| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

生きるために

作者:悪役
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四話 エースとの繋がり

ふぅ……と温かい日差しの中、私、フェイト・T・ハラオウンは公園で眠気交じりに溜息を吐いた。
今日の天気は素晴らしく心地よい。
天気は最高の洗濯日和。
公園にいるせいか。子供達の元気な声が何時もよりも凄く耳に響いているみたいで微笑ましくてつい笑顔を浮かべてしまう。

「う……ん……っ」

久しぶりの休暇のせいか。腕を伸ばすと体がごきごき鳴ってしまって疲れているかなぁと思うが休んでいる暇がない。
管理局の人手不足の問題もそうだが執務官という職業はやはり色々と多忙なのだ。
多忙を承知してその職務を望んだわけだが。
それを周りの人というと先天的お人好し病、ハードワーカーホリック、疾る稲妻慈愛などと意味不明な単語を言われてしまい、最近の言語の不思議についていけないと軽く悩んだ。
だから今回の休暇申請を出した瞬間に周りが今日はやばい仕事(ヤマ)が回ってくるぞと平然と覚悟をしているのだから軽く泣ける。
そしてそれなのに別に今回の休暇がただの休暇だけで済ますつもりがないのだからワーカーホリックと言われるんだろうなぁと内心でそこだけは認めていることに微妙に溜息を内心で吐き

「お? いたいた。お~~いフェイトちゃ~~ん」

そこで丁度待ち人が来たようだ。
時間を見ればほぼ約束通りの時間である。
声をかけられた方を見るとそこには予想通り茶髪で変身魔法の応用か。短髪であった彼女の髪を長髪に変えており、その髪をストレートに下しており友人でないと見ただけではかなり誰かわからない人物になっている。
八神はやて。
私の幼馴染の一人である。
それにしてもそんな大声を出して私の名前を出したら変装する意味がないじゃない、と現在何時もはストレートの髪をポニーテールにして伊達眼鏡をかけている自分がそう言う。
まぁ、いっかと思い立ち上がりこっちに駆けてくるはやてに合わせて行こうと思ったところではやての指の動きが変に不自然である事に気付き目を細め、周りに気付かれないように魔力刃を手に生み出す。
そこではやての動きが止まった。

「……フェイトちゃん? その手の中にある物騒な物はなにかなぁ?」

「え? これ? ふふ……はやてが変な事をしなければ無意味なものだよ?」

「ははは……フェイトちゃんは私が幼馴染に何かするんと思ってるんか? 私、悲しいっ」

「じゃあその指の動きを止めてくれたら私も心変わりするかもね」

暫く耳に痛い沈黙が広がる。
さっきまでは微笑ましかった子供達の元気な声が今では虚しく聞こえてしまい微妙に悲しい。
そしてようやくはやてが心底悔しいという顔で手を引いたので私も手から魔力刃を消す。

「フェイトちゃんもすっかりガードが固くなってしまって……私としては友人の成長を祝うべきかなんやろうけど複雑や……」

「お陰様でね。なのはなんか次にやられたらバスターかますって笑顔で言ってたよ?」

恐ろしい女衆っ、と嘘泣きで項垂れているはやてを無視して溜息をする。
はやての悪癖に慣れた自分もどうかと思うがこんな公共の場でセクハラをする友人も悪い。

「ほら、はやて。早速行こ。相手の人を待たせているんでしょ?」

「まぁそやね。時間よりちょい早めに集合したから大丈夫やと思うけど」

「念には念をだよ───あ、そういえばリィンは今日はいるの?」

「ここにいるですよーー?」

はやての持っているショルダーバックの隙間からにょきっと小人みたいに八神家の末っ子のリィンフォース・ツヴァイが生えてくるのを見て和む。

「じゃあ、行こっか。ええと……確かスコール……さん? が待っているんでしょ?」

「ゲンヤさんが言うには私達と同い年みたいやからさん付けはいらんと思うけど……それにしても便利屋かぁ……こんなロマン世界に引っ越ししてきたからそこまで思わんけどまさかそんな仕事をしている人と知り合いになるとは思ってもおらへんかったなぁ……」

そんなものかなぁ、と思うがそういうものなのかもしれない。
少なくとも生粋の地球人のはやてはそう思うものなのだろう。

「でもゲンヤさんからの紹介やなぁ……色んな意味で油断は出来ひんな……」

「はやての上司だからね……でも聞いた話だと凄い腕利きって事だけは事実なんでしょ?」

「そうらしいねぇ……ゲンヤさんが言うにはありゃ化けもんだの一言だったけど」

つまりキャリアの長いゲンヤさんが化け物と言ってもいいレベルの人間であるということだろうか。
気が抜けないなぁ、と改めて思う。
まぁ怪物級の砲撃とか色々よく知っているのでその経験で何とかするしかない。

「まぁ、私も怪物級の速度を持っているフェイトちゃんが知り合いなんやから何とかなるやろ」

「私も怪物級の魔力を持っているはやてが知り合いだから何とかなりそうだと思う」

お互いがお互いを睨み合うが不毛であることを一秒で理解して歩き出す。

「直ぐ近くの喫茶店……だったよね?」

「そやで。目と鼻の先。だからどんな人間かは覚悟はもう決めといてや?」

「了解……あれ? そういえば私、その人の人相がどんなのか知らないんだけど」

「あ、それ私もや。聞いてみたんやけど……何か愉快な奴だから見たら一瞬で理解できる言うてはったけど……」

「え」

それで見つけろというのだろうか。
幾らなんでもそれは難しいだろうと思い、悪いとは思ったけど多少の非難の目線で見てしまう。
それには流石に慌てて両手を振って言い訳を開始する。

「い、いやっ。私もごねたんやで? でもゲンヤさんは見ればわかるしか言わんし……」

「……まぁ確かにはやてのせいじゃないね。とりあえず、一通りそれらしい人を探してみてわからなかったら今度はゲンヤさんに連絡してちゃんと聞こ?」

はーーい、と元気よく返事するはやてと共に公園を出て、その件の喫茶店が目視に入り

「うおっ、見ろよハティ! ここの水! うちの水や近くの公園の水よりも美味しくてたまんないぜ!? こりゃ飲むしかねえ! 店員さーーん! おかわり!」

『HAHAHAHAHA。マスター? 気持ちはデバイスとしては理解できないのですが、傍から見たら非常に哀れな人間としか見られないから慎みという言葉と恥という言葉を頭に思い描きましょう。思い描きましたか? それがマスターに足りないものです』

「馬鹿なっ。生きるために必要な栄養素に趣味を入れることがそんなにもいけないことなのか!?」

『ええ。お陰様で私も恥メーターを蓄積する毎日です───ちゃんと金払って食え』

「きゃ、キャラを破壊してまでもか……!」

一瞬で目的の人物(変人)を見つけてしまい雰囲気が微妙になってしまった。
子供達の笑う声が公園から聞こえてくるのが更にいっそうに空しくしてしまうのが何故か辛かった……






「おーー。ここが彼の有名なエース美少女の家かぁ」

『マスターのうちがごみ箱に見えるくらい綺麗な家ですねぇ……穀潰しにはキツイ場所ですねぇ……マスター。嫉妬してはいけませんよ?』

「初対面に人間相手に平気でかますなっ」

はやてはフェイトちゃんの一人暮らししているアパートで件のスコール、君? を連れて飲み物を入れようとしながら相手をちらりと見てみる。
便利屋スコール&ハティ。
はっきり言ってそんな噂は余り聞かないし、改めて調べたらあったくらいでしかない情報レベルであった。
見た目は自分達とやはり同い年くらいで普通の少年にしか見えない。
強いて言いうならばミッドでは余り見ない黒髪というくらいであろう。久々に地球を思い出してしまうが、そこは置いとく。
密かにリィンに計測してもらってたけど、魔力量はAA程。自分らみたいな規格外には届かないが、十分にエースを張れる魔力量ではある。

よくまぁ、管理局からお誘いが来なかったなぁ……

慢性的な人手不足。
管理局は常に人が欲しくてたまらない状態。それが十歳以下の子供であろうとも。
ああ、あかんあかんと内心で首を振る。
最近、魔法世界の常識に慣れ始めた自分が恐ろしい。
正直、自分みたいな特異な状況ならまだしも普通の子供が管理局(まぁ、危険じゃない仕事もあるけど)の仕事に就くというのは覚悟をしてる人以外が来ない方がいいのだ。

自分達と常識が違う場所に慣れるってちょいと怖いところがあるなぁ……

人間の適応力の恐ろしさやな、と解ってもどうしようもない事を思い入れた紅茶を持って今はフェイトと色々と話しているテーブルに持ってきた。

「はい、紅茶やでー。フェイトちゃんはナンパされてへん? フェイトちゃんは男の子相手に免疫ないから程々にしてな、スコール君?」

「はやてもそんなに免疫ないでしょっ。大体がユーノとクロノなんだし」

「ああ。じゃあ、週刊誌で騒いでいたエースオブエース達は百合っていう情報はデマじゃないのか?」

「誰やそんな情報を流したのは!?」

悪意しか感じない流れに思わず叫んだが本人はさぁ? と首をかしげるだけ。
フェイトちゃんは何故か私から距離を取っている。
いやいや、デマ流されているのはフェイトちゃんもなんやで?

「……え~と。とりあえずこのままだとグダグダになりそうやから早速仕事の話に変えていいかな?」

「───その前に俺達のやり方を先に教えさせてもらうぜ」

だらけたような姿勢はそのままで口調もそのままなのに一瞬で場が少し張りつめた。
シリアスとギャグの線引きをあいまいにしている人やなっと評価をさっきより倍増させる。

「まず、最初に世知辛い話だと思うが最初の依頼人にはまず俺は依頼額を聞くことにしている。理由としてはそれによって依頼の難易度も多少推し量れるし───騙す人間ならそのままはい終了。そして下らん事をしてきたらぶちのめすことにしてるからな」

あくまで自然体。
自然体のまま彼は仮にもオーバーSランクの魔導師を相手に倒せると豪語した。
馬鹿か大物か。
視線で見るのも危ういかもしれへんし、念話は傍受される危険性があるかもしれへんからそれとなく紅茶のカップを持ち上げる。
その紅茶の水面をフェイトちゃんが映るようにして持つと水面の彼女は普通なら解らないくらいに唇を少し震わせた。
───後者やと断定する。

「で、了承は?」

「うん、こっちはかまへん」

「私も」

こっちの了承を得たからか結構と呟き椅子に背を預けながら続きを語る。

「次に依頼の説明。それで俺が受けるか断るか。まぁ、普通の流れだが拒否権がない場合はこの場で辞退するけど? 秘密事項とか知って後々までストーカーされるのは趣味じゃないし」

「───じゃあ今度はこっちから条件を出そうか」

紅茶を飲んで一言。
あっちが雰囲気を変えてくれたおかげでこっちも"スイッチ"を変えるのが楽であった。
コップを置き背筋を伸ばし睨むというより挑むという視線で彼を見る。
言ってみ、と無言の促しを受け取り続きを語る。

「じゃあ、言わせてもらうわ───今回の件やけど。はっきり言わせてもらうけど同情だけとか金だけの為とかで動くんやったらこっちから願い下げやからそこは嘘は言わんで欲しいな。実力がないんやったら足手纏いやし、欲望だけでこっちの言うことを聞いてくれへんのやったら木偶にも劣るしな」

「───へぇ?」

『───ほぉ?』

こっちのあからさまな言い方にむしろ面白いものを見たと二匹の狼が嗤う。
挑発に対してふんっ、と鼻を鳴らすことで対応として先を続けさせてもらう。
フェイトちゃんは何も言わない。
つまり、こっちの意見にどうしてくれていると見て先を続けさせてもらう。幼馴染最高。

「簡単に言わせてもらうけど依頼内容はかなり面倒で複雑でおまけに難解。依頼料は勿論、弾ませてもらう。どんだけかって言うと私らの給料一か月分出したるわ。足りひんかったらもう少し足す。ちなみにフェイトちゃんも私も結構高給やから期待していいで?」

「貯蓄っていう言葉は潤うなぁ……」

『久々にうどん以外を食べれるかもしれませんね……』

普段、どんな生活してんねんって思うけど自重自重。
それに裏の意味も取ってもらえたようやし。

「まぁ、そして最後に───いざという時にこっちの言う事を完全無視するとか俺は誰の指図も受けへんとかいう孤高気取るんやったらお断りや。ああ、勿論多少の現場の判断とかそういうのがある場合は勿論例外やけどな。要は滅茶苦茶しいひんかったらいいって事やな。ここまでで何か───」

「や、文句はないな。依頼の話に進もうじゃねえか」

言葉と同時にいっきに空気が弛緩した。
何時の間にか身に力が入っていたのに気づきつい息を吐いてしまい自分に内心で舌打ちをする。
まだまだやなぁ、と自己分析をしていきなりの話の展開に苦笑する。

「いきなりやなぁ……合格ってことでいいん?」

「ああ。まぁ、ゲンヤさんからのって時点であの人が選ぶ程だからそこまで心配していなかったけどな。ま、悪いな。便利屋なんて大人から見たら下らん言われる職業だから舐められたら終わりだからな。最初はこれくらいやらないと後に響くんだよ」

『そういったものは片っ端から拒否リストに入れましたものね───まぁ、かといってこちらにかしこまるだけかしこまって何もしない、もしくは邪魔をするという連中もいるにはいますから』

つまりそういった選定基準を超えたという事なのだろう。
お高い事……と言いたいところやけどそれだけ便利屋として悪用されたことがあるから用心ということなのだろう。
便利屋についてどんな苦労があるかは知らない自分が何かを言うのは間違いやと思い、突っ込むべき話ではないと判断する。
だけど

「そういう返事やって事は腕に自信があるって事でいいんやな? 例えばこのフェイトちゃんと戦っても勝てるってくらい?」

「相性は最悪に近いんだが……上手く嵌まれば勝てない事はないな」

例に出されたフェイトちゃんがむっ、とした顔になる。
負けず嫌いな彼女に肘で抑えながらよしっ、と頷く。
うん、せめて嘘でも本気でもそれくらい言ってくれる人やないと頼りがない。

「じゃあ、とりあえず具体的な依頼額は……リィン。ハティに送ってくれへん?」

「わかりましたですー!」

そうりゃぁ~、と我が家の末っ子が電波を送り十字架の待機モードのハティがぐわぁ~、毒電波が~とかほざいている。
私も他人のことは言えへんのやけど……随分感情的なデバイスだ。
リィンフォースはある意味で例外として下手したらレイジングハートとかよりも感情的に思える。
相当稼働年数があるんじゃないんだろうか。
そして額を見てくれたのか。解っていたがこりゃ面倒な用件だな、という顔になった。
まぁ、そりゃあオーバーSランクの二人が頼んでくる依頼ってだけで嫌な予感しかしないやろうなぁ。

「じゃあ、そちらの要望通りに次は依頼内容についての説明をさせてもらうで。心配しないでも聞いたから言うて暫く監視をつけるとかは言わへんし」

「あいよ」

緊張感がない返事をして苦笑し、フェイトちゃんに視線を向ける。
彼女もコクリと頷き同意を示す。
ようやく本題やな、と思いそこで口を開く。


「───DSAAって知ってる?」






 
 

 
後書き
何か何時の間にかここまで書けたよ。
交渉事は中々難しいなぁ、そして既にフェイトがキャラブレイクしている気がしますが、そこは気にしてはいけないでしょう。
さて次回でようやく依頼内容に入れるなぁ……
ヒロイン(?)は次回でした! 申し訳ありません!!
感想、よろしくお願いします……! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧