万華鏡
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第五十話 遂に開催その三
「だから待ってね」
「わかったわ、それじゃあね」
「とりあえず私はこうしてろくろ首作ってるから」
そのろくろ首の人形をだというのだ。
「琴乃ちゃんは何するの?」
「そうね」
琴乃はクラスの中を見回した、見れば今いる面子で色々としている。皆それぞれ服だの人形だの道具だのを作っている。
その中でだ、琴乃はこう言った。
「じゃあ釣竿作ろうかしら」
「人魂吊るすあれね」
「そう、蒟蒻も吊るすのよね」
「あれ冷たいからね」
それを客の手や首筋に当てて驚かせるのだ、文化祭でのお化け屋敷の定番の一つだ。
「蒟蒻も用意するから」
「じゃあそれ作るわ」
釣竿をだというのだ。
「私はね」
「じゃあそっちお願いね」
「ええ、それともうそろそろクラスの中を」
「ええ、全部お化け屋敷にするわ」
文字通りそう変えるというのだ。
「そうするわよ」
「そう、ただ」
「ただ?」
「教室をお化け屋敷に変えたら私達夜はどうするの?」
琴乃が言うのはこのことだった。
「そうなったら」
「その時は空いている教室があるから」
「ああ、旧校舎とかに」
「そこに入ってね」
そこでだというのだ。
「休むから」
「じゃあそこもお掃除して」
「そう、もう今クラスのうち何人かが行ってるから」
「動き早いわね」
「委員長が手配してくれたの」
その働き者の女子のクラス委員がというのだ。
「今日のうちにね」
「委員長相変わらずいい仕事するわね」
「ええ、頼りになるわ」
女の子も言う。
「本当にね」
「問題は男の方だけれど」
「今掃除に行ってるわ」
その旧校舎のだというのだ。
「委員長に送り出されたわ」
「ちょっとは働けっていうのね」
「そう、それでね」
まさにそれでだというのだ。
「送ったから」
「成程ね」
「そうなの、用意がいいでしょ」
「委員長もやる時はやらないとね」
琴乃もそのことは口を尖らせて言う、既にその手には釣竿があって作っている。その手の動きは実に器用なものだ。
それでだ、こう言ったのだった。
「普段あんなに怠けてるから」
「本当にやる時しかやらない人だから」
まさに生粋の怠け者だ、それで委員も行かせたのだ。
だが、だ。琴乃はここでこうも言った。
「けれどね」
「けれどって?」
「よく動いたわね、というか委員長が動かしたわね」
「かなり無理強いしたわ」
「ああ、やっぱりそうなの」
「そう、かなり強く無理を言ってね」
そうして動かしてだったというのだ。
「行かせたから。二日酔いもしていなかったし」
「お酒は強いからね、男の方の委員長」
「そうそう、木村君はね」
これが男の委員長の名前だ。
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