鈴を鳴らす水賊頭
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水賊頭、戸惑う
前書き
戦闘は三人称、日常は一人称が多くなると思います。(あと、書きにくいので一話目のような書き方は、今後滅多に使いません)
ちなみに一話で主人公が言っていたように、主人公の見た目、声共に『7』の甘寧です。
あと、序盤は甲刀、途中から鎖分銅がメインになって行きます。
それではどうぞ。
「って、飛び出したはいいけど右も左もわかんねぇ!!」
俺は頭を抱えてぐるぐる回った。 ……他の奴に道でも聞いとくんだったぜ…。
とりあえずその場に腰をおろし、アイテムストレージとやらを見てみると、そこにはさっきまで無かった筈の、初期甘寧兄貴の武器・甲刀と、6Empiresからの武器・環分銅が入っていた。
ま、とりあえずなれる為に試してみるか。
「まずは甲刀からだな!」
個人的には鎖分銅が好きだが、甲刀だって嫌いではない。
「ブルオオウ!」
「お、良いタイミングだぜ」
俺は蒼イノシシの突進を避けると、豪快に甲刀を振り降ろして斬り付けた。
「ブギィイ!?」
「ちっ! ならもう一発だぁ!!」
一発で死ななかった蒼イノシシに、振り下ろした甲刀を振り上げて切り裂く。そこでイノシシが一瞬硬直し、やがてガラス片の様になって砕け散った。
「はっはぁ! 俺の勝ちだぜ!」
俺は両拳を握ってガッツポーズをした。やっぱり倒せたら嬉しいもんだ。
「……あんた……ソードスキルも無しに、たったニ撃って……!」
「ア?」
聞こえた声に振り向くと、そこには線の細い男が立っていた。何だか驚愕の表情をしてやがる。
「何で驚いてんだ? 別にこいつぁ強かねぇだろ?」
「……確かに、そいつはスライムみたいな立ち位置のMobだ。けど、ソードスキル無しのニ撃で倒すのは……少なくとも、今は無理の筈だぞ?」
「んな事言われてもよォ……」
いきなり最初でマズったらしい。思い返してみりゃ、この世界はゲームでしかも今は超序盤。だから最初のモンスターだって、単なる攻撃じゃ倒すのに時間がかかる筈だ。それを、さっきこいつが言ったソードスキルとやらをつかわずに、ニ撃で倒したとなると――――
「俺の腕っつーよりも、こいつのおかげって言った方がいいぜ? 攻撃力めっちゃ高いからな」
「そう……なのか……」
まだ訝しんだ表情だったが、とりあえずある程度誤魔化す事には成功したみたいだ。丁度いいと、俺はこいつに聞きたい事を聞くことにした。自分の事は誤魔化しておいた癖に、そっちは聞きたい事聞くのかよ、とかなりそうだが。
「なぁ、一つ聞いていいか?」
「……! なんだ?」
「実は俺、このゲーム初めてでよぉ……はっきり言うと迷っちまったんだ」
「あ、あんたニュービーなのか?」
「へぇ、初心者の事ぁニュービーっつうんだな……ああそうだ、バリバリの初心者だぜ」
「マジかよ……じゃあ、あんた右も左も何にも分からないのに出てきて、しかも強い武器を頼りにモンスターを相手してたって言うのか?」
「ま、そうなるな!」
始め感じた警戒が、何故か少し薄れていくのを感じながら、俺は質問を続ける。
「んでよ、村だか街だかしらねぇが、とにかく次の場所はどっちか教えてほしいんだけどよ……どの方角に行きゃあいい?」
「……あっちだ。街の名前は《ホルンカ》―――」
「お、ありがとな! ……そんじゃあな!」
方角さえ分かればこっちのもの、俺は男がさした方向に俺は全速力で走りだす。風を切るような感覚を受け、改めて兄貴の強さを実感した。
「いっくぜぇぇえ!!」
「……は、速ぇ……本当にニュービーかよ……」
・
・
・
・
・
「キシャアア!!」
「邪魔だあぁっ!!」
「ジェアアッ!?」
「オラオラオラァ!!」
俺は突っ走りながら剣を振り回す……無双で言うダッシュ攻撃で、モンスター共を蹴散らしていく。やってみて分かった事だが、こっちがある程度離れりゃ、向こうも追ってはこなくなる。
それに、一撃当てて倒せなくとも怯んだり気絶したりはする様で、その隙にそばを通り抜ける事が出来た。しかしこれを行う度に、何故か甲刀が赤い焔を纏うのだが、今は気にせず走り続けた。
「お、アレがポルカってとこだな!」
やっと街が見えてきてホッとする。サッサと入っ一息つきてぇもんだ。
だが、そんな上機嫌な俺の耳に、煩わしい音が聞こえてくる。それは人の立てる足音じゃない事は、同時に聞こえる唸り声で検討が付いていた。
「ちっ……俺ぁさっさと街に行きてぇってのに……!!」
俺が文句垂れると同時に、狼の様なモンスターが数匹現れた。俺は先手必勝とばかりに一番先に現れた狼に、三連続で甲刀を斬りつけ、最後に四つ目で切り裂いた。
「オラどうだ!」
「キャウゥウン……」
犬みてねぇな声を無視して、次の狼に斬りかかる。と、不意に飛んできた別の狼を蹴っ飛ばし、邪魔すんじゃねぇとブッさして放り投げた。
「ギャウ!?」
「ギャン!?」
「ガウウゥ!」
「はっ、三匹並びやがったな!」
待ってましたと言わんばかりに俺は甲刀を振りかぶり、剣を左右に振り回しながら前方にダッシュする……無双でいうC1攻撃だ。走りながら振っていたのとはまた違う感触の焔を纏った甲刀に、四回薙ぎ払らわれた狼共は悲鳴と共に砕け散った。
「はっ! どうよ!」
俺はすっかり兄貴になった気分で(つっても姿も声も兄貴と同じだが)甲刀を担いで顎をしゃくる。
「さーて……そんじゃ、街に入るとするか!」
大股で歩きながら、俺は名前をよく覚えていない次の街へと入って行った。
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