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久遠の神話

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第六十五話 犠牲にするものその二

「よくな」
「そうよね。ただね」
「ただ?」
「背が高くて髪の毛は銀色で目は緑よね」
「そうだ」
 それがアルテミスの容姿だ、広瀬もその通りだと答える。
「アルテミスの外見jはそうした感じだ」
「顔立ちは綺麗で鼻が高いわよね」
「よく知ってるな」
「ええ、具体的に想像出来るから」
 何故想像出来るか、由乃はこう広瀬に答えた。
「文学部の留学生の娘じゃない、私達と同じ学園の」
「銀月聡美というな」
「そう、その娘今ね」
「今、何だ」
「あんたのずっと後ろにいるけれど」
 その広瀬の背中の向こうを見ての言葉だ、そこは緑の牧場で柵と牛舎が見える。そしてその柵のところになのだ。
「ほら、あそこにね」
「あの娘だ」
「そうよね、今さっきこっちに来たみたいよ」
 由乃はその聡美を見ながら話す。青いセーターに白いジーンズという格好である。
「相変わらず綺麗よ」
「そうか、何の用だろうか」
「ちょっと行ってみる?」
 由乃の方から提案する。
「あの娘のところに」
「そうだな、俺もな」
「あんたも?」
「彼女と話がしたい」
 こう言うのだった。
「是非な」
「是非なってまさかと思うけれど」
「浮気はしない、安心してくれ」
「絶対に?」
「ああ、絶対にだ」
 それはしないとだ、広瀬は由乃に顔を向けてそのうえで告げた。その話をしてそうしてであった。
「俺は浮気はしない」
「まあね、あんたはそういうことしないから」
 浮気をする様な者ではない、聡美もそれは頭ではよくわかっている。 
 しかし心では、由乃が言うのはこのことなのだ。
「けれどね」
「不安か」
「ええ、悪いけれどね」
 こう広瀬にかを向けて話す。
「どうしてもね」
「そうか、なら一緒にいてくれるか」
「それがいいかも知れないわね」
 それなら最初から疑う必要もない、それでだった。  
 由乃も頷く、そうしてだった。
 二人で聡美の前に来る、そして。
「こんにちは、はじめましてよね」
「こんにちは」
 二人はそれぞれこう挨拶をした。
「何かヒロと知り合いらしいわね」
「ヒロ?」
「俺の仇名だ」
 広瀬が怪訝な顔になった聡美に話す。
「昔から仲間内ではそう呼ばれている」
「そうだったのですか」
「で、私はね」
 由乃はj微笑んでこう聡美に言う。
「ヒロの彼女なのよ」
「そうなのですか」
 由乃はここで自分の名前を名乗った。そのうえで聡美に対して屈託のない笑顔で告げた。 
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