万華鏡
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第四十九話 準備期間の朝その二
「それですと」
「ああ、金田さんね」
「はい、そんな感じですけれど」
「あの人準備体操は忘れなかったっていうわね」
「身体の事前の調整と後のケアは忘れなかったって聞いてます」
「いいことじゃない、特にお酒飲んでそれが残ってると危ぶないから」
部長もその一年の娘に頷きながら言う。
「シャワーを浴びる時もしっかりとね」
「お酒を抜くんですか」
「そうして」
「いいのはまず冷水を頭から浴びて」
最初にだ、そうしろというのだ。
「それからよ」
「熱いシャワーですね」
「それを浴びるんですね」
「そうよ、それを代わりばんこにすればね」
それでだ、酒は抜けるというのだ。
「とにかく、まずはお酒を抜いてね」
「お風呂ありましたよね」
一年の一人が右手を挙げて部長に尋ねる。
「それも」
「お風呂?」
「はい、この学園には結構」
「あるわよ。女子寮のもあるし」
まずはここだった。
「そこ使えたかしら」
「後で洗えばね」
宇野先輩がここでこう言う。
「寮の先生許してくれるわよ。ただね」
「他の部も使うわよね」
「そう、込むかもね」
それでもいいのなら、という条件だった。
「各運動部のシャワールームもあるからシャワーなら込まないわよ」
「ううん、どうする?」
「それじゃあ」
一年生達は宇野先輩の話に顔を見合わせて話をした。
「お風呂の方がお酒は抜けるけれど」
「シャワーの方が空いてるっていうから」
「どっちにかにするかってのはね」
「難しいわよね」
「ああ、そういえばね」
ここでまた言う部長だった、何かを思い出した顔である。
「学園のすぐ近くに八条温泉あるでしょ」
「あっ、スーパー銭湯ですね」
「八条グループの」
「あそこ朝もやってるわよ」
深夜はしていないが朝は、というのだ。
「もう開いてるんじゃないかしら」
「じゃああそこで、ですか」
「お酒を」
「あそこサウナもあるからいいわよね」
酒を抜くには、というのだ。二日酔いを。
「お酒飲んですぐに入ったら危ないけれどね」
「二日酔いならですか」
「まだ」
「そう、私はシャワーで大丈夫だけれど」
部長の場合は、だ。部長自身の言葉である。
「あんた達は行って来たらいいわ」
「わかりました、それじゃあ」
「ちょっと今から」
一年生の何人か、特に二日酔いの強い面々はそこで酒を抜くことにした、そして琴乃達はというと。
シャワールームに向かった、五人は然程二日酔いが酷くなかったのだ。
それで冷水から熱い湯を浴びて髪も身体も洗ってすっきりとする、琴乃は髪の毛と身体を拭いてジャージを着てから先に出てドライヤーで髪の毛を乾かしている美優に尋ねた。
「ドライヤー持って来てたの」
「ああ、そうなんだよ」
ドライヤーを使いながらだ、美優は琴乃の問いに答えた。
「家からさ」
「用意がいいわね」
「琴乃ちゃんも使うかい?」
「あっ、私はいいわ」
二日酔いが終わったすっきりとした顔で答える。
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