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インフィニット・ストラトス 一つ目機身(旧題:始祖の巨人は永遠に……)

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前書き
大変お待たせしました!
ジョニーKは生きております!

それではどぞ! 

 
 六歳のころ、彼女(エリザベス)は事故にあった。
 頭を強く打ち三日間意識を失っていた、幸い命に別条はなかったがその後遺症だろうか、彼女の中に第二の人格が目覚めた。その人格は記憶を持っていた。エリザベスのではない他人の記憶。
 克明に描かれた戦争の記憶はまだ幼い彼女には刺激的でいつの日も思い出すたびに思い悩み苦しんだ。

 だが、その記憶は彼女に良いモノも与えた。
 この「彼女」のおかげで彼女は歳不相応な学力と態度、思慮を得ることができ、ミドルスクールでは教師陣からも一目置かれる存在になった。加えて彼女は容姿端麗でIS適性検査でAをたたき出した為、学校のアイドルとして崇められた。
 しかしISのおかげで地位を得た母親と自らの能力を疎ましく思う者にも遭った。その反面、ゴマを擂って寄ってくる輩も多くいた。

 そんな時は記憶に浸って逃避することが多い。
 彗星のような光を残す戦闘機、縦横無尽に動く巨人、形容しがたい形の戦艦、弾け飛ぶ欠片。
 どれも幻想的で非現実的だった。時折第二の人格であるエリスという女性と話をすることもあった。しかしそれは就寝中など彼女が深い眠りに就いている間だけの出来事であったが。

エリザベスはエリスのお蔭でみるみる力を付けていった。ミドルスクールを一年足らずで卒業、ハイスクールに飛び級を果たした。そんな中で彼女に転機が訪れた。普段はアーリントンにいるはずの祖父がエリザベスの住むアトランタまで来たのだ、見知らぬスーツマンとともに。

「おじいちゃん!元気にしてた?いきなりどうしたの?」
「ああ元気にしてるよエリーゼ、元気そうで何よりだ。エリーゼ、誕生日ではないが二つプレゼントがある」

 祖父の脇に控えていたスーツマンが手錠でつなげたアタッシュケースを食卓の上に置き開錠する。
 ケースを開けると武骨な機能一点張りのカギが黒いクッションに沈んでいた。

「これは……?」
「YMS05ザク、このたび陸軍で開発された新型のISが入っているコンテナのカギだ。そして君の専用機となる機体でもある」
「専用、機……?」
「そうだ、ホワイトハウスはエリーゼの実力を認め国家代表候補生に推薦した。君が国家代表候補生になりたいと願うなら政府は支援を惜しまないと約束している。
エリーゼ、私はこのことを強制はしない。むしろ跳ね除けたいとも思っている。君のような若い子が戦場に立つことを快く思う親がいるだろうか。一歩間違えば少年兵ともなる。
エリーゼどうしたい?選択権は君にある」

 国家代表候補生、読んで字のごとく国家代表の候補生だ。いずれはアメリカという巨大な看板を背負うかもしれない職種。下院議員並の地位にもなるし下手をすれば大統領にも迫るものもいる。
 IS適性検査の診断書は一度ホワイトハウスを通りアメリカ国立公文書記録管理局に保管される。
 アメリカ広しといえどもIS適性A級は十数人しかいない。ハイスクールに入った今、彼女にアプローチをかけるのは何も政府だけではない。企業、研究機関、怪しげな組織。挙げればきりがないがそのほとんどを彼女の祖父が跳ね除けてきたからこそ、今の彼女がある。エリザベス自身もそのことを知っているし感謝もしている。
 祖父はエリザベスが候補生になるのをあまり快く思っていない。しかしホワイトハウス発であるため連絡だけはと遠路はるばるやってきた。

 彼女も祖父のことは大好きだし彼の意を汲みたいとも思った。しかし彼女はテレビで見るIS乗りに淡いあこがれを持っていたし、エリスは興味津々だった。
 この話を蹴るという選択肢はエリスによって除外されている。

「おじいちゃん、私、ISに乗りたい。国家代表候補生になる!」

 祖父はハッとした。エリーゼならばこの話を拒否してくれるだろうと、彼女は私を慕っているからとうぬぼれていた。それほどまでに年老いたかと。
 爺心としてはあまり喜べないが、孫の成長が生きているうちに見れたことがなんともうれしい。

 エリザベス自身がそう決めたのならば私も無碍にはしない。
 私は思い浮かべる。この子が鋼鐵を身にまとい、アメリカの大地をかける姿を空想し、新天地に仇為そうとするものを撃破する様を。

「……わかった。だがこれだけは覚えておいてほしい。
 ISというのは強大な力だ。それに溺れないこと。
 お前には帰る家があるということを」

 孫の成長を喜ぶ一方、最愛の孫娘が独り立ちしてさみしいと感じる。
 だが、私はエリザベスに国家代表候補生の事を伝える仕事でこの家に来た。ここからは一軍人としての職務を果たす。

「エリーゼ、国家代表候補生の訓練は軍にて行われる。そのため君は軍に入隊する形となる。
 紹介しよう。彼は今度設立される陸軍対IS特殊任務中隊の中隊長を務めるディビッド・アームストロング陸軍少佐。入隊後君の直属の上官となる」
「初めましてエリザベスさん。ご紹介にあずかりました、ディビッド・アームストロングです。国家代表候補生の話を受けてくれてありがとう。」

 スーツマン改めディビッド・アームストロングは右手を差し出して握手を求める。エリーゼもそれに応えて握手に応じた。

「エリザベス・S・ウェルトです。どうかよろしくお願いします」

 一通りの自己紹介を済ませるとエリザベスの祖父は少佐に目配せをした。

「エリーゼ、このことはお前の両親にも伝えられている。お前の母親はこれを大いに利用して地位を上げるだろう。お前の父親も軍内では地位も高い。だが、親の権力を傘に力を行使してはならない。
 何かあれば助けるが頼りすぎるな。この老いぼれとの約束だ」
「……うん」
「車を待たせている。君の専用機に会いに行こう」
「大佐……。」

 その時エリザベスは祖父の目尻が光ったように見えた。
 国家代表候補生になったことを誇らしく思っていた自分がひどくみじめに思えた。祖父の涙など生まれて初めて見た。祖父はどんな思いでいるのか。この話を拒否したら喜んでもらえたのか。
 ザクが安置されているハンター飛行場に向かう車の中、エリザベスは一人悶々としながら隣に座る祖父の様子をうかがっていた。

 四時間ほど車に揺られてハンター陸軍飛行場についた一行は周囲を厳重に警備されながらある格納庫にやってきた。このように準備万端なところを見るにホワイトハウスは必ず受理すると考えていたのだろう。国家代表候補生というのはかなり名誉的であるし、事実拒否する理由は見当たらない。
 装甲車に武装したヘリも待機している。兵士たちの眼光も鋭く、目線を合わせただけで人を殺せそうだ。

「では、開けます」

 基地の保安担当責任者と基地司令、ザクの開発責任者が同席の下、格納庫の扉が開かれていく。
 すると暗がりに光が差し込み、一つのコンテナが姿を現した。
 一部の兵士たちが格納庫内部を確認し安全が確認されると、エリザベスたちはコンテナに歩みより、少佐の持つアタッシュケースから鍵を取り出し保安担当責任者に渡す。

「いよいよ……」

 はたしてコンテナは開かれ中に坐すのはジパングの秘仏の如く美しいISであった。
 藍色と濃緑色に彩られたその機体はまだ魂が籠っておらず眼窩に光はない。静かに坐すその姿は自身の主を待っているようにも見える。

「起動させる前にザクについて説明しておきます。
 機体名YMS-05ザク、この機体はこれまでのISとは異なり全面装甲(フルスキン)を施し、世界初の試みであります。フルスキン化したことにより重量は増加してしまったが、防御力は絶対であり、かつ他人からの不埒な目をそらすこともでき、乙女の柔肌をさらすことはありません。
 またこの機体はアップデートをすることができ、現在開発中。
 現在この世界で流通している歩兵用銃火器等を使用することができますが、新規で火器を開発。SOPMODシステムを応用し拡張性のあるものであります。
 加えてこの機体はランドウォーリア計画の一環として開発され、現在も男性でも使用可能な機体を開発中であります。
 説明は以上になります。

 エリザベス嬢、ザクに触れて起動、最適化を行ってください」

 作業員たちがコンテナからザクを引っ張り出し、その全容が明らかになる。
 私は開発責任者の言葉にうなずき、私の愛機となるザクに歩み寄りその武骨な手に触れた。

 瞬間、多量の情報が頭に流れてきた。
 
機体情報を初期化
新規搭乗者を確認
初期設定を開始
諸神経回路接続を確認
新規搭乗者情報を登録
諸身体情報と適応
機体の最適化を開始 しばらくお待ちください
機体情報を更新開始 しばらくお待ちください

 今まで触れたことの無い『生の情報』が流入してきて気絶しそうになるが、ギリギリのところでつなぎ留める。
 機体情報がどんどん更新されバーが100%に近づいていき、間もなく更新が完了した。

「機体の名前を呼んでみてくれ」

 すぐ脇で様子を見ていた技術者がエリザベスに短く発した。
 彼女は頷き朱の差した唇を開く。

「ザク……、私と……、私と一緒に行こう……!」

 その時、格納庫から一際強く優しい光が発せられた……。 
 

 
後書き
登場人物の名前、主人公しか決めてないけどいいよね?
おじいちゃんの名前とかその他モブの名前はいらないよね? 
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