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古の鉄の巨人を駆る他世界への介入者

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準最高神 神殺し

「俺は…」

キョウスケは声に出るほど悩み苦しんでいる。千夏は自分のことを愛していた。だが自分は信じてきた神によって殺され、その自分は自分を殺した女神と夫婦という関係になっている。キョウスケが自分の考えを実行するならば、千夏の事を殺さず、彼女と話したい。南武 恭介として、人間として、彼女と愛し合った恭介という存在として。だがそれは許されない事、準最高神として立場は高く責任が多く付き纏う。下手に千夏を見逃そうものなら自分の子供、自分の部下、エクナにさえ火の粉が飛ぶ可能性がある。自分は愛する者を守る為に愛する者、目の前に居る千夏を戦えというのか?殺せというのか?

キョウスケは掌から血が滲み出るほどに手を握り締めた。直ぐに再生はするがまた地があふれ出して地面へとポタポタと落ちて行く。キョウスケの交錯する重いとは裏腹にやけに簡単に地面へと落ちて行く。ギリギリッと歯軋りをする音、そしてキョウスケは…肩を落としながら…指を鳴らした。

「…此処は…?」

千夏が顔を上げるとそこは墓地では無かった。何も無い白い白い空間、地平線の先にも何も無く無だけが広がっている。千夏は立ち上がって周囲を見回すが誰もいないし、何も居ない。唯一つを除いて、何も無かった。そう、漆黒(アルトアイゼン)巨人(リーゼ)を纏ったキョウスケ・ナンブっという存在を除いて。

「加賀見 千夏、お前が持つ神殺しの力。回収させて貰う」
「貴方…神ね?」
「…」

巨人(リーゼ)は答えない。答えなれなかったのだろうか、だが千夏は笑っていた。

「そう、神は何でも出来るのだから恭介君と同じ容姿になる事だって出来るのよね、味な事してくれるわね」

そう呪いの呪文を詠唱するかの如く、千夏はゆっくりと身体を揺らし始めた。右手は左腕に減り込んで行く、沼に足を取られていく様に右手は左腕の中へと入っていく。そして其処から取り出したのは一本のライフル。だが唯のライフルではない、XK.50対物狙撃銃。大型セミオート式狙撃銃だ、ヘリコプターや装甲車などにも損傷を与えられるような威力を持っている大型セミオート式狙撃銃だ。明らかに対人相手に使うのは過剰な火力を誇るが、相手は神、それなら割に合っている物なのだろう。千夏は巨人の頭部に狙いを定めて引き金を引いた。ズガンッ!!ズガンッ!!ズガンッ!!迷う事の無い三連射、それは一寸も違わず、巨人の頭部へ直撃した。だが巨人は少し頭を後ろへ反らしただけでダメージを与えられているように見えなかった。千夏が笑った。自傷する様な笑いではない。それは、死に場所を見つけられた武人のような笑い。

「あははははっ!!いいわ!そう簡単に死なれたら逆に興ざめって物よね、それじゃ引き摺り下ろし甲斐がないってものだものね!!」

千夏は左手を胸へと突っ込んで、大型のサーベルを引き出した。巨人はそれを見て、腰に刺している日本刀を引き抜いた。

「行くわよッ!!」

千夏はそう言うが早いが巨人に向かって疾風の如く駆けていき、サーベルが巨人の頭へと振り下ろした、巨人はそれを右手のバンカーで受け流し、左手のチェーンガンで千夏を狙う。千夏はそれに素早く反応し、斜線上から退避し、巨人の頭部にライフルで狙った。巨人は発射される寸前にライフルを弾きコースを変えさせた為、弾は肩を掠める。

「(っ!!!千夏!!)」

巨人(キョウスケ)は千夏を振り払い、チェーンガンで千夏を牽制する様に千夏との距離をとる。千夏はバックステップで巨人との距離をとりながら片手でライフルを構えて、神殺しの力を使う。神殺しの弾丸をライフル内で生成してそのまま発射した。弾は空気を弾くように進むが巨人はそれを刀で真っ二つに両断する。両断した弾は巨人の背後で爆発する。

「…無駄だ…」

巨人は戦いを始めてから初めて声を上げた。その声に乗っている感情は悲しさと苦しみだった。それは誰が聴いても解る物だった。だが距離がある千夏には聞こえない、力で更に強い弾を生成しようとしている。だが巨人はそれを止めようとしない。無駄だと解っているからだ。

「無駄なんだ…千夏…、お前には俺を、殺せない…。でも俺はお前を…」

巨人は顔を上げた。緑色の瞳からは、流れてない筈の涙が流れていた。

「お前をっ!!!うわぁああああああああああああ!!!!!!!!!」

激情を吐露したような巨人の叫び、巨人は一気にバーニアを噴射し千夏へと向かっていく。千夏はそれを見てニヤリと笑って再び頭部を狙ってライフルの引き金を引く。ズガァン!!先程より強い発砲音、重々しい戦艦の砲撃を思わせる音だった。それは巨人の頭部へと直撃し、足が止まり、身体が大きく反れる。巨人は踏ん張り頭を振るって前を見るが、そこには誰もいない。が、影が自分に重なり、上を見ると、大量にグレネードをばら撒く千夏が見えた。

「そんな物ぉおおお!!クレイモアァァアア!!!」

肩のハッチが開放され、そこから紅い粒子の弾幕が張られる。クレイモアはばら撒かれたグレネードを寸分違わず破壊していく、だが破壊した事で爆発と煙で視界が利かなくなる。

「くっ…!?」

巨人が警戒しようとするが前を向くと千夏が自分の頭部にライフルを押し当てながら笑っていた。眉間に弾が打ち込まれた。次の瞬間、眉間に弾が打ち込まれ、零距離で戦艦並みの射撃を受けた巨人はそのまま後ろへと倒れこみ動こうとしなかった。

「うわぁ…うわぁぁああ…あああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

巨人は、叫び声をあげながらバーニアを噴射し、滑るように移動して立ち上がり千夏を見た。そしてチェーンガンを連射しながら接近して行く。千夏はチェーンガンで巻き上がる煙に紛れて姿を隠す。あまりにチェーンガンを連射したせいで煙は濃く、千夏の姿を補足出来ない。否補足したくないのかもしれない。

溢れる感情のままにチェーンガンを連射している。全く狙いを付けずに撃っている。が、そんな巨人に煙の中から千夏が迫りくる。サーベルが振り抜かれ、胴を斬った。巨人はそのまま膝をつき、怯む。千夏は自分が付けた傷目掛けてライフルを打ち込む、ライフルを撃ち終わると立て続けにサーベルで切りかかる。

「はぁぁああっ!!」
「っ!!」

サーベルが胸へと迫る、胸へと到達する寸前で千夏を腕を弾いて反し、サーベルは頭部の頬を掠める。その時、巨人(リーゼ)が左手で千夏を殴った、鉄の拳、骨を軋ませ、肉を震わせ、千夏を吹き飛ばした。千夏は血を吐いた。しかし、千夏の神殺しの力なのか、吹っ飛ばされながらも上手く衝撃を殺しながら体勢を整えた、しかし千夏が体勢を整えると同時に後ろから巨人の刀の一閃が襲い掛かった。千夏は素早く身体を沈ませて紙一重で避けてライフルの引き金を引いて反撃を図るが、頭部への弾は、最低限、僅かに頭を動かすだけで避けられてしまい失敗に終わる。

「ああぁあああああ!!!」

巨人はそのまま蹴り上げるように千夏を足蹴りし、クレイモアを放った。千夏は神殺しの力を全開しライフルからマシンガンの如く弾を連射しクレイモアに立ち向かった。が、それでもクレイモアを全て打ち落とす事は不可能。ある程度は打ち落とせた物の数発が自分を掠めて、衝撃が襲う。千夏は崩れるように地面に落ち、必死に立ち上がるが、神は止まる事が無く、頭部の角が赤く発光し、千夏へ突き刺さった。

「ぐぅぅう!!」

が千夏は力で限界までライフルの構造を強化して盾として耐えていた。しかし、盾は熱によって解けるアイスのようにドロリと融けていく。千夏は渾身の力でライフルを押し出して巨人の力の方向を反らした。ライフルさえ失ったが自分は無事だった。が、

「っ!?」

しかし次の瞬間には左手で千夏の胸元を掴み、そのまま地面に叩き伏せた。地面は大きくへこみ、亀裂が走る。千夏は圧迫される痛みと強く抑えられる力に耐えながらサーベルを振るおうとするが足でサーベルを踏み砕かれ、そのまま千夏を放り投げた。

「がっぐぐうっ!!」

痛みによる声を吐き出しながら千夏は立ち上がろうとするが、目の前には巨人が自分に銃口を顔の前で構えながら鎮座していた。

「………畜生、神を殺すだけの力を持っていたとしてもそれを使うのが人間だったら宝の持ち腐れだって言うの?じゃあ何、何で私はこんな力を手に入れたのよ」

千夏は言った、自分が勝てない、そして死ぬ事を悟って神殺しの力を得た事を呪った。最初から勝てない。人間の身では神殺しの力は手に余る物。なら何故このような力を手に入れたのか。

「あははははっ!無様本当に無様!!神を陥れる所か私が死に掛けてるじゃない!あははははははははっ!!爆笑物よ!!何が神殺しよ!でも見ててよ恭介君!!私は神に対してここまで立ち回れたんだよ!見ててくれた?!でも待ってて!絶対貴方を殺した神を、絶対に引き摺り落として見せるから!!」
「…っ」

巨人(キョウスケ)は強く、銃口を千夏の眉間に押し付けた。覚悟せよと言える行動だった。だが…

「(俺は…俺は…殺すのか…?彼女を……俺を心から愛してくれた彼女を俺は撃つのか?俺のせいで人生を歪めた彼女を撃つのか?!)」

巨人(キョウスケ)は揺れる、彼女を撃つべきなのか否か。彼女は被害者だ、加害者ではない。信じていた神、最高神であるエクナに愛していた相手を殺され人生を狂わされ、神を憎んだ。それは当然とも言える。

「(だがこれは最高神からの厳命、俺はそれに逆らえない…!神である以上逆らえないんだ!ならここで撃つしかない!!)」

巨人(リーゼ)は彼女を撃とうとする。準最高神である彼は最高神に逆らう事は出来ない。最高神の命令である以上彼に拒否権は無い。なら撃つべきだ、神である限り。此処で撃たなければどうなる、自分の子供達にも危害が及ぶ可能性がある。

「(俺は…俺は…俺はぁぁああ!!!!)」

ダァンッ!!!低い音が空間に響いた。それと同時に倒れる影が一つ…。 
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