DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第6章:女の決意・男の勘違い
第15話:人の心と思惑には光と闇が存在する
(ロザリーヒル)
ロザリーSIDE
「私の持ってる情報に、『世界樹の花』の情報があります。この世界樹の花とは、ご遺体さえあれば何年経過してあっても生き返らせる事が出来るアイテムなのです! それを見つけて、シンちゃんの彼女を復活させ、魔族との蟠りを解消しましょう」
ビアンカさんの娘さんであるマリーさんが、とても凄い情報を披露してくれた。
いきなり大勢が部屋に傾れ込んできたので最初は吃驚して動けなかったけど、ウルフさんという青年が最初に声をかけてくれた通り、皆さん良い人ばかりの様で何も心配する必要がありません。
やはりビアンカさんのお知り合いは皆さん善人なのだと思います。
各々自己紹介をしこれまでの事を報告し合ってると、ピサロ様が行った酷い事が色々と報告されました。
本当はとても優しい人なのに……その事を解っていても聞いてるのが辛い時間でした。
でも、マリーさんの情報で多少ですけど心が軽くなった思いです。
「もし……本当にシンシアが生き返るのなら、これ程嬉しい事はない。でも、デスピサロが俺の村を滅ぼした事実は変わらない! やはり、そう簡単に許せは……」
「そんなのしょうがねーだろ。魔族を根絶やしにしようと誕生した伝説の勇者を、倒そうと思いお前の村に攻め込んで、村人が応戦してきたのだから犠牲が出るのは当然だ!」
「な……お、お言葉ですがリュカさん。俺は魔族を根絶やしにしようなんて考えた事もありませんよ!」
「お前がどう思うかじゃなくて、デスピサロ達が何を考えてたかだよ。“魔族(モンスター)は人間に害を成す存在”と思い、忌み嫌ってきたのは事実だろ。だから魔族達も“何時かは人間に滅ぼされるのでは”と考え、その象徴たる勇者を殺そうと必死になったんだ」
「だ、だからと言って村人達を皆殺しにする必要はないでしょう! 目的は俺なのだから、俺だけを狙えば良かったんです!」
「連中も無駄な事はしたくなかっただろうよ……素直にお前を差し出せば、たった一人を殺して平安を得られたのだからね。でも村人達が勝手に抵抗してきて、勝手に死んでいったんだ……」
「やめろ! 父さん達を侮辱する事は許さない……たとえリュカさんでも、絶対に許さないぞ!」
「……剣を納めろ馬鹿者! 僕が言ってるのは、魔族にも人間にも主義主張あった為、諍いが起こったと言う事だ。僕はお前の家族を侮辱してはいない……互いに互いを理解する事なく、殺し合いを止めようとしないお前等を侮辱しているだけだ!」
ビアンカさんの旦那さんが勇者様らしき青年と口論を繰り広げる。
耐えられなくなった勇者様が剣を抜くと、厳しい声でその行為を叱咤する。
彼の迫力は物凄く、私を守る様に立つピサロナイトさん(女性だとは気付きませんでした……)も、思わず後退りをする。
「くっ……」
旦那さんの気迫になのか、言葉の重みになのか……
勇者様は言葉を続けられず悔しそうに剣を納めました。
「魔族の事を理解する気がなく、家族を奪われた怒りを抑えられないのであれば、同じ苦しみを与えれば良い……ほれ、丁度ここに奴の女が居る。最も信頼する部下のピサロナイトも居るのだし、二人を殺してお前が味わった苦しみを与えてやれば良かろう!」
突然私に視線が集まった。
先程まで彼等が危害を加えないと思い込んでいた為、何も身構えていなかったのだけど、ビアンカさんの旦那さんが私を指さし、勇者様に向かって殺す様に提案する。
大きく後退る私、慌てて身構えるピサロナイトさん……
「ふざけるな! 無抵抗の……それもか弱い女性を殺して、俺が満足すると思ってるのか!? 何の意味も成さないし、想像しただけで不快だ馬鹿!」
どうやら私は助かったみたいだ。
勇者様は無抵抗の者に危害を加えるお人ではなかった。
「だからお前の家族も、デスピサロに刃向かわなければ殺されなかったんだよ! “魔族は人間を理由もなく殺すもの”と思ってたから、抵抗し殺された……互いの主義主張が異なるから」
確かにデスピサロ様は人間を滅ぼそうとしている……でもそれは、人間が私利私欲の為に私達エルフや魔族を迫害するから……
「お前……自分の周りをよく見て見ろ。元ホイミスライムが居たり、元妖狐が居たり……お前の彼女はエルフだろ? お前と一緒に行動してきたリューノは、エルフと人間のハーフだぞ。リューラもホビットとのハーフだし……この狭い部屋では、人間・エルフ・魔族・ホビットが生活してたんだ。互いを理解し合えば、憎しみが生まれても許し合える……生きて行けるんだ!」
そうよ……私達はこの部屋で生活してきたのよ!
ピサロ様は未だにビアンカさんを警戒してたけど、共に生活し楽しく生きてこれたのよ!
彼の言ってる事はまさに真理。
「今マリーはお前の持つ憎しみを軽減させる提案をした。全てではないが憎しみの心が減る事に間違いはないだろう……それなのにお前は憎しみを優先させて、デスピサロや魔族を滅ぼそうとするのか? お前がデスピサロを殺したら、彼女はどうなる? ロザリーはお前に何もしてないのに、お前から愛しい人を奪われるんだぞ!」
「そ、それは……その時は彼女が俺を殺せば良い。俺は黙って殺されますよ!」
「本物の馬鹿かお前は!? お前の親や村人……そして身代わりになった恋人は、エルフの少女一人を孤独にする為に死んでいったのか? お前が今生きてると言う事は、お前の為に死んでいった命が無数に存在するという事なんだ。思い残す事が無くなれば死んで構わないなんて言うんじゃない!」
「そうよシンちゃん。きっとシンシアは生き返るから、死ぬなんて言っちゃダメよ」
マリーさんが優しく勇者様を窘める。
流石はビアンカさんの娘さんだわ……聖母の様な心を持っている。
「……本当に、本当にシンシアは生き返るのかな?」
やはりマリーさんの優しい心は伝わったのだろう。
俯き苦しそうに考えながらも、彼女の言葉に一縷の望みを見いだそうとしている。
「う~ん……多分。超レアアイテムだから……断言は出来ないわねぇ」
あら……急に……何だか……アレねぇ?
先程までの聖母の様な感じが失われた気がするわ。
「おいおい……頼りない情報だなぁ。ガセネタじゃねーのか?」
「ガセじゃないわよ、失礼ね! ミントスの東に、高い岩山に囲まれた土地があるの。そこに大きな世界樹の木があって、そのどこかに世界樹の花が咲いてるかもしれないのよ」
「ミントスの東……それってこの地図の×印の場所かな?」
急に和気藹々とした空気になり、リュカさんが懐から古そうな地図を取り出す。
「おお、これってば宝の地図じゃん! どうしたのお父さん……ヒルタンのジジイから脅し取ったの? 得意だもんね」
「人聞き悪いなぁ、そんな事しないよぉ……何だか解らないけど、勝手に押し付けてきたんだよぉ……」
「でもリュカ……この場所、この地図で見ると行けなくない? 断崖絶壁みたいな岩山に囲まれてて、とてもじゃないけど行けそうにないわよ」
「それは大丈夫よお母さん! そつないマリーちゃんは、ちゃ~んと情報を持っておりますんよ」
「あらあら、まあまあ……そつないマリーちゃんねぇ。では教えて、この地点にはどのようにして行くのかしら?」
「この地図で見ると南の方……ここら辺に『リバーサイド』って村があるの。そこに住む人が『気球』って言う空飛ぶ乗り物を開発中なのよ! そいつから譲ってもらえば良いの……きっとお母さんが色仕掛けで迫れば、一発でゲット出来ると思うなぁ私」
(ゴスッ!)
「お前がやれ、そんな事!」
「痛っ! 痛いわよパピィ……マジになって怒らないでよ」
娘さんが旦那さんに叩かれるのを見て、本当に楽しそうに笑うビアンカさん……
私の目の前では父母娘の微笑ましい光景が繰り広げられている。
そうか……ご家族と再会できたのだから、ビアンカさんは行ってしまうのね。
折角お友達になれたのに、もうお別れなんだわ……
ロザリーSIDE END
(ロザリーヒル)
マリーSIDE
痛って~……
可愛い娘を殴るなよ……冗談なんだからさぁ。
お母さんも笑ってないで助けてくれれば良いのにぃ!
「まぁまぁリュカさん、貴方の血が色濃く遺伝した娘の失言なですから、そんなに怒らないであげましょうよ。貴方の血は強すぎるんですよ……息子さんが奇跡な様に!」
不本意な言葉で助け船を出してくれたのはウルフ。
大体その息子だって、最近は血に逆らえなくなってきてるじゃん!
「問題は、その『世界樹の花』はレアアイテムだから、間違いなく手に入るのかどうか…マリーの情報を疑うわけじゃないけれど、そう簡単に手に入らないのがレアアイテムだと思うんです。その問題点を解消する為に、マリーには何か策はあるの?」
ほっほぉ~……流石ウルフ。そんな事にまで意識を巡らせ指摘してくるとは!
「大丈夫よ。もし世界樹の木で世界樹の花を見つけられなかったら、天空の塔を登り天空城まで行って、責任者に直訴すれば良いんですから! 世界を救おうとする勇者様の願いを快く聞き入れてもらえる様、神様に直訴しますから……お父さんが」
「……その神様って……ヤツだろ?」
「えぇヤツでございますよ」
イケメンを崩し短い言葉で尋ねてくるお父さん。
「言っとくけど、僕はヤツに最初に会ったら……殴るよ!」
「ほぉ~……殴りますか!?」
一応神様なのに、この男は殴りますか……そうですか。
「あのリュカ殿……その方は神様なのでしょう? 殴るのは拙いと思うのですが……」
常識人のライアンちゃんが、私達の会話に参加してきた。
ホイミン君はそれを一生懸命止めようとしているが、『神様殴る』のワードに止まらない様子。
「大丈夫よライアン君。リュカは人を説得するのが上手いから、例え瀕死になるまで殴っても、最終的には協力してくれるはずだから」
間髪を入れずフォローするのはお母さん。
夫のフォローを忘れない良妻である。(見習わないとね!)
「だからシン君も元気出してね。きっと……必ず貴方の彼女は生き返るから。私の娘と、夫を信じて希望を持ちましょうね」
旦那同様に他者を惑わす笑顔で青少年を説得するお母様。
先程まで絶望的な表情をしてたのに、一転して明るく元気になった勇者様。
男なんて所詮は股間で物を考えてるのね……
“お母さん×シンちゃん”なんって事にならないかしら?
それを目の当たりにしちゃうお父さんとの修羅場を見てみたいわぁ……
マリーSIDE END
後書き
マリーの「母さんが色仕掛けで迫れば、一発でゲット出来ると思うなぁ」って台詞は、
“一発”と“イッパツ”をかけてます。
意味の解らない子は、そのままのピュアハートで居てね。
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