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“死なない”では無く“死ねない”男

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話数その23 通らない

 
前書き
原作と違い、兵藤はこの時点ですでに木場の過去の話を聞いています。 

 
「……つまりお前らは、無駄乳と行き遅れに内緒で“聖剣破壊計画”とやらをやっていると……」
「て、てめぇ! また無駄乳って言いやがったな!?」
「しかも行き遅れってのは会長か!? 会長の事かこの野郎!!」
「……灰原さん、もう少しデリカシーを持ってください。…お二人も落ち着いてください、五月蠅いです」


 晋の相変わらずな言葉に憤慨する二人を塔城が宥め、晋の方へ睨みと共に言った。

 健闘(悪あがき)も空しく晋は彼らに捕まり、強引に同席させられてしまっている。


(……結局、無駄乳は結婚しなかったのか……)
「それで―――」
「……断固拒否だ」
「早っ!? まだ何も―――」
「……それじゃあばよ」
「だから待てっての!!」


 店を出ようとする晋を、兵藤は再び強引に座らせる。


「部長達に内緒でやっているからこそ戦力が足りないんだよ! だから猫の手も借りたくてお前に―――」
「……断るつってんだろうが……っ!」
「聖剣を悪用されると、世界がヤバい事になるかもしれないんだぞ!」
「……俺が世界なんぞ知るか……!」
「なら、ならせめてこの話だけでも聞いて行ってくれ!」


 そう言った兵藤は、何故教会の聖剣破壊計画に協力しようと思ったかを話し始めた。


 教会が聖剣の使い手を作り出そうとしていた事、その被験者の中には木場も居た事、そして皆聖剣を扱う事が出来ずに殺されてしまった事、木場はその時にグレモリーによって悪魔へと転生した事、そして……木場は教会、聖剣への復讐のために今まで生きている事。


「唯…唯聖剣が扱えなかっただけで殺されるなんて理不尽すぎるだろ? 俺は……そんなん理不尽なことが許せない! それに仲間を……木場を見捨てられないんだ!」


 その話に匙は泣き、塔城は俯き、教会からの使者らしい少女達も申し訳なさそうな顔をしている。……本来ならば、普通の感情ならば同情心からだとしても協力すると言っただろう……しかし―――





「……で、それが俺と何の関係があるってんだ……?」


 ――この男は、能力と共に性格も普通じゃないのだ。


「で、って―――」
「……木場の過去はよーく分かった……で、だからどうしたってんだ? ……聖剣破壊する理由は俺には無いし、他人の過去なんざ興味ねぇし……厄介事に巻き込まれるのはもっと御免だ」
「何言ってんだよお前!? 許せないとか思わないのかよ!?」
「……お前こそ何言ってんだ? 人間だって“ラット等を主な対象に実験”してんだろうが……それとも何か? 人間や悪魔は対象にされちゃ可哀そうだけど、他の動物の命はぞんざいに扱ったっていいんですってか?」
「それとこれとは話が別だろ!」
「……同じだ…唯、対象が人間じゃないか否かってだけだろ? ……あえて思う事があるとするなら――――木場は運が無かった、ご愁傷さま……って所だな」
「! てめぇ!!」


 晋の余りの言い草に兵藤は彼の胸ぐらをつかもうとするが、ヒョイと避けられスカされてしまう。


「……話を聞く限りじゃ、その後に聖剣使いを作り出すのには成功してるらしいし…その実験は無駄にならなかったんだろ? ……ならいいじゃねぇか」
「でも! 使えなかったからってだけで殺されるのは許されない事だ……許しちゃいけない事だ!!」
「……それは“お前の”考えだ……“俺の考え”じゃねぇ……」
「お前はっ――――自分さえ良ければそれで良いのかよ!?」
「……あん? そんなの決まってんだろうが……自分の方が他人より何倍も大切だ…」
「このっ……!」


 果ての無い言い合いになりそうだった二人を見かねたのか、塔城が兵藤に向かって珍しく大きめの声で話しかけた。


「落ち着いてください先輩。灰原さんは最初から協力してくれる気は無いようでしたし、これ以上会話を続けても無駄だと思います」
「くそっ」
「……話は終わりって事でいいんだな…」


 言うと同時に晋は立ち上がり、最後に言葉を付け加えた。


「……覚えとけ兵藤、世の中にはこういう人間も居る、それだけだ……あばよ、これから一ヶ月は会わねぇ事を祈ってる」


 相変わらずのダルそうな表情のまま、晋はレストランを出て行く。兵藤は、唯晋の背中を睨みつけるだけだった。















 レストランから出た晋は、このまま帰っても何もやる事が無かったのを思い出し、しばらく当てもなくブラブラ歩いていた。

 と、急に空が曇ったかと思うと、小雨が降り出し、次第に強くなっていく。


(……雨…降ってきたか…)


 神器の中から傘を取り出し、それを差した晋は……唐突に後ろを振り向いた。




「……で、お前誰?」
「あ~ららあ! 見つからないと思っていましたっつうのに見つかっちゃいましたですかぁ!? っておやおやぁ? よくよく見たら神父……では無いじゃねぇか!! 似た服着るとは、紛らわしいんのですよっての!!」
「……支離滅裂だな……お前」


 
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