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MS Operative Theory

作者:ユリス
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次期主力機選定トライアル②

——主力MS選定と、局地戦用MSトライアル——

 前述のようにYMS-05(試験型ザクⅠ)とEMS-04(ヅダ)やYMS-14(ゲルググ)と YMS-15(ギャン)、F90(ガンダムF90)とMSA-120など、主力MSとして採用、または主力MS開発を視野に入れたトライアルは数多く行われている。

このように、主力MSのトライアルが実施されていることに対し、局地戦用MSの競争試作の例はほとんどない。これはジオン公国において、陸戦用MSとしてMS-07B(グフ)とMS-09(ドム)が同時に採用されていたことや、複数のタイプの水陸両用MSが投入されていたことなどからも理解できる。

この背景には、汎用型の主力MSを改修することで局地戦用MSを開発、または試作機とする傾向があったことが挙げられる。更に、トライアルを行うだけの時間的あるいは資金的余裕がなく、開発が終了すると同時に戦線に投入されたことなどもその理由と考えられる。



——異なる機動兵器分類トライアルと、MS同士のトライアル——

 宇宙世紀の機動兵器に関するトライアルは、MS黎明期以前に行われた機動兵器の種別における競争試作と、次期主力MSやその開発技術に関するものに大別できる。前者は一年戦争以前、ミノフスキー粒子散布環境下に対応した兵器に対するトライアルで、MSの開発以降、次第に減少していった。

その後、次期主力MSに関するものがトライアルの主力となった。これは、長期戦において新型主力MSが必要となって場合や、グリプス戦役期の様にMSが世代をまたぐ進化を見せた時代に行われたケースが多い。


➀機動兵器の分類を巡るトライアル

 「ミノフスキー粒子散布環境下などの特殊環境に最適化された兵器とは何か?」と言う問題を巡り、主にMS黎明期以前に行われたトライアル。

「次期主力汎用戦術兵器」専孝時のZEONIC社のAMBAC式機動兵器とMIP社の宇宙戦闘機発展型のトライアル、ジオン公国軍の陸戦用機動兵器選出におけるMS・戦闘車輌統合運用案とモビルタンクによる実質的なトライアルがその代表である。


➁次期主力MSに関するトライアル

 機動兵器の分類を巡るトライアルの結果、MSが主力機動兵器の座を獲得した。この流れの中、次期主力兵器の選定はMS同士のトライアルで決定されるようになった。

次期主力MSを巡る物としてYMS-05(試験型ザクⅠ)とEMS-04(ヅダ)、YMS-14(ゲルググ)と YMS-15(ギャン)などが知られる。また、関連技術の他ライアルとして、地球連邦軍で行われたF90(ガンダムF90)とMSA-120の競争試作が知られている。



——トライアルで各兵器に求められる性能、仕様——

 機動兵器のトライアルで評価対象となる物は、単純な性能だけではない。もちろん、戦闘能力も重要なファクターではあるが、コストや運用性とのバランスが取れていなければ意味がなく、さらに軍が要求した仕様と異なる機体であった場合、採用されることは極めてまれである。このため、トライアルで選定される機体は総合バランスに優れたMSである場合が多い。


■ミノフスキー粒子散布環境化への対応

 一年戦争以降における宇宙世紀の兵器に求められる必須条件。最初期の機動兵器のトライアルでは、最も重要視された要素であった。


■戦闘能力

 攻撃力や防御力、機動力を含む広義の「戦闘力」。ビーム兵器の搭載など、火力面がクローズアップされる場合が多い。


■コスト

 生産コストだけでなく、運用性なども含めた総合的コスト。高性能であっても、コストが高すぎると不採用になることもある。


■信頼性

 技術的な信頼性や、機体そのものに根本的な欠陥がないなどの総合的な信頼性。新型機特有のマイナートラブルとは異なる。



——機動兵器を巡るトライアルの歴史——

 ジオン公国軍における次期主力汎用戦術兵器の選考以降、MSを中心とした機動兵器を巡るトライアルが行われるようになった。一年戦争以前はジオン公国軍が実施したものが広く知られ、以降は地球連邦軍やネオ・ジオンなどでもトライアルが行われている。


■一年戦争以前

 一年戦争以前、ジオン公国軍はミノフスキー粒子散布環境下に対応した兵器を開発するため、次期主力汎用戦術兵器の選考や、主力MSの選定などで積極的にトライアルを実施した。これは企業間競争による開発期間の短縮や技術力の向上を計る意図もあった。


●次期主力汎用戦術兵器の選考—————Z1-XA(クラブマン) VS MIP-X1

 U.C.0071、ジオン公国軍はミノフスキー粒子散布環境下に適応する兵器を開発するため、ZEONIC社とZIMMAD社、MIP社に次期主力汎用戦術兵器の開発を命じた。この中で、ZEONIC社多肢型とMIP社の宇宙戦闘機発展型が競合した。この結果、ZEONIC案が採用され、MSへと発展することになった。


●主力MSに関するコンペティション—————YMS-05(試験型ザクⅠ) VS EMS-04(ヅダ)

 次期主力汎用戦術兵器の選考を通して、人型兵器であるMSが誕生した。この後、主力MSを巡るトライアルはZEONIC社のYMS-05(試験型ザクⅠ)とZIMMAD社のEMS-04(ヅダ)の間で行われた。性能面でヅダが優勢となっていたが、U.C.0075初頭、公的飛行試験でヅダが空中分解事故を起こし、試験型ザクⅠが採用された。


●陸戦用主力機動兵器に関する実質的トライアル—————マゼラ・アタック VS YMT-05(ヒルドルブ)

 U.C.0072、地球制圧作戦用の機動兵器として開発が開始されたYMT-05(ヒルドルブ)は、MSの影響を受け、腕部を持つ地上用汎用兵器として完成された。しかし、MSと主力戦車マゼラ・アタックの統合運用と比較した結果、ヒルドルブには低い評価しか与えられず、U.C.0077、評価試験を終了した。


■一年戦争期

 MSを早期に実用化していたジオン公国軍では、次期主力機に関するトライアルだけではなく、暫定的に投入するための機体の選定も行われている。これに対し、地球連邦軍は、MSの開発に遅れていたこともあり、トライアルは実施されなかった。


●宇宙戦用機競合—————MS-06R-2(高機動型ザクⅡR2型) VS MS-09R(リック・ドム)

 第2期主力MS開発計画の遅延に伴い、ザクⅡF型の暫定的な後継機となる宇宙戦用MSの選定が行われた。ZEONIC社のMS-06R-2(高機動型ザクⅡR2型)と、ZIMMAD社のMS-09R(リック・ドム)が競合し、その結果、コストパフォーマンスに優れたリック・ドムが採用されている。


●第2期主力MS開発計画—————YMS-14(ゲルググ) VS YMS-15(ギャン)

 MS-06(ザクⅡ)の後継機となる主力MSを開発するための「第2期主力MS開発計画」において、ZEONIC社のYMS-14(ゲルググ)とZIMMAD社のYMS-15(ギャン)が競合した。この結果、ビーム・ライフルを標準装備するゲルググが採用され、一年戦争末期には実戦に投入された。


■グリプス戦役期

 U.C.0080年代中期からグリプス戦役期は、地球連邦軍組織とアナハイム・エレクトロニクス社(AE)がMS開発の中核となっていた。両組織はジオン公国軍と異なり競争試作を行うことは少なく、トライアルの例はあまり知られていない。


●次世代主力MSを見据えた試作—————RX-178(ガンダムMk-Ⅱ) VS RX-121(ガンダム・ヘイズル)

 ティターンズは次世代主力MS開発を視野に入れて、RX-78(ガンダム)の再設計機RX-178(ガンダムMk-Ⅱ)と、RGM-79Q(ジム・クゥエル)の改修機RX-121(ガンダム・ヘイズル)を試作。両機はライバル機だっかが直接のトライアルは行われず、それぞれの機体で収集されたデータがRMS-154(バーザム)に反映された。


●エゥーゴ用主力MS選出—————MSA-003(ネモ) VS MSA-002(マラサイ)

 AEはエゥーゴ用の量産MSとして、MSA-002(マラサイ)と、MSA-003(ネモ)を開発していた。両機の性能は結抗していたが、ティターンズからの疑惑を避けるため、マラサイをRMS-108としてティターンズに譲渡。ネモは、そのままエゥーゴの主力MSとして使用されることになった。


■第1次ネオ・ジオン戦争期

 この時期、地球連邦軍は新設計の新型主力MSを投入する余裕がなく、ネオ・ジオンの方が新型機の開発に積極的であった。ネオ・ジオンは少数勢力だったこともあって、主力MSを選定するにあたり、コスト面よりも単独での戦闘能力を追求する傾向が見られた。


●次期主力MS選考—————AMX-011(ザクⅢ) VS AMX-014(ドーベン・ウルフ)

 ネオ・ジオンはガザ・シリーズに続く主力MSの選定にあたり、AMX-011(ザクⅢ)とAMX-014(ドーベン・ウルフ)を候補とした。MS単独の戦闘能力を求める傾向にあったネオ・ジオンは、高コストながらも大出力メガ粒子砲や準サイコミュを搭載するドーベン・ウルフを採用した。


■コスモ・バビロニア建国戦争期

 U.C.0102、サナリィのMS小型化提言を受けた地球連邦軍は、AEに小型MS開発を依頼。だが、完成したRGM-109(ヘビーガン)の性能に満足しなかった地球連邦軍は、サナリィとAEによる競争試作を実施した。官製組織と民間企業による初のトライアルとして知られる。


●次期主力MS開発—————F90(ガンダムF90) VS MSA-120

 U.C.0111,10、地球連邦軍は次期主力MS開発(15メートル級の小型MS)に当たって、サナリィとAEを競合させた。AEは新型のMSA-120、サナリィは「フォーミュラ・プロジェクト」で開発F90を投入。このトライアルは「新の小型MS」であったF90の勝利に終わった。



——トライアルに敗北したMSのその後——

ヅダやギャンの様に、トライアルに敗れ、主力MSとしては採用されなかったMSはどうなるのか?平時であれば展示品として、博物館や基地施設などに置かれるケースもあるが、MSの絶対数が不足する戦時においては戦線に投入されるケースも珍しくない(既存MSと互換性を保てるように改修されることもある)。

このような非主力機としての採用はジオン系組織でよく見られ、中には主力機を超える性能を発揮したケースも報告されている。
 

■特殊用途への仕様

 ヅダのように改修が行われた後、新たな形式番号を与えられ、プロパガンダを目的として利用されることもあった。これは、改修によっても欠点を補えない場合に探られた応急策であったようだ。


■前線への配備

➀戦場への直結投入

 トライアルに敗北したが、MSとしての基本性能が高い場合、戦力不足の解消や特殊部隊用として配備されることもあった。ザクⅢや高機動型ザクⅡR2型がこの例である。


➁改修、専用機への転用

 エース級パイロットや特権階級的な将校用として改修、配備されることもあった。エースの中には機体特有の「癖」を把握し、機体本来の性能を発揮させる者もいた。

 
 

 
後書き
次回 ラフレシア計画(プロジェクト) 
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