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久遠の神話

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第六十二話 十二時の決戦その七

 乱戦に入った、皆それぞれの力を出す。
 炎が舞い水の柱が次々と起こる、木の葉が無数の刃となり荒れ狂う。
 光が瞬き魔が覆う、大地が裂け重力も金も炸裂する。
 風が刃になり雷が飛ぶ。熱に闇も。
 その中で中田は彼を見た、そして。
 その正面に来てそのうえで言った。
「じゃあな」
「今からですね」
「手加減は出来ないけれどな」
 彼と上城の実力を考えればだった、そうすれば中田自身がやられる。
 だがそれでもだと、彼はこう言うのだ。
「死なせはしないからな」
「僕をですか」
「出来る限りになるけれどな」
 だがそれでもだというのだ。
「ある程度は安心してくれよ」
「僕は貴方を止めます」
 上城はその中田にこう返した。
「そうしますので」
「そうか」
「はい、それでなんですけれど」
「ああ、じゃあな」
 二人で話す、そして。
 同時に構えに入った、中田は二刀を持っている。
 上城は一刀だ、お互いの構えから。
 それぞれの力を剣に宿らせ突進し合う、それから。
 剣と剣をぶつかり合わせた、すると。
 炎と水がぶつかり合い凄まじい蒸気が起こった、それは剣と剣が打ち合う度に起こりその場を飾っていた。
 その中で中田はこう上城に言った。
「腕を上げたんだな」
「戦ってきましたから」
 上城も中田に返す。
「ですから」
「戦いたくなくてもな」
「怪物達はいいですが」
 中田の右の突きを剣で横に払う、そして言った。
「人と戦うことはどうしても」
「嫌だよな」
「今もです」
 決意している、しかしその決意は堪えているものだ。 
 それで彼はこう言ったのである。
「こうして中田さんと闘うことも」
「これは試合じゃないからな」
「剣道は人を生かすものですよね」
「そうだよ」
 中田もそうだと返す。
「俺だってそうだと思ってるさ」
「自分の心の弱さを打って」
「そうするものなんだよ、けれどな」
「それでもですね」
「俺は生き残るさ」
 絶対にだというのだ。
「何があってもな」
「そうですか、じゃあ」
「俺を止めたいのならそうしてくれよ」
 こう答えそしてだった。
 今度は左の突きを出した、その時に。
 上城はその剣から水を思いきり出した、それで巨大な水の柱として。
 その左の剣を止めるだけでなく中田も吹き飛ばそうとする、水圧によって。
 しかしここで中田も反撃する、その炎を消された右の剣から。
 あらためて炎を出す、そこに新たに左の剣を添えて二刀で向かう、力と力のぶつかり合いになった。
 距離は数メートルに開いていた、力を出すことが遅れた中田が押されたからだ。だが今では両者は拮抗している。
 その力を出しながら、中田は言った。
「本当に強くなったよな」
「それだけですか」
「ああ、君は強いよ」
 間違いなくそうだというのだ。
「これまで以上にな。けれどな」
「それでもですか」
「俺だって強くなってるんだよ」
 彼もまた然りだというのだ。
「このことは言っておくな」
「では今は」
「九割ってところだな」
 中田は力を出しながら言う、炎の帯が水の帯とぶつかり続け拮抗したままだ。 
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