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久遠の神話

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第六十七話 人相その七

「兵器の手入れも凄いです」
「それもだね」
「これは海軍の友人に聞いたのですが」
「海上自衛隊の艦艇はだね」
「丹念に手入れされ細部までゴミ一つなく」
 そしてだというのだ。
「金ものに錆もないとか」
「そこまでだね」
「トイレも綺麗だそうです」
 最も汚れやすいそこもだというのだ。
「アメリカ軍はそこまでは」
「そうか、整理整頓は出来ている軍だね」
「その点は本当にアメリカ軍は足元にも及びません」
「戦闘ではその整理整頓が生きるね」
「ですから若し自衛隊、日本と戦うとなると」
「勝つにしてもだね」
「苦戦するでしょう」
 スペンサーは冷静にこう答えた、そしてその自衛隊においては。
 地方連絡部は今掃除をしていた、流石に責任者である部長はしていないが自分の机は自分でしていた。
 そして工藤も自分の机は自分で掃除をしていた、ただ部屋全体は若い下士官や士達に事務官達が行っていた。
 それが澄んでからだった、工藤は自分の制服の埃をガムテープで取っていた。そして靴も丹念に磨いていた。
 ソファーに座り靴を磨く彼をだ、向かい側に座る高橋は感心した様に言った。
「いや、いつも思うんですけれど」
「何だ」
「工藤さんいつもアイロンをかけた制服を着ていますよね」
「そうだが」
「それで靴も磨かれていますよね」
 黒い海自の冬用の短靴を靴磨き粉、チューブのそれを付けて丹念に磨いている。それを見ての言葉だ。
「毎日時間があれば」
「入隊してからだ」
 工藤はこう高橋に答える。
「それはな」
「入隊してからですか」
「そうだ、それからだ」
 こう答えるのだ。
「曹候補学生で入隊してからな」
「兵隊さんだった頃からですか」
「毎日靴を磨いて制服や作業服にアイロンをかけていた」
「毎日ですか」
「船の中でも出来る限りしていたしだ」
 工藤はさらに言う。
「特に幹部候補生学校ではだ」
「ああ、江田島の」
「時間があれば制服にアイロンをかけて靴を磨いていた、若し埃一つ皺一つでもあればだ」
「前にお話してましたね」
「幹事付という役職の幹部に再点検を受けていた」
「そこで身に着けたんですね」
「だから今も身だしなみには気をつけている」 
 制服にアイロンをかけ靴を磨いているというのだ。
「そうしている」
「そうですか」
「警察ではここまではしないか」
「ですね、俺も制服とかはアイロンをかけてましたけれど」
 それでもだというのだ。
「自衛官程じゃないです」
「自衛隊はこうしたことには特に五月蝿いからな」
「ですね、けれど幹部でもですね」
 工藤は一等海尉だ、普通の軍で大尉に相当する。
「自分のことは自分でするんですね」
「基本はな」
「厳しいですね、自衛隊は」
「こうしたことにはな」
 現実として厳しいというのだ。
「さっきも言ったが幹部候補生学校では特にだ」
「そこが一番厳しいんですね」
「おそらく全ての自衛隊でだ」
 陸空海の三つの自衛隊の中でもだというのだ。 
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