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久遠の神話

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第六十五話 犠牲にするものその五

「貴方達は彼の選択次第で最高の幸せを手に入れられます」
「仮定形でもないか」
「はい、決まっています」
 それによってだというのだ。
「そのことをお話しましたので」
「それでか」
「またお会いしましょう」
 聡美はここまで言って姿を消した、そしてだった。
 後に残った由乃はj広瀬に顔を向けてそのうえで彼に問うた。
「さっきjのやり取りってね」
「闘いみたいだったか」
「一騎打ちみたいだったわね」
 まさにそれだったというのだ。
「アドバイスっていうかね」
「そうかもな」
「あの人ヒロのお友達よね」
「そう言うべきだがな」
「綺麗で優しい感じだけれど」
 だがそれでもだとだ、由乃は広瀬に彼女が感じた聡美のことを話していった。
「何か辛いものもある様な」
「そうした人か」
「そう思うわ」
 聡美の正体には気付いていないがそれでも言うのだった。
「過去に色々あった様な」
「あったのかもな」
 広瀬は聡美がアルテミスであることは隠しそのうえで由乃に言う。
「それでだが」
「ええ、あの人言ってたわよね」
「俺の親父とお袋にか」
 強張った顔になって言うのだった。
「二人で会ってか」
「決めろってね」
「それで俺達のことをか」
 許してもらうということだった、彼は聡美が言ったことを思い出しながら述べていく。
「そうか」
「どう思うかしら、このことは」
「出来る筈がない」
 その顔をさらに強張らせて言う。
「俺は何度も言うが」
「長男だからなのね」
「親父もお袋もいつも言っている」
 彼等自身もだというのだ。
「俺は長男だから家を継げとな」
「そう言ってるのね、ヒロに」
「それに対して由乃はだな」
「ええ、私一人娘だから」
 彼女の家のだというのだ。
「私がこの牧場の跡を継がないといけないのよ」
「そうだな」
「私がそうしてね」
 そしてだというのだ。
「旦那さんを迎えてね」
「考えれみれば古い話だな」
「そうよね、家を継ぐとかね」
「しかし実際にある」
 二人の現実に、というのだ。
「今でもな」
「あるからね、私達以外にも」
「家を継ぐということはな」
「ヒロのお家って妹さんいるじゃない」
「あいつか」
「妹さんが家を継ぐってことは」
「それは無理だ」 
 言葉は短い、だが。
 その短い言葉の中に限りない無念さを入れてだ、こう由乃に言ったのだ。
「あいつは女の子だからな」
「そうよね、私も女の子だけれど」
「一人っ子じゃないからな」
 上に彼がいる、それならばだというのだ。
「俺が上にいるからだ」
「ヒロが跡を継ぐのね」
「そうなる、家を継ぐのは男だ」
 確かに家に女の子しかいない場合はその長女が継がなくてはならない、この場合は婿養子を取ることになる。由乃の家がまさにそれだ。
 しかし広瀬の家は彼が長男で男子は彼だけだ、それではなのだ。 
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