パンデミック
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第三十七話「一つの終わり」
ーーー本部防衛作戦から3時間25分
ーーー【エクスカリバー本部・第2装甲壁内】
感染者と突然変異種が第2装甲壁内に侵入したが、未だに兵士の損害は少ない。
その一番の要因は………人外の力を持った兵士・ブランクの活躍によるものだった。
「チッ……さすがに数が多いな………邪魔だ!」
正面から来た突然変異種の首に、回し蹴りを食らわせた。
突然変異種の顔が骨格ごと大きく歪み、目玉と顎関節の破片が血とともに飛び散った。
突然変異種の死骸の足を掴み、武器のように振り回した。
巻き込まれた感染者が、次々と骨を折られ、絶命していく。
「おおおおおぉぉぉぉらぁぁぁぁぁ!!」
振り回した勢いを利用して、思い切り死骸をぶん投げた。
感染者が複数巻き添えを食らう。投げられた突然変異種は、装甲壁にぶち当たってバラバラに散った。
「(クソ……第1装甲壁内の兵士達の援護をしなければ……)」
内心、ブランクは焦っていた。
第2装甲壁内は、まだ侵入されたばかりだ。対処はまだ出来る。
しかし、それより深刻なのは第1装甲壁の方だ。
第1装甲壁内への侵入を許してから、既に3時間以上経っている。その間に、どれほどの化け物共が
入り込んだのだろうか。急いで第1装甲壁内に行かなければ………!
「また会ったな……ブランク」
第1装甲壁の内側のゲート入口に、その人物は立っていた。
「………………フィリップ」
二人の適合者が、再び対峙した。
ブランクは、スコーピオのもとにゆっくりと歩み寄っていく。
「……………本当に……また会ったな、フィリップ……」
「今の呼び名は"スコーピオ"だよ。コードネームだがな」
「コードネーム、ということは……何かしらの組織に所属しているのか?」
「ああ。その組織は、俺が立ち上げた」
「"レアヴロード"…………言葉の意味は、分かるか?」
「…………革命、か」
「そう……ゲール語で"革命"………ハハッ、俺は気に入っているんだ、この組織の名前」
革命、だと?
感染者や、突然変異種や、生物兵器を利用して………
俺の仲間を散々殺し回って………
「……正気なのか?」
「何がだ?」
「この犠牲が………この惨状が………お前の言う革命なのか?」
その瞬間、スコーピオは………口が裂ける勢いで歪んだ笑みを浮かべた。
「あぁ、革命の一部だ。…………お前はこう考えたことはないか?……この世界は悲しすぎる。
コープスウイルスが発生してから、人間はただ奪われ続けるだけ……我々は、いつまでこの悲しみを
続けなければならないのか……だったらいっそのこと、全てをリセットして、この世界を作り直す。
俺達、適合者には"革命"を起こす義務があるんだよ、ブランク。この世界の現状維持だけでは、いずれ
潰れるだけだ」
「だからって、志を共にした兵士達を殺していい理屈にはならない……!」
「その"革命"とやらのために、一体どれだけの命を捨てた……!」
ブランクは静かに、しかし明確な怒りをスコーピオに向ける。
その様子を見て、スコーピオはとても残念そうな表情を浮かべた。
「やはり、理解してくれないか……まぁいいか」
「お前と遊んでやりたいが、俺も何かと忙しい。そこをどいてくれ」
ほんの一瞬だった。
スコーピオはブランクの懐まで接近し…………心臓を素手で刺し貫いた。
「ゴブッ……フィリ………ップ………………お……前」
大量に血を吐き出し、膝から崩れ落ちた。
「残念だよ、ブランク。………本当に残念だ」
スコーピオは、ブランクの潰れた心臓を引き摺り出した。
その瞬間、ブランクの意識は暗闇に消えた…………
後書き
補足情報
エクスカリバー側とレアヴロード側の、突然変異種の呼び方の違い
エクスカリバー側が、突然変異種を"突然変異種"と呼ぶのは、単純
に"ハンター"というレアヴロード側の呼び方を知らないからです。
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