八条学園怪異譚
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第四十九話 柳の歌その二
「私達はそっちになるわ」
「そうなのね」
「それでもいいでしょ」
「ええ、別にね」
愛実は何とでもない様に聖花に答えた。
「お店に出てもいいしね」
「私もよ、調理でもお店に出てもね」
「いいのね、聖花ちゃんも」
「ええ、それじゃあね」
こう話してそしてだった、二人はそれでいいとしたのだった。
そのうえでだ、聖花は愛実にこうも言った。
「じゃあ文化祭は何に出てもいいってことでね」
「私達はそれでいいわね」
「ええ、それじゃあね」
「文化祭も頑張ろうね」
こう話すのだった、二人で。
そしてだった、暫くは普通の日常を過ごしたがその中で。
二人はいつもの様に博士から話を聞いていた、あの研究室に行きそしてである。
柳の話を聞いていた、博士は水羊羹の長方形に切ったものを爪楊枝に刺して口の中に入れながらそのうえで二人にその柳のことを話した。
「あそこにおるのはな」
「はい、誰ですか?」
「あそこには誰がいるんですか?」
「幽霊でな」
そこには妖怪ではなくこちらがいるというのだ。
「まあオーソドックスに言われておる様な」
「あっ、あの白い服で頭に三角の布があって」
「それで足のない」
「足は出たり消えたりするがな」
この辺りは他の幽霊と同じである。
「そうした幽霊がおる」
「それで泉もですか」
「あるんですね」
「そうじゃ、泉はその柳道の終わりじゃ」
そこがだ、泉の場所だというのだ。
「そこから高等部の農業科の裏門に至る」
「ああ、あそこですか」
「あそこに行く道なんですね」
「そうじゃ、あそこじゃ」
そここそがだというのだ。
「あそこの柳道を行くのじゃ」
「じゃあ今回の泉じゃ農業科の裏門ですね」
「あそこですね」
二人もここまで聞いて納得した、そして言うのだった。
「じゃあ柳道を通って行ってみますね」
「そうします」
「その白い幽霊さんと会って」
「そうしますね」
「うむ、ではな」
博士は二人に納得して頷いた、そしてだった。
ここでだ、こうも言うのだった。
「今回も行って来ることじゃ」
「はい、そうさせてもらいます」
「あそこも」
「あそこも学園の怪談スポットになっておるしな」
その幽霊が出て来るからである、そして。
二人にあるものが出された、豆腐小僧があるものをさっと差し出されてきたのだ。それは一体何かというと。
「はい、お豆腐どうぞ」
「ええ、いらないから」
「遠慮するわ」
二人はジト目でその豆腐小僧に言葉を返した。
「あんたのお豆腐はね」
「何があってもね」
「ああ、もうわかってるんだ」
豆腐小僧もその豆腐を引っ込めてから応える。
「僕のお豆腐は」
「食べたら全身カビだらけになるんでしょ」
「もう知ってるから」
「特に梅雨の時は凄いのでしょ」
「綺麗なお豆腐だけれど」
「まあね、実際に食べたらそうなるからね」
豆腐小僧もその辺りは嘘は言わない、まさにその通りだというのだ。
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