八条学園怪異譚
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第五十話 秋に咲く桜その五
「いい味よね、やっぱり」
「美味しいわよね」
「聖花ちゃんの腕が確かだからね」
「いや、やっぱり何といってもね」
「何といってもって?」
「イカ墨自体がいいじゃない」
これの味がだというのだ。
「確かにインクみたいだけれど」
「イカ墨ね、確かにこれはね」
「凄いわよね、この味」
「うん、イカ墨はかなり美味しいわ」
「これを最初に食べた人って凄いわね」
スパゲティのソースとした、その人はというのだ。
「トマト、大蒜とも合うし」
「そういうのを文字通り隠して、だしね」
「そう、それがまたいいのよ」
「大切なものを隠し味にしてくれるし、視覚的にも」
「スパゲティにかなり向いてるわ」
聖花は目を輝かせて言い切った。
「最初漫画で見た時にいいって思ったけれど」
「ああ、ジョジョね」
「あの漫画私達が生まれる前から続いてるのよね」
「このスパゲティの時もよ」
二人が生まれる前から続いている作品だ、そのことを考えると相当な長期連載だ。かなり癖の強い漫画であるがそれだけに根強い人気がある。
「丁度柱の男が出て来る時ね」
「あの時も面白かったわね」
「そうよね、かなりね」
「私どのシリーズも好きだけれど」
聖花はスパゲティのおかわりを入れつつ述べる、愛実も一緒に皿に入れている。見れば皿も鍋もオリーブで油が付いたイカ墨がトマトや大蒜を隠してパスタを彩っている。
「第三部とかよかったわ」
「スタンドの時ね」
「あの時も面白かったでしょ」
「ええ、一気に読んだわ」
単行本でそうしたというのだ。
「凄く面白かったから」
「悪役がいいからね、あのシリーズ」
「ディオとかね」
「ディオは確かに悪い奴だけれど」
それでもだとだ、聖花は席に戻ってからも愛実に話す。愛実も彼女の向かい側に座ってそのうえで話に応える。
「私嫌いじゃないのよ」
「私も、とんでもなく悪い奴だけれどね」
「凄く格好よくて、美学っていうか」
「そういうのあるわよね」
「そうよね」
聖花は愛実のその言葉に頷いて応えた。
「ディオにはね」
「人間を止めるぞって言葉とかね」
人の心に残る台詞を数多く残しているキャラだ、そこにも格好良さがあるのだ。
「いいわよね」
「ああいう人実際にいたら怖いけれど」
吸血鬼であるという以上にだ、純粋な悪、しかも美学を持ったカリスマ的な悪人程厄介な存在はそうはいない。
「それもかなりね」
「下手な犯罪者よりもね」
危険だということは二人もわかった。
「いて欲しくないわよね」
「あの漫画のキャラってそういうのが多いけれど」
柱の男達然り連続猟奇殺人鬼然りだ。草花の様に生きたいと言う男が実は殺人鬼ということもこの作品の味の一つだろう。
「特にディオはね」
「強烈だったわね」
「吐き気を催す邪悪っていうけれど」
この漫画から生まれた言葉だという、現実世界にもこの言葉が当てはまる輩が存在しているのも世の中だ。
「それでもね」
「格好いいのよね」
「そうそう、悪人であるが故に」
実際にいれば確かに怖いことこのうえないがだ。
「そういうキャラよね」
「そうそう、まあうちの学校の妖怪さんにはいないけれど」
幽霊にもだ、ディオの様な人間はだ。
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