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久遠の神話

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第六十四話 戦いを止める為にその五

「無差別じゃないんだよ」
「そこにですか」
 良心が見られるというのだ、あの加藤にしても。
「モラルと言うのかも知れないけれど」
「あの人はどうすれば」
「また 別の話になる」
 工藤は加藤を剣士としての戦いから降りさせることは今は考えられなかった、それでとりあえず置いてであった。
「今は置いてだ」
「そうですか」
「とにかく全員それぞれのルールなりモラルであってもだ」
 それでもだというのだ。
「良心はある」
「人間が持つべきものがですね」
「彼にしてもな」
「そうなんですね」
「殺すことは考えていないな」
 戦いたいが殺意はないというのだ。
「そこまではな」
「殺人はですね」
「倒すことと殺すことは違う」
 また別だというのだ、この二つは。
「命の重みは違う」
「よく言われることですね」
「例えば俺だ」 
 工藤はここで己のことを話した。
「俺は自衛官だな」
「はい」
「自衛官は人を殺すことが仕事だと言われるが」
「実際は違いますよね」
「人を守ることが仕事だ」
 よく殺すだの言うのは左がかった者達の言うことだ、だがそうしたことを言う者に限って人を殺すこぞなぞ何とも思っていないならず者国家を賛美している。
「本来はな」
「その通りですね」
「そして敵もだ」
 戦う場合の話にもなる。
「倒すことが第一だ」
「戦争で人が死んでもですね」
「命は粗末にしない」
 例え敵の命であってもだというのだ。
「それが俺達だ」
「殺すことが仕事じゃないですね」
「絶対に違う、そしてそれはだ」
「あの人も同じですか」
「世の中人の命についても何とも思わない者もいる」
 サイコ殺人鬼なり何なりだ、そうした輩もいるのが世の中だ。
「そうした輩はどうにもならない」
「殺人鬼とかはですか」
「若し剣士の中に只の殺人鬼なりがいればだ」
「俺達は躊躇なく倒してたよ」 
 高橋も言う。
「そして必要とあらば命を奪っていた」
「そうしていたよ」
「そうしないと危険だからですね」
「そうだ」
 工藤は上城にその通りだと告げた、そしてだった。
 その真一文字なまでに率直な顔でこう彼に言った。
「ではこれからのことはだ」
「色々あるだろうけれどね」
 高橋も工藤と同じ表情で上城に語る。
「五人で戦おう」
「そして戦いを止めよう」
「そうですね、どの人も人間ですから」
「必ず何とか出来る」
「最後まで諦めないでいこう」
 二人はここまで話すと微笑みになった、その微笑みで上城と別れ彼の前から姿を消したのだった。
 上城も部活に向かう、彼等はまだ具体的な解決案は考えつかなかったがそれでも目指すものを決めてはいた。
 スペンサーはこの日領事館で領事にこう言われた。
「今回の大統領選挙は共和党に不利だね」
「そうですね、大統領が交代しそうですね」
「民主党の大統領になれば」
 今現在野党であるこの政党から大統領が出ればというのだ。 
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