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八条学園怪異譚

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第五十話 秋に咲く桜その八

「柳道か何処かで」
「美奈子さんから聞きました」
「あの幽霊の人に」
「そうなの、じゃあいいわ」
「人魂さんが出て来るんですよね」
「そう聞いてます」
「そうよ、あそこにいるのは人魂さん達だから」
 その通りだとだ、茉莉也も答える。
「ただ、若しもだけれど」
「桜のところが泉でなくてもですか」
「それでもですね」
「そう、次に行く場所は考えておいてね」
 そのことを話す茉莉也だった、二人に今自分が飲んでいる温かい玄米茶を差し出して飲む様に勧めながら。
「ちゃんとね」
「次、ですか」
「そこですか」
「そう、そろそろ泉に辿り着けると思うけれど」
 どうしてそうなるかというと。
「あんた達学園のスポットはかなり巡ってるからね」
「残り僅かですか」
「少ないんですね、学園の怪談スポットも」
 即ち泉の候補地は、だ。
「だからですか」
「そろそろですか」
「そう、、あと十かそこらね」
 その候補地は、というのだ。
「もっと少ないかも知れないわ」
「そうですか、あと少し」
「まだ見つからないですが」
「だから諦めないでね、もう少しで諦めたら」
 それはとだ、茉莉也は二人に強い声で告げた。
「馬鹿みたいだから」
「あと少しで諦めるなんて駄目ですか」
「最後の最後までしないと」
「そうよ、諦めるならせめて泉を見つけてからよ」
 やり遂げてから諦めろというのだ、茉莉也の今の言葉は矛盾しているが彼女はそれを承知していてそのうえであえて二人に言っているのだ。
「いいわね、つまりはね」
「つまり?」
「つまりっていいますと」
「神主になることを諦めるのなら神主の資格を手に入れてからよ」
 自分の家のことを例えに出しての話だった。
「それからよ」
「えっと、それって」
「どういう意味ですか?」
「そのままよ」
 茉莉也は自分の今の言葉に首を傾げさせる二人に右手を拳にさせて話した。お茶が入った湯飲みは左手にある。
「神主さんになるのは資格を手に入れてもね」
「まだなれないんですか」
「神主さんに」
「資格を手に入れてはじまるから」 
 こう二人に話すのだった。
「神社の神主さんになってね」
「ですか」
「そうなるんですね」
「そうよ、だからいいわね」
「はい、泉を見つけてからですね」
「諦めるとしたら」
「スタートラインに立ってからよ」
 この場合のスタートラインは泉を見つけることだ、そしてレースは泉の中に入りそれで確かめることである。
「わかったわね」
「ですね、じゃあ」
「泉は絶対に探します」
「若し桜が泉でないと」
 それならというのだ。
「劇場ね」
「大学の芸術学部のですね」
「あそこですね」
「そう、あそこに行くといいわ」
 茉莉也が次に勧める場所はそこだった。 
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