| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

パンデミック

作者:マチェテ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三十八話「暴走」

ーーー【エクスカリバー本部・第2装甲壁内】


「クッソ!どんどん増えてやがる!」

「第1装甲壁の方は大丈夫なのかよ!?」


第2装甲壁内の感染者の数は、時間が経つごとに増えていた。
もはや、第1装甲壁の防衛は絶望的だった。

戦い続ける兵士達の顔には、既に疲労の色が見えている。戦える兵士の数も少なくなってきた。


それでも、兵士達は戦い続ける。



人類の存亡は、自分達の手に託されたのだから…………
















「おいおい……まるで、地獄じゃないか………」


激しい攻防の中、ソレンスは返り血を浴びたまま茫然と装甲壁内を見回す。

「オルテガ……ユニ……あいつら、生きてるんだろうな?……クソ!今は考えるな!
とにかく、今は自分に出来る最善を尽くそう!今はそれしかない!」

自分の中の迷いを振り切り、ソレンスはコンバットナイフを構え直す。


「…………………ん?」

ふと、目の端に一人の兵士が見えた。その兵士は、血の海の中で倒れていた。
その兵士に、ソレンスは見覚えがあった。

しかもその兵士は、ソレンスが尊敬する人物の一人だった。









「………………………ブランクさん?」



おいおい、嘘だろ?

なんでこの人が?



周りには、兵士も感染者もいない。ソレンスは急いで倒れているブランクのもとに駆け寄った。




「なんで……こんなことになって……感染者も突然変異種も蹴散らした人が、なんで……」

ブランクの状態は、誰が見ても最悪だった。

心臓が無くなっていた。無理矢理抉り出されたような痕が残っている。心臓があったと思われる
箇所は、ぽっかりと穴が空いており、その下の血塗れの地面が見えた。
抉り出されたことを証明するように、折れた胸骨や胸筋の一部が露出していた。

「クソ!応急処置をしたってこれじゃ……!」

いくら適合者でも、心臓が無い状態で蘇生なんて出来るはずがない!



また、俺は失ったのか?

また、俺は救うことができなかったのか?


ソレンスは下を向いて、自分の無力を嘆いた………

































………………………………なんだ?


……………ここは、どこだ?



………随分、暗いな………夜か?


何も見えない………今は何時だ?

俺は、何をしていたんだ?



そうだ……確か、本部の防衛に…………



いや、待て………確か、あの時は昼間だったはずだ………






じゃあ、ここは一体、どこだ…………?




………………そうだ……フィリップ………


俺は、あいつに…………



クソ……なんでだ……フィリップ……なんでこんなことに…………












…………………違ウ。



…………あいつハ、フィリップじゃナイ。


…………………アイつは、ホワイトアウト事件デ死んダ。







……オマエハ、ダレダ?




……………………ソウカ、敵ダ。



………………………





………………………………………













…………………………………………………………殺ス。
















ソレンスは目を見開き、思わず後ずさった。

心臓を失ったブランクが、仰向けの状態からゆっくりと起き上がった。
普通なら、ソレンスはブランクを心配して声をかけただろう。

しかし、ソレンスはブランクに声をかけず後ずさった。
いや、声をかけられなかった。


開かれたブランクの眼は、明らかに普段のブランクの眼ではない。

表すとすれば…………視線で相手を殺せる、"化け物"の眼だった。


「……ブランク、さん?」

恐る恐る、ソレンスは声をかけた。

「………………………………………………」

返事はなかった。


すると、ブランクの傷痕に異変が訪れた。
傷口から、血とは違う黒い液体が溢れ出してきた。

黒い液体は少しずつ硬化し、傷口を埋め尽くしていく。
胸に空けられた傷口は、硬化した黒い液体で塞がれた。

グチャグチャ。ゴキ。ゴキゴキ。

そんな音が、ブランクの体内から響く。


血走った赤黒い眼で、ブランクはスコーピオが向かった方向を睨む。



「……………………殺す」 
 

 
後書き
ご感想お待ちしています♪ 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧