| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第六十四話 戦いを止める為にその二

「ですから」
「俺もセレネー女神と同じ状況なら」
「同じことをされていましたかも知れないですね」
「本当にわかりません」
 その辺りは、というのだ。
「全く」
「人は想いを適えたいと願います」
 それが神であってもだ、心が人間ならば。
「ですから」
「セレネー女神もですね」
「このことは私も責められません」 
 とてもだというのだ。
「どうしても」
「そうですね、俺も」
 工藤もこう言った。
「恋愛のことはよくわかりませんが」
「それでもですね」
「想いの強さはわかります」
 それは、というのだ。
「それについては」
「けれど本当に終わらせたいですよ」
 高橋は顔を上げた、そのうえでの言葉だった。
「どう考えても無益ですから」
「神話の頃の罪で永遠に戦うのはな」
 工藤もその彼に応えて言う。
「どう考えてもな」
「俺達そんなに悪いことしたんですかね」
「幾ら天下に許されざる大罪でもだ」
 工藤は腕を組んだ、そして言うことは。
「普通は一度死ねばな」
「それで終わりですよね」
「そう考える、死体を鞭打つことはあってもだ」
 その身体で終わりだというのだ。
「魂を幾度も苛む様なことはな」
「ないですよね」
「それはセレネー女神はわかっていないのか」
「どうなんでしょうか」
「わかっていてもです」
 ここでまた言う大石だった、二人に対して。
「それでもあえてです」
「そうしなければならないですね」
「セレネー女神としては」
「そうだと思います。人は目的の為に他のことが見えなくなることもあります」
 そうしたこともあるというのだ。
「人の心があるならば」
「それも人ですね」
 工藤は真剣な面持ちで大石のその言葉に応えた。
「人は目的に対して一途になりますが」
「しかし一途なあまりです」
 それ故にだというのだ。
「他のことが見えなくなり」
「そしてですね」
「私達の犠牲は目に入らないか、入っていても」
「気にしない」
「そうなりますね」
「特に恋愛のことはそうなのでしょう」
 大石はセレネーを動かし続けているそのことも話した。
「恋は盲目といいますから」
「その言葉が剣士の戦いを作るとか思いませんでしたよ」 
 今度は高橋だった、彼は腕を組んで言った。
「まさかね」
「そうですね、私もそれを聞いてです」
 そしてだというのだ、大石もまた。
「この戦いとは何かをあらためて考えだしています」
「そうですね、俺もその話を聞いて」
「俺もですよ」
 工藤と高橋もだった、剣士としての戦いのことも知って。
 それで二人も考える顔になった、そして言うことは。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧