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久遠の神話

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第六十五話 犠牲にするものその九

 そして自分のコーヒーを飲んでからこう言ったのである。
「では私はです」
「戦われるのですね」
「そうします」
 やはりこう言うだけだった、そして。
 高代は聡美にこの場では最後に言った。
「ではコーヒーを飲み」
「それからですね」
「ここを去らせてもらいます」
「わかりました」
「これを飲めば」
 今度は時間、己の左手の腕時計を見ての言葉だ。
「授業の時間になりますので」
「そうですね、私も」
「大学の講義ですね」
「それがあります」
 聡美も今の人間としての立場は学生だ、だからここでは学生として講義に出なければならないというのだ。
「ですから」
「それで、ですか」
「またお会いしましょう」
 こう話してそしてだった。
 聡美は高代に対しても何も出来なかった、そのことに無力感を感じながら。
 その場を虚しく去った、それから。
 一人で項垂れて喫茶店を出る、だがここで。
 セレネーの声がしてきた、その彼女に応えたのである。
「見ておられたのですね」
『そのつもりはありませんでしたが』
 だがそれでもだというのだ。
『申し訳ありません』
「いえ、いいです」
 聡美もそれはよしとした、だが。
 項垂れたままだ、そのうえでセレネーに言うのである。
「見ての通りです」
『彼等は戦いを止めないですね』
「決意は固い、いえ」
 固いどころではなかった、それは。
「絶対です」
『そうですね』
「神話の頃からですね」
 彼等はそうだったというのだ、その頃から。
「どの方も一度決められたら」
『そのことも見てです』
 セレネーの声も言う。
『私は彼等を選んだのですから』
「力を出し、それをお姉様に知らないうちに差し出し続ける剣士にですね」
『そうです、選びました』
 まさにそうしたというのだ。
『私は』
「そうですね、しかし」
 聡美は俯いているままだがそれでも言った、言葉はまだ死んでいなかった。
「私はそれでもです」
『止めますか』
「彼等も、お姉様も」
 ここで顔を上げた、そのうえでの言葉だった。
「そうしてみせます」
『私もです』 
 セレネーは聡美に対してふとこう言って来た。
『若し貴女の立場なら』
「その時はですか」
『貴女と同じことをしていたでしょう』
「戦いを止めることをですね」
『そうしていました』
 今の聡美の様にだ、そうしていたというのだ。
『私もです』
「そうですか」
『貴女は私のかけがえのない人』
 セレネーも聡美をそう思っていた、アルテミスである彼女を。
『その貴女のことを』
「ではどうして」
『今は私が適えることを望んでいるからです』 
 だからだというのだ。
『ですから』
「私もそれを聞くと」 
 聡美もセレネーの話を聞いて述べた。
「若しお姉様と同じ状況なら」
『その時はですね』
「戦わせていたと思います」 
 剣士達、彼等をだというのだ。 
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