吠えて、その大木のような豪腕を振るってきた!だが、その軌道を読んで、俺はジャンプして、腕にしがみつく!そして、遠心力を利用して、盛大にぶっ飛ばされた。
何度も空を飛んだくせに、今回のフライングはマジで恐い。だけど!俺は死にたくない!着地地点に辛うじて開けるスキマでクッションを作り出す。以外と縁を柔らかくすることは出来た。着地成功。
そして俺は一直線にある方向に走り出す。空を飛ばされた時に見えた、人工的な建物。赤を基調として、されど赤すぎない日本特有の建物。鳥居と聞けばわかるだろう。神社だ。
悲鳴を上げる暇すらねえ。ハードモードはまだ続くようだ。
俺を追ってきている。萎えそうな膝に活を入れて再度走り出す。あー恐い。人は極限状態になると一週して冷静になるものなのかねえ。
転生する前17年。転生したであろう後17年。合計三十四年間で、こんなにも全力疾走したことはなかったな。
不思議と走れた。スペックが生前だったら、俺はここまで走れなかったろうに。
タッタッタッタ、
ドドドドドドド、
一人と一匹の追いかけっこは続く。クッソー!誰か助けてくれませんかねえ!
「グオォォォオォ!」
ひどくスローモーションだった。あの腕が、俺を貫いて殺す。死ぬ?俺はこんなところで?イヤだ。絶対にイヤだ!
「うおぉぉぉぉぉ!!」
必死に力を込めて境界の開く。そうして出来たスキマに、振るわれた腕はすっぽり入った。今だ!
「ぶった切れぇぇぇぇ!」
ブツンッ
肉が切れた音。スキマが閉じて、そこに入っていたものを、概念が切断する。
「グオオオオオォォォォォォ・・・」
悲鳴をあげながら森に帰っていくバケモノ熊。なんとか退けたらしい。あんな熊がまだいたとはな・・・・・・。
ヤバッ、今になって震えが。俺は、神社に向かって震える足を動かした。
そして、俺はようやく、神社に着いた。あははは、体力が限界だ。俺は、賽銭箱にもたれ掛かる。
「こんなところで、終わるのかねえ」
苦笑する。ああ、死ぬんだ、俺。それなら、最後に良いことぐらいのしようかねえ。俺は財布を開けて、一枚しかない五百円玉をとりだし、賽銭箱に入れる。そして同時に気を失う。
最後に見たのは、なんだったかな・・・どこかで見た、特徴的な巫女服だった。
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俺は、十七年を思い浮かべていた。初めて転生したとき、初めてスキマに入ったとき、初めて幽々子にあったとき、籃に名前をつけたとき、人に対して能力を使ったとき、銀髪と死闘したとき、負けたとき、鍛えたとき。
ああ、これ、走馬灯なのかもな。俺は死ぬのか?
あははは、ざっけんな。
死んでたまるか。
なんで死ななきゃならねえんだよ。俺はまだまだいきたいんだ。目を開け、体を動かせ。
生きろ。
その一言を基点に、俺の意識は完全に覚醒した。
「うああ!」
変な声を上げながら、俺は起き上がった。周りを見渡す。・・・・・・何故か、建物の中にいるらしい。良く見たら、布団に寝ていたらしい。簡素な布団だが。適当な布を上に被せられただけの、簡素な布団だが。もしかして、ここの神社の人が助けてくれたのか?神頼みもしてみるもんだ。神様はいると思うし。
さてと、いつまでもここに留まる訳にもいかないし、行動しよう。でも、何も言わずに去るってのも失礼だ。
書き置きをしておこう。そう思って、周りを見渡すが、筆記用具がなかった。マジかよ。仕方ない。
俺はスキマをこっそり開き、中からメモ帳と鉛筆を取り出した。端から見れば、ポケットから出したように見えるだろう。これからの事を考えて、移動の邪魔にならないよな、リュックも出しておく。乾パンとか水も入っている。
劣化や腐敗がないこのスキマ保存は役に立つ。にしても、ここにきて初めてスキマを開いた時はなんでリュックとか取り出せなかったのかな?まあいいや、一先ず、十日分の食糧はあった。ありがたい。
「助けてくださり、ありがとうございます、少ないかも知れませんが、お礼です。っと、こんなものか」
一緒に一万円札と缶詰を三種類程置いて、ここから立ち去ろうとしたとき、その声は響いた。
「あら、あんた起きたの?」
・・・誰だ?ああ、その台詞からして、俺を助けてくれた人か?
「ああ、すみません。助けてくださってありが・・・」
振り向きながらそこまで言って、俺は言葉を失った。そこにいたのは、腋の部分がない特徴的な巫女、楽園の素敵な巫女、博麗霊夢だった。
いや、待てよ。そもそも駒王町にも霊夢はいる。でも、何か違う。駒王町の霊夢はどこか少しズレがあったが、目の前の霊夢は、ピッタリしている。座るべき椅子に座っているような。
「・・・とうございます。すみませんが、ここは何処ですか?」
「ここ?ここは博麗神社よ」
「ああ、少し違います。この土地は何処ですか?」
「土地?そういうこと。ここは幻想郷よ」
・・・・・・はい?幻想郷?俺は幻想入りでもしたんですか?忘れ去られでもしたんですか?
「ついでに、あなたは外来人よ」
嗚呼、俺は幻想入りしたんですかい。まあ兎に角、こう言っておこう。
「あの・・・意味が良く分からないのですが?」
「ここはあなたが住んでいた世界とは違う世界。あなたはこの世界に流れ着いた人間なのよ」
やっぱりかい。俺は幻想郷にいるんかい。
「はあ、別の世界というのはわかりましたが、それなら武器を売っている場所とか知りませんか?」
「なんでそんなこと聞くのよ」
「いえ、ここに来るまでに大きな熊にあって殺されかけたので、なんとか逃げ切れましたが、自衛のために武器がほしいな、と、思いまして」
「大きな熊に襲われた?ああ、それは妖怪よ。まあ、売ってあると思う店は紹介するけど、妖怪に立ち向かわない方がいいわ。あなたじゃ死ぬわよ」
「そうですか。ありがとうございます。そういえば、なんで俺を助けようと思ったんですか?」
「久しぶりの賽銭だったから、恩ぐらい返そうと思っただけよ。ところで、あんたの名前は?」
困った。俺の名前は八雲紫だ。だけどそんな名前を言える訳がない。偽名を言っておこう。
・・・・・・偽名が思い付かない。・・・一文字しか変わらないけど、これでいいや。
「ゆうり。幽霊の幽に瑠璃色の璃で幽璃だ」
「そう、私は博麗霊夢。ようこそ、幻想郷へ」
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博麗霊夢との邂逅の後、俺は暫く霊夢にこの幻想郷でのあれこれを教えてもらった。武器はまだ見つかっていないが、霊夢が紹介する店なんて香霖堂ぐらいだろう。
「そういえば、あなたにも能力があるかもしれないわね」
「博麗さんの言っていたその人が持っている固有の力ってやつですね。どうすればわかるんですか?」
「瞑想すると思い浮かぶらしいわ」
東方で、能力の調べ方は瞑想が多いな。まあ、兎に角
「やってみます」
目を瞑って静かにする。すると頭に浮かんできた。こんなに簡単でいいのか。
『■■を■る程度の能力』
なんじゃこりゃ。バグ?恐らく、『境界を操る程度の能力』なのだろうが、なんでかバグってる。このせいかもしれないな。俺の弱体化の主な原因。
「ありました、けど、わかりません」
「わからない?どういうことよ」
「『■■を■る程度の能力』としかわからないんです」
「今までそんなことはなかったから、私にも原因はわからないわ」
原因は俺自身かもしれないがな。にしても、何で『■■を操る程度の能力』ではないんだろう。『操』まで不明になっている。まあいいや。
「それより、早くご飯作ってよ!」
「ハイハイ」
授業料としてご飯をご馳走したら、なつかれました。賽銭とメシの味方だな、おい。
因みに、紫としての料理スキルは健在だった。
少年料理中・・・・・・
「よう、霊夢。珍しくうまそうな匂いがするじゃないか」
皆さんお分かりでしょうが、普通の魔法使い、霧雨魔理沙である。
「ん?お前は誰だ?」
「えっと、博麗さんの知り合いですか?はじめまして、幽璃と言います。博麗さんに、まあ、代金を払っているような者です」
「なるほど、私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ。よろしくな、幽璃」
「よろしくおねがいします。霧雨さん」
「固いぜ。魔理沙でいいぜ」
「じゃあ、魔理沙さんで」
そう言って、俺は料理を再開する。食料の事を聞かれたが、キャンプしていて気がついたらここにいたという設定にして、一緒に食料もあったということにした。
そして、食料の消耗は、魔理沙のお陰で増えたのだった。
「うまいじゃないか!なんで呼んでくれなかったんだよ、霊夢!」
「私が食べる量が減るからよ!」
すごい速度で食べる二人。まあ、幽々子よりは量も速度も下だ。
「おかわりはあんまりないから」
「「(ガァーン)」」
そんなにショックだったか。絶望したような顔しないでくれ。俺の分は別の場所にある。
二人が食べているので、俺は別の場所で食べようと思ったのだが・・・
「俺の分が・・・食われている!?」
誰だ!俺のメシ食ったやつぁ!
ゾクリ
悪寒が走った。何かに見られている。自分の知らない誰かが見ている。監視されているような感覚。しかも、なめ回すように、張り付くように見てくる。
「・・・何処で見ているか知らないが、出来れば姿を見せてくれないか?」
返答はなかった。だが、視線は消えた。
「なんだったんだよ、一体」
気味が悪い。あんな体験は二度とごめんだな。さて、メシメシ。あ、
「誰だぁ!俺の分食ったやつぁ!」
木々に留まっていた鳥たちが、一斉に飛び立ったそうな。
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「あんたって色々片寄ってるわね」
開口一番、そんなことをのたまわれた。幻想郷での基本、つまりは飛行と弾幕である。俺は飛行はあっさりと出来たのだが、弾幕は殆ど張れなかった。まあ、最初よりは進歩したからいいが。
「まあでも、すぐに飛べるようになったのは才能だと思うぜ」
「そんなことはいいですから、当初の予定通りに、博れ・・・じゃなくて霊夢さんの言っていたお店に行きましょうよ」
どうも、霊夢と呼ばされるようになった幽璃です。香霖堂に行く前に、空飛べないと遅いと言われたので、空を飛ぶ特訓をしていました。一時間ぐらいで飛べるようになった。やっぱりすぐ飛べるようになる二次小説オリ主みたいにはなれないな。弾幕は精々十発同時が限界。空は以前も飛んでいたから楽に飛ぶことは出来た。
俺は男だと、強化が上手くなるらしい。霊弾(D)結界(A)強化(S)ってところか。もっとも、そこまで強くできる訳じゃないが。
「じゃっ、行くわよ」
二人は浮かんで飛ぶが、俺は、魔理沙の箒を掴んで、浮かぶだけ。理由は単純、飛べるが遅いんだよ。だから浮かんで箒を掴んで飛ばしてもらう。
「じゃあ、しっかり掴まっていろよ!」
魔理沙の声と共に、俺は空に飛び立った。が、
「(風圧すごい風圧すごい!)」
皮膚が引っ張られそうなくらいの速度で飛んでるよ。まともに喋ることすらできない。結界を張って風圧から身を守る。あっぶねえ。息すらできなくなりそうだ。
しかも結構高度があるな。地面に足つけて戦うことばっかだったからな。飛翔はしたが、飛行はしていなかったらしい。
「よくこんなに早く飛べますね」
「ん?こんなの普通だぜ?」
侮れん。幻想郷侮れん。弾幕ごっこ怖い。俺絶対ピチュる。
「もう少し飛ばすぜ!」
「えっ!ちょっ!ま、うわあぁぁぁぁぁ!」
この後、吐きかけた俺は悪くない。なんで箒にのせてもらわなかったって?チキンな俺が美人にしがみつける訳ないだろ。
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「オエェ、ウエ、ゲホッ」
胃のなかを散々揺さぶられた。胃液出そう。香霖堂には無事着いたが、立てない。気持ち悪い。人生初の乗り物酔いが箒とは。
「ここが香霖堂よ。私たちは帰るから」
ちょっと待てい!帰りは徒歩ですかい!?
やっぱり現代に比べたらボロい店だった。でも、細かいところに手入れが行き届いている。
「すみませ~ん」
「いらっしゃい」
こーりん登場。さて、常識人か変態か、
「僕はこの店の店主の森近霖之助だよ。君は?」
「幽璃。幽霊の幽に瑠璃色の璃と書いてゆうりと言います」
「幽璃君だね。よろしく、で、どうしてこの店に?」
「実は、俺は外来人という存在らしくって、ここに来たときに、熊の妖怪?に襲われて、その後に霊夢さんの神社に着いたんです。そこで霊夢さんに武器を売っている店を聞いたらここを紹介されたので、ここに来ました」
「そうか、霊夢の紹介か。うん。確かに武器はあるから、持ってくるよ。何か注文はあるかい?」
「出来れば、刀をおねがいします」
「わかった」
そう言って、こーりんは店の奥にいった。ガサゴソ聞こえる。
よかった。常識人だった。よくよく考えたら、原作ではまともだったな。
そして何故注文したのが刀かというと、銃なんてこの幻想郷では役には殆どたたないし、至近距離でぶったぎった方がいい。飛び道具は、弾幕がメインなんだよ、この世界。
あ、いまさらながら、俺の通貨使えるかな?(使えます。都合のいいことに)
「とりあえず、こんなのはどうかな?」
そう言われて前に並べられた刀。合計で五本。何故か霊力を感じる。
「妖怪に対抗するのなら、こういう刀がいいと思ってね」
「ありがとうございます!あの、出来れば小太刀も見せてくれませんか?」
「わかった、とってくるよ」
再度奥に行くこーりん。さて、俺は刀を見定めますか。
一本目。長さが足りん。二本目。軽すぎる。三本目。脆そう。四本目。霊的エネルギーが殆ど感じられん。
と、なると、最初から目をつけていた五本目だ。
形は反りのある刀。包帯のような布でグルグル巻きにされている。持ち手のような場所も、鍔もない剥き出しの刃だった。霊的エネルギーもすさまじく、長さと重さもちょうどいい。
ぶっちゃけ、『ノラガミ』の神器の雪器だ。もっとも、意思は無さそうだが。
今の俺の身長は170ぐらいある。この長さがちょうどいい。軽く振り回してみるが、片手で振り回すのにちょうどいい重さ。(素の身体能力も強くなっているから片手でふれる。つまりは今だから片手で振れる。勿論強化なしで)
「決まったのかい?」
「ん?ああ、森近さんでしたか。ええ、これにします。幾らですか?」
「そうだね、初回限定で特別にタダでいいよ!」
「えっ!マジで!よっしゃ!ありがとうございます!」
「・・・そっちが素かい?」
「ああ、すいません。素でいいですか?」
「ああ、いいよ。それと、小太刀持ってきたよ」
「ありがと!でも、タダは俺の気が悪いから一万くらい払うよ」
「(実は8980円なんだけどね)」
言い出せなくなった霖之助。そんなことを露知らず、小太刀の品定めに入る幽璃。
因みに、現実世界では100万はくだらないとか。
ウ~ン。小太刀はどれにしようかな?長さは50㎝ぐらいがちょうどいい。にしても、品揃えいいのに何故繁盛しない。結局、黒い刃渡り40㎝ぐらいのを、一万で買った。(実は7650円)
「お世話になりました!」
「まいど。(やっとまともに払ってくれる人が・・・!)」
内心感動している霖之助。
実は損したと知らず、いい買い物した~って感じで香霖堂から出ていく幽璃。
出たとたん、声をかけられた。
「あら?お買い物は終わり?」
気配がなかった。接近されていると分からなかった。だが、その視線に覚えがあった。博麗神社の台所においておいた自分の分の昼御飯が無くなっていたときに感じた視線。
振り向く。この目で存在を確かめる。そこにいたのは、幻想郷の製作者、八雲紫その人だった。
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正直に言うと、俺は一番会いたくない人・・・いや、存在にあった。まあともかく、動揺を表には出さないようにしよう。
「えっと、すみません。どなたですか?霖之助さんの知り合いですか?」
「あら、確かに知り合いと言えば知り合いね。私は八雲紫。この幻想郷の製作者よ」
「はあ、八雲さんですか。で、そんな凄そうな方が、何故僕のところに来るんですか?」
「お礼を言おうと思ったのよ」
礼?俺なんかしたか?というより、これが初対面なんだがな。俺がスキマを使ったところは誰にも見られていないはずだ。あ、もしかして俺の昼食食べたのこいつか?
「霊夢にご飯をご馳走させてくれたでしょう?」
「はあ、霊夢さんの保護者ですか?」
「そんなものよ」
そういえば、そんな立ち位置だったっけ。
「別に良かったんですけどね。この幻想郷の事を色々教えていただいたので、その代価を払っただけですよ」
これは本音だ。別に餌付けしようとなんて思っていない。
「じゃあ、あなたにお願いがあるのだけれど」
「なんですか?」
「私の友達がね、とんでもない大食いなのよ。その人のためにご飯を作ってくれないかしら?」
・・・・・・幽々子にメシを作れと!?なんでだよ!なんでよりにもよって俺なんだよ!しかも断れる訳ないだろが!
「・・・はい・・・分かりました・・・」
「そう、じゃあ早速友達の元へ向かって貰うわ」
ガバァ
スキマが開いた。うん。別に気持ち悪いとかは思わないな。
「ここを通って」
「いいですけど、その友達とやらに話をつけておいてくださいよ」
「わかってるわ」
俺はスキマを通り抜ける。出口は多分、白玉楼だろうな。
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俺は冥界に着いた。って、
「こっからどうすればいいんだよぉ!」
俺は、頂上が見えない階段の前に放り出された。
「なんでその友達とやらの家の前とかにしなかったんですか!」
紫は意地悪。この階段を登るのか。幸いにも、概念障壁は機能しているから、冥界でも特に何があるということもない。気持ち悪いとかない。
「はあ、とりあえず、この階段を登りますか」
前世では千段階段すら苦労した俺だが、さて、どれだけ行けるかねえ。(頂上まで行けないと意味ないぞ)
それ以外にも、注意するべき点はある。辻斬りだ。
いや、正確には魂魄妖夢さんである。みょんめ・・・・・・。頭がお堅いキャラの印象がある妖夢は、不審者をみると斬りかかってくる可能性がある。そういう二次小説を、俺は結構みた。
人の気配に気を配り、俺は階段を上っていく。なかなか頂上に着かんな、おい。
そして俺は、気付いてはいけないであろうことに気付いた。
魂魄妖夢は実は白玉楼で幽々子のメシを作っているわけではない。精々、庭師兼剣術指南兼お使い程度だ。
その他には、専属の幽霊がやっているらしい。俺、別にいなくてもいいのだ。
「はあ、俺の必要性ゼロじゃん。帰ろう。すぐ帰ろう絶対帰ろうさあ帰ろう」
「ダメよ」
「おわぁぁぁぁ!?」
びっくりしたあ!誰ですか!ああ、こんな「人の驚く姿を見て抱腹絶倒するような存在はあの人しかいませんね。ええそうですね、どうせあの人ですね。そりゃそうですよね。見るからに暇人そうでしたし」←表に出ていることに気付いていない。
「・・・誰が暇人ですって?」
「えっ、声に出てました?」
「ええ、「人の驚く姿を見て抱腹絶倒するような存在はあの人しかいませんね。ええそうですね、どうせあの人ですね。そりゃそうですよね。見るからに暇人そうでしたし」って言ってたわね」
あはははは、俺がとる行動はただひとつ、DO☆GE☆ZAだ。
「大変申し訳ありませんでしたぁぁぁ!」
「いいわよ、その代わり、帰らずに幽々子のところに言ってね?」
「幽々子?誰ですか?」
「私の友達よ」
ひとつ言わせてください。それ、死刑宣告と同じようなものですよ?頭を上げたら、八雲紫は既に消えていた。
「はぁ、気がおもいねぇ」
俺は再び歩き始めた。でも良かった。監視されていたとはおもわなんだよ。
「待ちなさい」
・・・また面倒ですかねぇ。
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目の前にいる人物?ああもう、幻想郷じゃ人で括れん!
目の前にいる人物、おかっぱ白髪、大小の二刀流。人魂。
魂魄妖夢である。背ちっさ!さすが育ち盛りの少女たちの世界!
「あなたは誰ですか?」
剣幕がすごいな。殺る気満々ってか。
「俺は幽璃。幽霊の幽に瑠璃色の璃で幽璃だ」
「そうですか、では、あなたはこの冥界に何をしに来たのですか?」
「八雲紫っつー胡散臭い人?に頼まれてな。ここの幽々子っつー人?にメシ作ってくれって頼まれたんだ。その八雲紫に聞いてねえか?」
「聞いていませんね。まあとにかく、あなたがどんな人物かは、斬ればわかる!」
「まず話をする思考を身につけたらどうだ?ちょっ!待った待った!剣を抜くな!」
「妖怪が鍛えたこの楼観剣に、斬れぬものなど、あんまりない!」
剣を片方、長い方だけ抜く。楼観剣だ。
「話、聞けよ!」
俺も香霖堂で買った刀、名前は雪夜。勝手につけた。霊力を流すと、包帯が取れる、ちょうどいい具合まで。こうして、俺は初めて、真剣勝負するのだった。
「はぁ!」
「くっ!」
振るわれた剣を受け止める。重さは大したことないが、スピードが違いすぎる。何より、剣術のレベルが違う。
「なかなかやりますね。でも、私には遠く及びませんね」
「当たり前だ。俺はついさっき、刀を手にいれたばっかりだ。剣術もやったことなんてこれっぽっちもないよ!」
俺の体験した三十四年間は無駄じゃない。お陰で高速思考ができる。これがないとついてけないよ。
幾度となく剣劇が交わされ、ついに膝を着いた。
妖夢が。
理由は単純。体力切れだ。俺が男で良かったよ。俺はとにかく無駄をなくして持久戦に持ち込んだ。結果、妖夢がさきにねをあげた。
「はぁ、はぁ、俺の、勝ちだ」
「何がですか、そもそも、勝負じゃなかったじゃないですか、全く攻撃しなかったくせに!」
「当たり前だ。俺は相手の得意分野に挑んでやる筋合いはない。俺ができるやり方をやっただけだ。とりあえず、俺に攻撃しないでくれよ」
スペカ使われたら死んでたな。単純な殺陣で良かったよ。
「じゃあ、俺は行くよ、ついでに聞くが、お前さんの名前は?」
「・・・魂魄妖夢」
「そ、じゃ、こんど剣術の指南でもしてくれよ」
それだけ言って、俺は先に足を進めた。
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そんな格好いいこと言っていこうと思ったのだが、
「すみません、道がわからないので案内してください」
魂魄妖夢さんに土下座している俺。この際、プライドなんて、ない。
「・・・決まりませんね・・・」
「言わないでくれ・・・」
残念だ。因みに、雪夜は、納めろと念じて霊力を流すと包帯が巻き付く。
「頼むよ」
「はぁ、仕方ありませんね。(何故こんな人に負けたのでしょうか・・・)」
というわけで、俺は魂魄妖夢と一緒に白玉楼に行くことになりました。
白玉楼とは、文人や書家が死んだときに行くとされている、白玉造りの天上の楼閣らしい。
元は中国の伝説だ。
にしても、
「(八雲紫めぇぇぇ!確かに友達には伝えたのだろう。だが、妖夢にも伝えてろよぉぉぉ!)」
勿論、わざと伝えなかったのである。
「その剣」
「ん?この剣がどうした?」
「随分と凄い霊剣ですね。どこにあったんですか?」
「香霖堂。そこで偶々あった」
「そうですか」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
少し話してまた無言が続く。まあ、無言の方がいいがな。
「着きましたよ」
やっと着いた。そして、俺は、白玉楼の庭をみた。
・・・・・・広っ!桜多っ!うわぁ。
「何て言うか・・・広いですね」
「そうですね」
魂魄が淡白。くだらん。
「こっちに幽々子様がいます」
案内された。やっぱ広いよ、迷いそう。専門高校の移動教室みたいに迷いそう。
「幽々子様。お客さまです」
「入って~」
どこにいても、幽々子はふわふわしてるな。
=======================================================================================
「あなたが幽璃君、ヨロシクね~。私は西行寺幽々子よ~」
知ってるよ。にしても、ふわふわしてるな。いや~幻想郷って不思議だね。この亡霊が白玉楼の経費の99%を占めているとは。食事で。頑張れ。
「早速だけど料理を頼むわ~」
「そもそも、なんで俺なんですか?」
「紫がおいしいって言ってたから~」
・・・・・・スキマババアァァァァァァァァ!貴様かァァァァァァァァ!俺の昼食ゥゥゥゥゥゥ!
「・・・・・・(無言の殺気)」
「早く作ってよ~」
「ああ、すいません。ちょっと考え事していまして。食料はどこですか?」
「こっちです」
案内されて見たのは、山なんて言葉も生ぬるい食材だった。
・・・ふう、
「やってやんよぉぉぉ!」
身体強化も、高速思考も、自分にできる全てをフル活動させて、俺は料理に取りかかった。
少年料理中・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お代わり~」
「自分で盛って下さい!」
速え!幽々子マジパネェ!くっそー!やっぱり亡霊だと感覚が鈍って普通の量じゃ満足できないか!
『亡霊と九尾になつかれやすい程度の能力』
知るかぁ!今は時間を操る程度の能力が欲しいわ!元々料理する幽霊にも手伝ってもらっていたのだが、ジェスチャーで、
「(私たちがいると邪魔そうなので、後はお任せします)」
とのたまいやがった。デジャヴ?俺もそう思ったよ。
だが!俺は負けん!うおおおぉぉぉぉぉ・・・・・・・・・・・
少年熱中・・・・・・・・
燃えた。燃え尽きたよ。真っ白にな。
「美味しかったわ~。ありがとね~」
「いや~、作ったかいがありましたよ~。(死にかけの声で)」
「ここの専属料理師にならない?」
「考えておきますよ。とりあえず、寝させてもらってもいいですかね?」
「ええ、お休みなさい」
そう言って、俺は眠った。そして、俺は光となって消えていったらしい。
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目が覚めた。そして感じたのは、胸の重さ。
・・・・・・八雲紫になっていた。俺は、また夢でも見たのか。そう思ったら、右手に何かを握っていることに気付いた。
包帯に巻かれた剥き出しの刃。雪夜である。
「・・・・・・夢じゃ、なかったのね・・・」
こうして、世にも不思議な幻想入りの第一幕は、終了した。
そして、再始動する、私(俺)の物語。
後書き
いまいち口調がわからなかった。
東方キャラの身長は、十代の成長期が基準で、紫の身長はだいたい十五才ぐらいらしいです。(158㎝ぐらい)
ですが、うちのゆかりんの身長は160ぐらいあります。
原因としては、栄養問題です。
なお、主人公の男性バージョンは、どこぞの住所不定無職と紫を足して割った感じです。金髪紫眼。
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