ISー電王の名を継ぐ者
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VS代表候補生編
TIME2 新たな出会いと名前決め
「フッ……俺、参上!」
あれ?俺、何も言ってないぞ?てか、何だこの決めポーズは。
『おい、馬鹿鬼!何でお前が俺の身体を動かしてんだよ!』
「誰が馬鹿鬼だ!誰が!」
言い合っている所にあのイマジンがまた突っ込んできた。
が、
馬鹿鬼はベルトの横についた武器らしき物を素早く組み立て、突っ込んできたイマジンを乱暴に斬りつけた。
当たりが良かったのかイマジンは痛みに悶えながら地面を転がる。
「貴様、一体何を考えている!我々の使命を忘れたか!?」
体制を立て直したイマジンが俺を見て叫ぶ。
「そんなもん最初から覚えてねぇ。ていうか、俺はこういうのをやりたくてきたんだよ。相手は関係ねぇ!」
「はぁ………馬鹿か?」
「言っとくが俺は…最初からクライマックスだぜ!」
会話になってねぇよ馬鹿。
だが、馬鹿鬼の声が引き金となり戦闘が始まった。
と思った直後、
『ちょっと、そんな事出来るなら変わってよ!』
『そうだよ!僕もやりたい!』
あのキザ亀とガキ龍の声が耳に聞こえた。
「てめえらは引っ込んでろ!今回は俺の番だ!」
馬鹿鬼はコウモリイマジンを斬り飛ばして、言う。
おいおい、壁ぶち抜いて吹っ飛んだぞ!
大丈夫かよ、あのイマジン。
馬鹿鬼はそのまま吹っ飛んだイマジンを蹴り飛ばし、剣で斬り続ける。
これが世に言うラフプレーか。
うん、これは酷いな。
壁に追い詰められたイマジンを見た馬鹿鬼は急に足を止め、パスをベルトにタッチさせる。
『Full charge』
赤い稲妻が迸り、馬鹿鬼が剣を正面に構える。
「行くぜ。俺の必殺技、パート2」
『1は!?』
俺のツッコミは無視。そして剣先が外れ宙を舞う。
馬鹿鬼が剣を右に振り抜いた。
剣先は工場を斬りながらもイマジンを斬り裂く。
続けて左に振り抜き、最後に上から剣を振り抜く。
「ぐあぁぁぁぁ!!」
コウモリイマジンは叫びと共に爆発した。
「フッ、決まったぜ」
そう言うと、馬鹿鬼は俺の身体から出て行った。
「おわっと……!」
急に力が抜けたのでバランスが崩れる。
「だ……」
「ん?」
何処からか声が聞こえた気がした。工場の端を見ると、カメラを持った男が立っていた。
まさか……今の見られ……!?
「だ……」
「だ……?」
「大スクープだーーーー!!!二人目の男性IS操縦者だーー!!」
そう言って男は走り出す。
「ちょっと待てーーーー!!」
急に力が抜けたから立てない。
そして俺の叫びも虚しくカメラマンは何処かに消えていった。
「面倒な事になった……いや、絶対に面倒な事になる……」
「今のが電王。ずっとなれる人探してたんだ」
何処からか出てきた女の人は俺に手を差し伸べながら
「一緒に戦おう。未来から侵略者が来てる。時の運行を守らなきゃ」
「あんた今の話聞いてたか!?俺は今それどころじゃないんだよ!」
「あ、デンライナーが来たわよ」
「ちょっとは聞けよ俺の話!」
変わったミュージックホーンと共に空間に穴が開きそこからさっきの電車が現れた。
とても現代的には思えない電車の扉が開く。
「とりあえず、乗って」
「もう、突っ込む気力ねぇよ……」
二人は電車に乗った。
扉が閉まり電車が発車する。
そして電車が異空間へ消えた直後、あのコウモリイマジンの親である青年がさっきまで電車のいた所を歩いていた。
その身体からは砂が溢れ、またあのコウモリイマジンを形作っていた。
現在 3月3日 時刻 12時8分
電車内
「本日もデンライナーのご利用、誠にありがとうございます。客室乗務員の……ナオミで~す♪」
黒髪を後ろに括りピンクのメッシュを入れた髪型の女の人がアナウンスをする。
なんていうか、怪しいな。
こんな奇怪な電車の客室乗務員の時点で既に出処が怪しい。
「御用がある時は気軽にナオミちゃんって言ってくださいね♪」
そう言うと、ナオミさんはオーダー表を持って来てこっちに差し出す。
「ご注文は?」
すると、前に座っている女の人が
「何か飲めば?落ち着くよ」
「いや、今はい……「オリジナルコーヒーはいかがですか?」「せっかくだけど、今は本当にい……「すっごく美味しいコーヒーはいかがですか?」
何だこの人!グイグイ来過ぎだろ!?
「じゃあコーヒー二つ」
女の人が会話を遮る様にコーヒーを注文した。
「は~い♪」
『俺も』
『僕も欲しいなナオミちゃん』
『俺も欲しいわ』
『僕も欲しい~』
『私が入れよう』
何処からかあの馬鹿鬼共の声が聞こえたかと思うと、俺の身体から大量の砂が溢れ出し五体のイマジンが出て来た。
それぞれ、赤色、水色、黄色、紫色、青色と見事にバラバラだ。
「おぉい!急に出てくんな!」
「は~い、コーヒー五つ追加ですね」
「いえ、コーヒーは私が」
青鬼がそう言うが、
「お客様は座ってて下さい。コーヒーは私が入れますから♪」
「しかし……」
「私が入れますから」
「……分かりました」
そう言うと、青鬼は椅子に戻った。
このイマジン、超紳士だな。
「てか、何だよこの姿は?」
馬鹿鬼……もとい赤鬼が俺に文句を言ってくる。
「はぁ?俺にそんな文句言うなよな。お門違いもいいとこだ」
「イマジンはこの時間にくる時に身体を持って来てないんだよね。イマジンは取り憑いた人のイメージを使って身体を作るから」
「つまり、俺がこんななのはお前のせいって訳だ。なんだこりゃ?もっとかっこいいのあんだろ?」
赤鬼が俺に詰め寄ってくる。
が、
「何言ってんだよ。ほかの奴らは文句言ってないだろ?慣れりゃ愛着も沸くぜきっと。……てか、その姿もしかして桃太郎かもな。赤鬼だし」
「桃太郎!?」
「あはは!」
「笑うな!お前イメージ貧困過ぎだろ……」
「はぁ!?桃太郎を馬鹿にすんなよ!あれは代々語り継がれる名作だぞ?そんな名作にお前みたいな馬鹿が選ばれたんだから光栄に思えよな」
「うるせえ!何でこんな奴が俺の契約者なんだよ……」
「そう考えると他の奴らもそんな感じかもな。そこの亀は浦島太郎、熊は金太郎、龍は……龍は……龍だ、そっちの鬼は……鬼だな、うん、鬼だ」
すると、龍が
「なんか僕等だけ雑じゃない?」
それに並んで青鬼も
「大丈夫だ。余り物には福があるというだろう?」
二人とも、申し訳ない。
「まぁ、とにかくお前等はみんな歴史に名を残す名作に選ばれた運のいいイマジンなんだからその身体大事にしろよな」
「なんでさっきから上から目線なんだよ!」
赤鬼がキレた。
「そりゃあ、俺はお前等の契約者だからな。さっきのイマジンを見る限り、お前等、契約ってやつが出来なかったら外いる時ずっと砂のままでろくに身動き出来ないんだろ?」
「なんで分かったの!?」
女の人が驚きを隠せずにいる。
「まぁ、大体分かる」
「君、頭いいのね。あ、そういえば君名前は?」
「俺?まだ言ってなかったっけ?野上涼河、涼しい河で涼河だ」
「そう、涼河ね。私はハル、よろしくね」
「ハルさんか、こちらこそよろしく」
で、
「お前等の名前は?」
俺は赤鬼達に聞く。
「俺か?名前なんてねぇよ」
「え?ないのか?」
「イマジンは人のイメージによって姿が変わるから名前なんて有った所で意味無いのよ」
「名前が無いのはかわいそうだな。よし、俺がお前等に名前を付けてやる。長い付き合いになるかもしれないしな」
「え、本当に!やった~!」
「確かに女の子と喋る時に名乗る名前は必要だね」
「俺も欲しいなぁ!名前無いと道場破りも出来へんわ!」
さっきまで、大人しくしてた奴らが急に騒がしくなる。
「名前は付けてやるけど、ナンパも道場破りもすんなよ?」
そう言いながら、俺は赤鬼を見た。
「まずはお前からだな。お前はあの桃太郎のイメージだからな…………よし、モモタロスでいいだろ?」
「いいだろ?じゃねぇ!お前さっきから言ってるけど、センスおかしいぞ……」
「お前にはそれ位がお似合いだ、決定な」
「勝手に決めんな!」
「じゃあ次は亀か。そうだな……」
「無視かよ!」
「ウラタロスでいいな」
「まぁ、言っても無駄だろうから何も言わないでおくよ」
お、こいつ物分かりいいな。
「次は金太郎か。キンタロスでいいだろ」
「ええでぇ!俺は男や!甘えた事は言わん!」
男らしいのか、これは?
「じゃあ次は……「リュウタロスだね」せめて言わせてくれよ」
まぁ、いいけど……。だけど問題は……
「お前だよなぁ……」
俺が見ているのは青鬼。
「お前に当たる話の見当がつかないんだよ。モモタロス2号じゃ流石に可哀想だしな……」
その時、俺の今読んでいる本、『執事たちの晩餐』が目に入った。
「そうだ、お前やる事なす事執事っぽいから……執事は忠実……忠実の英語はステディだから……よし、お前の名前はテディだ。もし文句言ったらお前モモタロス2号にするからな」
「あぁ、異存は無い。今日から私はテディだ」
「よし、決まったな。さて、じゃあ本でも読むか……」
その時、突然扉が開き一人の初老の男が入ってきた。
黒スーツに杖って……またベタだな。
そして男はナオミさんを見て
「ナオミ君、いつものを」
「は~い♪」
そうしてナオミが持ってきたのは
「………チャーハン?」
そう、綺麗に丸く置かれたチャーハンだった。更に子供っぽい旗付き爪楊枝が刺さっている。
男はチャーハンを見ると微笑してスプーンの掬口を弾きキャッチする。
無駄に器用だな、おい。
「誰だ、あの人は?どっかのお偉いさんか?」
と、ハルさんに聞く。
「あの人はオーナー。このデンライナーを管理してて、私が契約してる人。私がデンライナーに乗れるのはあの人と契約してるからなんだ」
「人と契約?なんでそんな事したんだ?わざわざこんな事に加担する必要なんて……」
「まぁ、おいおい話すよ」
そう言うハルさんの顔はなんとなく淋しそうだった。
「え……?」
俺は無意識にハルさんの頭を撫でていた。
「あ、悪い……!なんか今の姿が姉さんと重なってつい……」
「い、いや///別に大丈夫だよ!……も……りがと……」
「え、なんか言ったか?最後の方聞き取れなかったんだが」
「き、気のせいだよ!気のせい!」
「そう?ならいいけどさ」
なんか言った気がするんだけどなぁ……。
「野上涼河君、でしたね?」
「え…あ、はい…そうですけど」
急に話しかけられたから焦った……!
てか、綺麗に爪楊枝倒さずに食ってんな~。
「これを渡しておきます」
そう言うと、オーナーは何か金に光る物を投げてきた。
とりあえずキャッチして、投げられた物を見ると
「………懐中時計?」
投げられた物は金色の懐中時計だった。
時針には金、分針には銀をあしらってありとても綺麗で高そうだ。
「えっと、これは……?」
「ベルトの簡易版とでも言いましょうか。その時計に念じれば針からベルトが出てきます」
「分針は俺がさっき使ったベルトのやつか。じゃあ時針は?これもベルトか?」
「えぇ。まぁ、そちらは……貴方が自分自身の力で戦いたい時に使うといいでしょう」
と言った瞬間、食べていたチャーハンの爪楊枝が倒れた。
「!!!、新記録だったのに……」
そう言うと、オーナーは残ったチャーハンを置いてさっさと出て行った。
「なんか……変わった人だな」
俺の抱いた第一印象はそれだけ……いや、それ以外思いつかなった。
後書き
第ニ話でした。
今回出てきた本、『執事たちの晩餐』は実在しない本です。
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