八条学園怪異譚
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第五十話 秋に咲く桜その六
「流石にね」
「いい妖怪さんや幽霊さん達しかいられないからね」
この学園ではだ、結界の為に。
「有り難いことに」
「生身の人ならともかく」
「まあ生身の人でも」
流石に、というのだ。
「ディオみたいな人は滅多にいないわよ」
「ええ、確かに」
「漫画のキャラでもね」
実在ではない存在だとしてもだというのだ。
「あそこまで強烈なのはね」
「滅多にいないわよね」
こう話してだ、聖花は愛実にこうも言った。
「あの、そもそもね」
「そもそもって?」
「あの人の漫画のキャラって大抵そうでしょ」
「強烈な個性があるっていうのね」
「そう、ディオだけじゃなくて」
他のキャラの話にも及ぶ、そのシリーズの。
「柱の男だのスタンド使いだの」
「一杯出て来たけれどね、どれもね」
「強烈な個性があるから」
聖花は愛実に話す。
「ポーズだったね」
「あのポーズね、何か昔ジャングルジムの上であの漫画のポーズしてね」
愛実は所謂漫画の物真似を話した。
「そうしたらね」
「危ないわよ、それ」
聖花はその話を聞いてすぐにこう返した。
「バランス悪いから落ちるわよ」
「そう、それで堕ちたらしいのよ」
「やっぱりそうなったのね」
「あの漫画のポーズってね、効果音がつく感じでね」
漫画の演出だ、このシリーズでは常に独特の効果音が出てそれもまた読者に強烈な印象を与えるのである。
「真似する人多いけれど」
「変なところでしたら危険だからね」
「それで落ちたの」
まさに当然の帰結である。
「怪我をしたかどうかはわからないけれど」
「変な遊びし過ぎね」
「妖怪さん達でもね」
八条学園の妖怪達、彼等があのポーズをしてもだというのだ。
「危険よね」
「幽霊さんならともかくね」
「実体ないからね」
彼等なら大丈夫であることは一目瞭然だ、そして。
そうした話をしつつだ、愛実はパスタを食べ終えてからそのうえで聖花に対してこう言った。見れば聖花も食べ終えていた。
ワインも最後の一杯を飲んだ、愛実はそのうえで聖花にこう言うのだ。
「食器とか洗ったらね」
「ええ、どうするの?」
「お風呂入らない?二人で」
こう聖花に提案したのだ。
「ちょっと汗かいたから」
「お風呂?」
「そう、そうしない?」
「今更だけれどお酒飲んで入るのは」
よくないとだ、聖花は言う。二人は何度もそうしてきたから聖花の言葉のキレは悪い。
「止めない?今すぐは」
「そうした方がいいかしら」
「そう、まだね」
「じゃあどうしようかしら」
「二人でワイン二本ずつ飲んだからね」
結構飲んだからだというのだ。
「酔い覚まししましょう」
「じゃあ何するの?お風呂は入るのよね」
「後でね」
このことは絶対だというのだ、しかしその前に。
「お散歩しない?」
「それはどうかっていうのね」
「そう、何処か歩かない?」
「そうね、それじゃあ」
愛実も聖花の言葉に頷こうとした、だがここで。
愛実の携帯が鳴った、そして出ると。
茉莉也だった、茉莉也は愛実だけでなく聖花に言って来た。
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