蘇生してチート手に入れたのに執事になりました
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さぁ、立ち上がれ
すでに、麗達、明護衛チームは壊滅状態だった。
火器の使用を許可し、更には大型火器や手榴弾まで持ち出したものの、どれも、被弾、爆発する前に凍り付いてしまう。
接近戦を挑んだ護衛チームも、武器もろとも完全に凍りつく。
そして、ついには零と一定の距離を保ち、遠距離から攻撃していた護衛チームらもあっさりと凍りつかされてしまったのだ。
残る人員は、指示を出していた司令官の麗、そして・・・・護衛されていた明のみ。
周りの凍らされている仲間たちを見ながら、麗は絶望に近い気持ちを覚える。
つまりは。裏を返せば、まだ完全に絶望した訳ではない。
(彼らを呼ぶか・・・・・・)
使いたくは無かったがこの手しかあるまい。
真たちがここへ来る時点で、闘いに参加する、と言っていた彼らを押し止めたのは自分だ。
傍観するように頼んでいたが、明と麗が本当に危なくなったらきてくれる手筈だ。
彼ら二人で宏助と真をあっさり倒したあの零にあの二人が勝てるとは思わない。
しかし、彼らも死神のはずだ。残りのあの真以外の二人位の実力はあるといっていた。
仲間だと言って近づいて、奇襲を仕掛ければ、倒せるかもしれない。
それが無理でも、明を救い出す時間は稼げる。
今は、明の身を護ることが第一優先だ。
「・・・フン。倒しがいのない奴らでしたね。これで任務終了とは」
そんなことを考えている内にも零があの鎌を担いで、こちらに近づいてくる。
殺気も出してない隙だらけの体。しかし、それは同時に零の余裕でもある。
さて、どうする。自分から呼んでは、奇襲は成立しない。
だとしたら、彼らからの援助を待つしかない。
残り数メートル。麗の服の袖を明がギュッと掴む。それを掴み返す余裕もないまま、零はまた1m距離を狭めてくる。
ああ。このままでは、殺されてしまう。本当に彼らは来るのか・・・・。
そう麗が不安を覚えたそのとき、
「うらぁああああああっ!」
「・・・・・・!」
麗が安心を覚えるよりも先に、真の出していたあの光と同じものを纏う宏助が視界に入る。
宏助が零を簡単に殴り、吹き飛ばしたことで、麗は安心より驚きを覚えた。
「大丈夫ですか?」
もう光を体内に収束させた宏助が、今度は手だけに光を纏わせ、氷に当てている。
そんな宏助が明と麗に声をかけてきた。
「いや、私達は大丈夫ですが・・・、」
麗が言う前に明がその後に続くはずだった台詞を口に出す。
「宏助さんこそ大丈夫ですか?」
「いや。まぁ、身体の方は問題ないですが、多少、先程刺された腹が気になります。なかなか治癒しなくて」
宏助は腹をあごでしゃくってそう言う。
明と麗は一旦安堵する。しかし、麗にはまだ疑問が残っていた。
しかし、その疑問は宏助が、手の光で氷を溶かしていることで、吹き飛ぶ。
「氷・・・・解けるんですか!?」
「ええ、まぁね。どうやらこの光でこの氷は溶かすことが出来るらしいです。」
宏助は当たり前のようにそう答えるが、麗は、ゼッタイに解けないものだと思っていた。
明が麗の質問しようとしたことを引き継いで質問しようとするが、それを封じるように宏助が先手を打つ。
「俺が今から救出するSP三十名と一緒に後ろに下がっていてください」
「・・・・・っ!」
「あとは、真の奴も助けといてやってください。一応、助けられたんで」
「・・・・・・・・」
明と麗の顔に理解の色が広がる。助けられた、つまりこの光のことだろう。
「・・・・・・宏助さんは・・・・どうするんですか?」
感情を押し殺したような声で、明がそうたずねる。
先程からしゃあしゃあと、当たり前のように、下がっとけだの、真も助けとけだの言って。
しかも、自分は聖気を得て、零の氷を溶かしている。もう解凍作業は残すをわずか少しとなっている。
解凍され、倒れているSPの中にも意識が戻るものが出始めてきている。
しかし、聞きたいことは山ほどあれど、やはり一番はこれだろう。
そんな一番の問いにまたもや宏助は至極あっさりと答えた。
「零と戦います。あんなんでやられる奴でもないでしょう」
「・・・・・!じゃあ私も!」
明がそれを聞いて食い下がるが、宏助は言う。
「明さんが、いても今回戦況に変化はありませんよ。それに、明さんを護りながら闘わなければ・・・・」
しかし、宏助がそういいかけたところで明の強い口調がそれを遮る。
「貴方の身体から魂が漏れ出ていることを知らないとでも?」
「・・・・・・!」
「聖気を遣う以上、身体に影響がなくとも、完全にものにしなければ、魂はたえず漏れ出します。その魂を戻せるのは私だけ。
私がいたら戦況に変化をもたらすことは確実です」
「・・・・・意固地ですね」
「自分に忠実なだけです」
「・・・・・分かりました。ただしあまり前に出ないで下さい。麗さんは、意識のあるSPとともに、後ろに下がっといてください」
「私は結局脇役ですか・・・。まぁいいでしょう。そういうのが性にあってます。待避しましょう」
「お願いします」
宏助は既に解凍作業の全てを終わらしていた。
「・・・・・・ううんっ!」
零は瓦礫に倒れている自分の身体を起こす。
すると先程殴られた腹の部分に違和感を感じた。
(・・・・真か・・。どうやったかはしらねぇがあの小僧に聖気を渡したようだな。しかしなんだあのパワーアップぶりは?)
実際問題驚きだ。先程簡単に倒した小僧が、自分を逆に・・・たとえ不意打ちでも吹き飛ばしたのだ。
零は一ミリも油断などしていなかった。手は抜いていたとしても、あれには驚いた。
(なるほど・・・少し俺も本気を出さなけりゃいけないってことか)
零は自分が凍らせたいまいましい護衛どもを解凍する宏助を見ながら内心舌打ちをする。
零は鎌を支えに、ゆっくりと立ち上がった。
「・・・・来たッ!」
「・・・・・・」
宏助が気配を察知すると共に、鎌を構える零が見える。
しかし。
(こりゃあ随分本気だな・・・)
まず構えに隙がなく、一分も気を抜いている感じがしない。先程とは大違いだ。
更に、零からは冷気のようなものがオーラのように出ている。
なにより顔だ。笑っている。しかし、目は笑っていない。一番怖いパターンだ。
しかも・・・・・
「宏助さんっ!あの人、魂が削れてませんよ!?」
「・・・なッ!」
明の報告は先程宏助が聖気を纏って殴った零の腹のことを言っているのだろう。通常なら腹の部分の魂が削れ、麻痺しているが・・
「残念ながら、俺の氷は、魂すら凍てつかせることが出来る。そして、その氷をまた、体内に取り込むことも出来る。
幹部クラスでも出来ない『魂への直接攻撃』を俺は出来る。死神の超越的な能力は理解出来たか・・?」
零がご丁寧に説明してくれる。なるほど、なかなか理不尽な能力だ。
「うおおおおおおぉおおおっ!」
「・・・・!宏助さんッ!?」
しかし、宏助は迷わず突撃してゆく。明の驚きの表情と、零のバカにした表情が宏助の視界に写る。
「馬鹿かっ!人の話をよく聞けぇえええええッ!」
宏助の真っ正直な攻撃と、何のフェイントもない拳を、零は逆に鎌で冷気を出しつつ防ぐ。更に・・・
「氷の剣(アイス・サーベル)ッ!」
「んぐぁつ!」
その冷気で作られた氷の剣によって宏助は再び刺される。しかも零は狡猾に、先程刺されたところと全く同じ場所を狙ってきた。
「・・宏助さんっつ!」
「まったく・・・。だから言ったろう。死神に人間風情が・・・・」
「・・・・だからどうしたッ!」
バキィッツ!
「・・・・・・ッ!?」
宏助は刺された状態のまま思い切り氷の剣を殴りつける。氷の剣はあっさり砕け散った。
「死神の理不尽な能力なんざぁで、俺がここを退けるかぁああああツ!『流々乱舞』・・・・うおおおおおおおおおおおッ!」
「なに・・・ッ!」
零が鎌でガードを始める前に宏助は連続攻撃を開始する。流々乱舞、それは、麗直伝の好き勝手技を繰り出して、相手を倒す、自由気ままな技だ。だからこそ、使い勝手が良い。
「拳、脚、掌、刀、上下左右四連殴打、殴、殴、欧、三連殴打ッ!拳、拳、拳、三連拳ッ!上下左右四連脚!掌波!刀、刀、刀、三連刀!真空遠隔攻撃五連!大強連打撃ッ!」
「・・・・・・・・・・そんなものかぁッ!」
「・・・・・マジかよッ!?」
なんと零が、流々乱舞を全部受けきったはずなのに、全く効いてなさそうだ。聖気まで纏ったはずなのに。
「・・・ふうううッ!危ないですね。氷の鎧(アイス・アーマー)をしてて助かった・・・。」
「・・・・・なッ!服の下にッ!?」
なんと零は服の下に氷の鎧のような硬質の氷を纏っていたのだ。全ての氷は砕け、今は落ちているが、つまり、今まで俺の攻撃は全部あの氷に当たっていたということだ。
「・・・・・・そんなッ!」
明の悲痛な声が聞こえる。
「・・・・・はぁはぁはぁ・・・くそッ!」
「大分息が上がっているぞ。ほれ、今度はこっちからだ」
「なんのッ!」
宏助は息の上がりを抑えて、無理やり出るが、相手の方が早い。
「氷の拳(アイス・ナックル)!氷の剣(アイス・サーベル)!氷の槌(アイス・ハンマー)!氷の脚!」
「んぐッ!んぐはぁつ!くそおおおおおお!」
「おらおらおらおらおあああああ!どうしたぁ!そんなものかぁあああ!」
全ての連続攻撃は、片腕に氷を形状変化させ、纏わせ、鎌で斬る。最早この連続攻撃に宏助の身体は悲鳴を上げていた。
「はははははッ!おらおらおらおら!終わりだッ!」
(駄目だ・・・・。意識が遠くっ・・・。)
身体全身が斬られ、刺されでもうズタボロ、血も流れ過ぎて、宏助は遂にその場で倒れそうだったが、
ドガァアアンンン!
無数の弾丸が宏助達の方目がけて飛んできていた。
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